「ん…?あれ?私…」
「気がついたか?」
炎舞う想い 4
目が覚めたを、神田とロイが心配そうに覗き込む。
痛む頭を押さえながら、はゆっくりと体を起こした。
そしてアクマの気配がない事に気付く。
「あら…?アクマの気配がないわ。どうやって破壊したの?」
の問に、神田が無言で指を指す。
その方を見てみると、そこは焦土になっていた。
何があったのかを聞き、は漸く納得した。
「流石大佐ですね。あの金属を溶かすだけの炎を作り出すなんて!」
「だが…その代価に建物まで溶かしてしまった。街人を守る軍人としては失格だな」
「そんな事ないですよ!大佐のおかげでアクマが破壊できました!
もしアクマを破壊できなかったら、被害は拡大してましたよ」
「この位なら、コムイが何とかしてくれるだろ」
余談だが、神田のこの言葉の直後、コムイの背中に悪寒が走ったという。
こうしてアクマを破壊した3人は、探索部隊と共に教団へと帰って行った。
† † † † †
教団へ戻った3人は報告をした後、の部屋に来ていた。
はロイをセントラルへ送るための準備をしている。
「済みません大佐。遅くなりましたが、セントラルへお送りしますね」
の言葉に、ロイは哀しそうに微笑み、そっと抱き締める。
驚いたはロイの腕の中で動けずにいた。
怒った神田がを取り返そうとするが、それはロイの声によって遮られた。
「…私と共にセントラルへ帰ろう」
いつもの自信に満ちたロイの声ではない。
弱々しく、どこか懇願した声。
の記憶では、こんなロイの声を聞いた事が無い。
「た…いさ…?」
「エクソシストなんか辞めて、セントラルへ帰ろう。今回の任務でよく判った。
どれ程エクソシストが危険なのかを。そんな危険な場所に君を置いておきたくない。
それに私達の世界にも大切な者はいるのだろう?ならば…」
「大佐…お言葉は嬉しいのですが…」
「嫌なのだよ。が私の知らない所で傷つき、哀しむのが…」
痛切な声に、は戸惑う。
ロイの言いたい事は判る。
とて、大切な人が危険な事をしていたら止めるだろう。
その気持ちは嬉しかったし、確かにあの世界にも大切な人達はいる。
それでもには決めた事があった。
「ごめんなさい…私はこの世界にいます」
「何故だ!?何故…っ!!」
「エドが国家錬金術師になると決めたように、私も決めたんです。神田と共に生きていこうと」
「鋼のと同じ決意…か。相当の覚悟のようだね」
「はい」
の頷きに短く「そうか」と答えると、ロイはそっとを離した。
「すまないな、変な事を言った」
「いえ、嬉しかったです。大佐の心配は最もだと思いますし」
「はは。自覚しているなら結構だ。無茶はしないでくれよ」
「はい!」
ロイのいつもの笑顔に、も自然と笑みがこぼれる。
次にロイは神田の方へ歩いていった。
「神田、をよろしく頼む。無茶をしないように見ていてくれ。だが私は諦めたわけじゃないぞ」
「…あぁ、任せろ。つかしつこいんだよ。は俺の恋人だって言ってんだろッ」
「ふ…私は認めていない」
「さっさと帰れ!!」
ひとしきり話した後、ロイはまたの元へ足を運んだ。
「さて、私もセントラルへ帰るとしよう。あまり遅くなると中尉が恐いからね」
「ふふ。仕事をさぼらないで下さいよ」
「………留意しよう」
顔を顰めるロイには微笑み、術を発動した。
蒼紫の光に包まれ、ロイの体は徐々に透けていく。
「大佐!!エド達にあったら、『走り続けるから』と伝えてください」
「あぁ。必ず伝えよう」
この言葉を最後に、ロイは完全に消えた。
† † † † †
ロイを送った後、二人は静かに廊下を歩く。
いつもなら会話をしながら歩いているのだが、今日はそれがない。
が話しかけても、神田は考え事をしているらしく上の空なのだ。
どうしたのかしら…?私が気絶してる間に何かあったのかしら?
思い切って尋ねようとした時、神田が口を開いた。
「は…この世界に残って良かったのか?」
「いきなりどうしたの?」
「アイツの言う通り、エクソシストは危険だ。いつ命を落とすか判らねぇ。
それに向こうの世界にも大切な奴はいるんだろ?」
「………神田は私に帰って欲しいの?」
「んな訳ねぇだろッ!!」
「私はあの日決めたの。この世界で神田と共に生きていくって。
確かに向こうの世界にも大切な人がいるわ。でも一番大切なのは…傍にいたいのは神田なの。
私の願いは神田と共に生きる事。神田がいないなら、安全な人生なんていらない。
ただ一人…貴方だけを愛してる」
「あぁ、俺もだ。だけを愛してる」
微笑みながら言うに、神田も笑みを浮かべた。
の頬に手を添え、そっと上を向かせる。
人気のない廊下の片隅で、二人は唇を重ねた。
まるで、永遠を誓うかのように。
後書き
よ…ようやく終わった!
最早短編の長さじゃないよ…ね?
うん…でもまぁ…いつもの事だし?
というわけで(?)
如何だったでしょうか?神田VSロイは。
ちゃんとVSモノになってるかな?
ちょっと心配です^_^;
因みに今回のタイトルバーは
ハボック少尉→ホークアイ中尉→アル→エドの順です。
久々の鋼キャラだったので、上手く特徴が掴めてるかな(不安)
最後まで読んで頂き、ありがとうございましたv
紫青様のみ転載可でございます。
←
ブラウザを閉じて下さい。