ったく、何でコイツが居るんだよ。

 と二人で行く任務じゃなかったのか?

エクソシストにもなれなかったハズレ者が居ても、足手纏いにしかならねぇんだよ。

 しかもコイツ、明らかにに気があるじゃねぇか。

 さりげなくの前に座ってやがる(怒)

 ふ…ふふふ………良い度胸だ

 俺との仲をたっぷりと見せ付けてやる。



































 † † † † †



 西ドイツまではかなりの時間を要する。

 最初は景色を楽しそうに見ていただったが、飽きたのか鞄の中から一冊の手帳を取り出した。

 その手帳をテーブルの上に置き、次に車内のあちこちを叩いている。

 は何がやりたいんだ…?




「何やってんだ?」

「ん?あまりにも暇だから、この列車の金属構成を調べようと思って」

「金属構成…ですか?」

「そう。何かあったときすぐに練成できるようにネ」

「錬金術は『ものの流れを理解し、分解し、再構築する』だったか?」

「そうそう。理解してないと練成できないからね〜」

「叩いただけで判るのですか?」

「う〜ん…ある程度なら。因みにこの列車は鉄に炭素を混ぜて強度を上げてあるよん♪」




 いや、それよりも…




「この列車の金属構成を調べてどうするんだよ」

「だから暇つぶしだって。それに『もしも』があったら困るでしょ?」

「『もしも』って何だよ?」

「えー?トレインジャックとか?」








 ありえねぇ。トレインジャックなんて滅多にいねぇぞ?

 の居た世界はそんなにトレインジャックが多いのか?

 念のためにしてるって事は、もトレインジャックに遭遇した事があるのか?




「ここ2回ほど列車に乗るたびに遭遇してたのよ。内乱が終わったばかりで不安定だからね。
今まではエドとアルが解決してくれてたけど、今二人は居ないから頼れないもの」

「エド?アル?」

「うん。私の弟弟子になるの…かな?錬金術はかなりの腕なんだよ」




 名前からして、二人は男…だな。

 だがの反応から行くと、特別な感情を抱いてる訳じゃなさそうだ。

 実際に会ってみるまでは判らねぇが、とりあえずは大丈夫だろう。

 それに今は、俺の目の前に居る。

 手を伸ばせば届く位置にが居る。

 それだけが事実だ。

居ない奴の事なんか考えても仕方ない。

 





「ところで、殿。錬金術とは…?」

「あ、エッジさんにまだ説明してなかったですね。私は錬金術師なんです」

「錬金術師?」

「ん〜…説明するより実際見た方が判りやすいかな」




 は徐にテーブルの上に置いた手帳を広げ、そこに何かを書き始めた。

 図?いや、形から言って何かの陣か…?




「見てて下さいね」




 そう言って陣の上に手を翳した瞬間。




 パシィ




 蒼紫の光が発光し、陣の上には紙で出来た鳥が居た。

 何度見ても錬金術は不思議なもんだな。




「凄いですね!殿。これが錬金術ですか?」

「はい。手帳の紙を材料にして、紙の鳥を練成してみました」




 今回の練成と俺が今まで見てきた練成。

 この練成を見るまで疑問に思わなかったが、の錬金術の説明だと腑に落ちない点がある。

 何故だ?何故は今まで……………

 


「………

「ん?なぁに?」

「俺が見た限り、は普段この陣を描かねぇよな?」

「錬成陣の事?そうだねー。描かないね」

「基本は円の力…だったか?それに構築式を書いて錬金術を発動させるはずだよな」




 あの時、コムイにそう説明してた。

 なら何故は練成陣無しで術が発動できたんだ…?




「私が何かを練成する時、両手を合わせるでしょ?それが円の力だよ」

「じゃぁ構築式は?何処にあるんだ?」

「んー…私が構築式……みたいなもんかな?」

が構築式?」

「ほら、出会った時に説明したでしょ」




 あぁ、確かそんなような事を言っていたような。

 真理を見た…だったか?

 つか真理って何だよ。




「錬金術って凄いですね。何でも出来る魔法みたいです」

「そんな事ないですよ。錬金術は科学技術なんです。不可能な事もありますし、作ってはいけないものもありますよ」

「作ってはいけないもの?」

「金ですね。錬金術で大量の金を練成したら、金の価値が下がってしまうじゃないですか」

「それは確かに……他には?作ってはいけないものはあるのですか?」

「えっと………まぁ色々と…あるんですよ」




 

 何か様子が変だ。言いたくない事なのか?

 明らかに顔色が悪くなっている。

 この話はここで終わらせた方が良いだろう。




「そんな事どうでも良いじゃねぇか。それよりも、今のうちに休んでおけ。現場にはアクマがいるかもしれねぇ」

「あ、うん。そうするね。話の途中だけどごめんなさい、エッジさん」

「構いませんよ。こちらこそ話につき合せてしまって申し訳御座いません」




 は軽く頭を下げると、再びソファに体を預け外の景色を見始めた。

 話が終わったためか、の表情はさっきよりは穏やかになっている。

 金の練成以外に作ってはいけないもの………

 にとって話したくない事。

 それは一体何なんだ?




 ただの様子からして、かつてあいつ自身が関わった事があるのだろう。

 







後書き
今回は神田目線で。
微妙にシリアスです。
神田さん、さんをよく見てますね〜。
さんへのさりげない(?)フォローする神田さんが好きです(笑)



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