「西ドイツで千年伯爵らしき人物を見かけたってー。すぐ行ってきてね」




 ある日、コムイ室長から指令がありました。

 私にとって、初任務です!








 コムイ室長…というかリーバー班長の説明によると、千年伯爵が西ドイツで動いているらしい。

 もしかしたらイノセンスがあるかもしれないし、アクマの存在も確認されたからエクソシストが出動するんだって。

 で、今回の任務が私と神田に回ってきたわけです。

 アクマとは一度戦ったけど、正式な任務はこれが初めてだから緊張するなぁ。

 出発は1時間後。

 それまでに準備をして、黒の教団の門の所に行かなくちゃ。

 持って行く物は…元の世界にいたときに持っていた鞄を持っていけば良いよね。

 それプラス、回復用のお菓子と応急手当の道具。

 イノセンスは耳にある。

 あとはエクソシストになった時に頂いた制服を着て。

 よし!準備万端♪

 少し早いけど、門の前に行っていよう。






 やっぱりまだ早かったかな。神田は来てない。

 通行人(と言っても殆どいないけど)の邪魔にならないように端っこで待っていよう。

 そう思って壁側へ歩きかけたとき、白いフード付のコートを着た人に声をかけられた。




「エクソシストの殿ですね」

「そうですが…あなたは?」

「私は捜索部隊のエッジと申します。今回の任務に同行させて頂きます」

「どうこう?」

「はい。現地までの道案内等をさせて頂きます。宜しくお願いします」

「こちらこそ!新参者でまだ勝手がわかっていないので、ご指導をお願いします」




 お互いに挨拶しているとき、門の向こうから神田がやってきた。

 神田は黒いコートを着て、六幻を腰に下げている。

 何て言うのかな?こうエクソシストの貫禄(?)が滲み出ているような(笑)

 私も早く一人前にならなくちゃ。




「早いな、

「初任務だから緊張しちゃって。居てもたってもいられなかったから早く来ちゃった」

「そうか。で、コイツは?」

「今回同行してくれるエッジさんだよ」

「宜しくお願いします、神田殿」

「……………」




 折角エッジさんが挨拶してるのに、神田ってば滅茶苦茶睨んでるよー(汗)

 エッジさんも私に挨拶したときより無愛想だし。

 何?この二人仲悪いの…?

 ものっそ二人の間にブラックオーラが立ち込めてますヨ!

 こんな中、西ドイツという所まで旅をするのですか…

 西ドイツ、近いといいなぁ(切実)




































 † † † † †



 西ドイツへは列車を使って行くそうです。

 だから線路へ向かって歩いていたのはまだ納得できるのですが………

 どうして線路の上を跨いでいる鉄塔に登るのですかー?




「あの…神田?」

「しゃべってる時間はねぇよ。走れ、

「はい…」




 有無を言わさず登らされ、そこで待機。

 なーんだか嫌な予感がするのは私だけ?




「ねぇ、もしかしてここから列車に飛び乗るってオチじゃないよね?」




 一縷の望みをかけて神田に問う。

 しかし神田からの返事は無情にも「そうだ」の肯定だった。

 マジですかー?

 エド達と旅をしていたときでも、こんな危険は………あったヨ(汗)

 トレインジャックと戦ったときに無茶したなぁ(遠い目)

 ふぅ、仕方ない。私もエクソシストなんだから覚悟を決めるか。




 そして5分後。

 私達が乗る列車が大きな音を立てて走ってきた。

 一歩間違えば大怪我を負う。

 しっかり飛ぶタイミングを見計らって…

 まだ………あともう少し……

 心の中でカウントしていると、不意に横から伸びてきた腕に捕まった。

 そして浮遊感。

 吃驚して見上げると、そこには神田の綺麗な顔。

 そう、私は今神田に抱きかかえられているのだ。

 しかも所謂「お姫様抱っこ」というヤツですよ!!




「か…神田!?」

「黙ってろ。舌噛むぞ」




 再び浮遊感。

 だけど次の瞬間には重力が働いて私達は下に引き付けられる。




 ドゥン!!  ドン!




 大きな音を立てて私と神田、エッジさんは列車の屋根に辿り着いた。

 しかも神田を押し倒している体勢ですよ、私!




「あああぁぁぁ!ごめんね!神田。大丈夫?」

 


 慌てて神田の上から退こうとしたけど、神田の腕ががっちり私の腰に回っているため離れられない。

 


「神田……?何処か打った?」

「大丈夫だ。怪我なんかしてねぇ」




 そう良いながら神田がゆっくりと起き上がった。

 良かった。本当に怪我は無さそう。




「ありがとう、神田」

「(なら)構わねーよ」




 この間の買い物の時もそう思ったけど、神田ってさりげない優しさがあるよね。

 神田と居ると、不安が全部吹き飛んでいく感じ。

 この世界で神田に出会えて本当に良かったよ。




殿、お怪我はありませんか?」

「大丈夫です。エッジさんもお怪我はないですか?」

「慣れておりますので。それでは車内へと入りましょう」




 エッジさんに促されて車内へ入るための出入り口へ歩いていく。

 ………ちょっと待て?『慣れてる』?

 もしかして毎回任務に行く時はこんな感じで列車に乗るの?

 はは…はははは…聞かなかった事にしておこう。うん。
















 私達は列車の上にある小さな出入り口から中に入った。

 列車の中はいくつもの部屋に仕切られていて、一目で良い車両なのが判る。

 この車両には乗っている人は少ないけど、皆私達を見ていた。

 まぁ、当然よね。あんな派手な音を立てて降りたんだし(苦笑)

 そんな中、制服を着た青年が私達の所へやってきた。

 きっとこの列車に乗っている駅員だろう。間違いない☆




「あ…貴方達は一体?」

「私達は黒の教団の者です。一部屋用意して貰いたいのですが」




 エッジさんが答えると、駅員は驚いたように私達を見た。

 そして慌てて頭を下げ、一部屋―――最初に降り立った車両よりも良い―――用意してくれた。

 はっきり行って不法侵入に近いのに、よく部屋を用意してくれたよねぇ。

 神田に聞くと、黒の教団は世界中に力を持っているらしい。

 黒の教団って凄いんだー。




後書き

いよいよ初任務編です。
さんのイノセンスもここで明らかになります。
列車への飛び降りシーンは、ジャンプを読んだ時に思い浮かびました。
神田なら絶対さんを抱きかかえる!とネ☆
これを書くために連載を始めたと言っても過言ではありません(笑)
書けて満足です♪




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