教団内の朝食が一段落した頃、俺とはキッチンへ向かった。
やっぱりアイツのためのクッキーは腹立つが、の性格上、反故はしねぇだろう。
ならとアイツが二人きりになるのを阻止するだけだ。
ジェリーが言ったように、この時間は殆ど人がいねぇ。
今度から、この時間に飯に来るか?
これならとの時間を邪魔されねぇからな。
そんな事を考えながら、俺はテーブルに座り持ってきた本を広げた。
はジェリーに礼を言いながら、キッチンの片隅で準備をしている。
その様子を横目で見ながら、本のページをぱらぱら捲った。
どのくらい時間が経ったのか……
ふとを見てみると、シンプルな薄い空色のエプロンを身につけていた。
ふーん………結構似合ってるじゃねーか。
だが、俺のイメージとはちょっと違うな。
今度下の街まで買いに行くか。
自分の休みが何時だったか考えながら、再び本に目を落とした。
† † † † †
キッチンにきて数時間。
クッキーを焼く良いにおいが当たり一面漂う。
その匂いにつられてか、あの野朗がキッチンに入ってきた。
あぁ?誰かって?
モヤシに決まってんだろっ!
「待ちきれずに来ちゃった。あ!エプロン姿、可愛いね。よく似合ってるよ」
「アレン!え?似合ってる?ありがと〜」
「うん、ホント似合ってる。若奥様って感じ(笑)どう?僕の所にお嫁に来ない?」
っんの野郎!人の女を口説いてんじゃねぇ!
もそこで笑うな。
もっと他に言う事があるだろっ!
「なら旦那様は神田ね」とか何とか!
いい加減腹が立った俺は、とあの野郎を引き離そうと立ちかけた。
しかしその前に、が
「まだちょっと時間がかかりそうだから、向こうで座って待っててね」
と言い、モヤシもその言葉に従って食堂の方へやって来る。
……………アイツがから離れたのは良いが、何でこっちに歩いてきやがる。
つーか、その嫌な位の笑みは何だ…?
「ねぇカンダ。のエプロン姿、可愛いですね!
そんな可愛い姿で僕のためのクッキーを焼いてくれてるなんて嬉しいな」
コイツ…わざと『僕のため』を強調しやがったな(怒)
「いくらがテメェのためにクッキーを焼こうが、アイツの恋人は俺だぞ」
「ヤだなぁ、そんな事知ってますよ。誰が仲を取り持ったと思ってるんですか」
「そうだったな。そのおかげでは俺の女になったんだったな」
「でも、に最初に想いを告げたのは僕ですよ」
「それがどうした?が選んだのは俺だ」
モヤシが俺を睨む。
ハッ!そんなもの、痛くも痒くもないぜ。
所詮、負け犬の遠吠えだ。
「カンダ…一つ言わせて下さい」
「……なんだ」
「次、を泣かせたら僕が貰います。僕がを幸せにしますから」
奴の真っ直ぐな視線が俺に突き刺さる。
本気で言っているのだろう。
コイツも本気でが好きだったんだ。
だが……
「次なんかねぇよ。アイツが泣く事なんかない」
一旦言葉を区切り、モヤシを挑発するように笑った。
「あぁ…別の意味で『啼く』かもしれねーな」
「なっ!!」
今の発言が想像できなかったのか、モヤシは目を見開いて驚いている。
俺の勝ちだと、密かに満足していると………
パコン
誰だっ!後頭部を叩いた奴はっ!
後ろを振り返ってにらみつけた人物は…
げっ!リナリー。
「表で『裏』的発言しないでよ。神田は減点1ね」
持っていたボードに何やら書いていく。
何だよ…減点って(汗)
「リナリー、減点って何ですか?」
「ふふ。貴方達が知らなくて良い事よv」
満面の笑みを浮かべるリナリーに、恐怖を感じる。
それを払拭しようと視線をずらすと、と目が合った。
はにっこり笑って手を振ると、エプロンを翻し忙しそうに別の作業をする。
「ってホント可愛いですね。水色のエプロンも良いけど、僕としてはオレンジが良いかも」
「ピンクだろ」
「あら?は白に決まってるじゃない」
「えー?明るいオレンジですよ」
「優しいピンクだろ」
「穢れのない白よ。ところでエプロンにフリルは外せないわよね?」
間違いねぇ。フリル………じゃなくて!
何で俺はこんな話をしてるんだ…?(汗)
未だに議論している二人をよそに、密かに自己嫌悪に陥る。
何時もの俺に戻ろうとしていると、誰かに肩を叩かれた。
「どうしたの?神田」
「か……終わったのか?」
「うん。沢山焼いたから時間がかかっちゃったわ。お待たせ、アレン」
「はい」っと綺麗にラッピングされた包みを渡す。
………その包み、やけにでかくねぇか?
「こんなにも貰って良いの!?」
「もちろんよ。アレンは甘い物好きでしょ?頑張っちゃったわ」
「ありがとう!!」
「良いなー。私も食べたい」
「じゃあこのクッキー、みんなで食べよう」
奴が今貰ったばかりのクッキーを広げる。
「良いの?アレン。それはアレンへのお礼なんだけど…」
「え?そうなの?だったら私は……」
「構わないよ。みんなで食べた方が美味しいですから」
「そうよね!あ、じゃあお茶会にしようか。ちょっと待ってて」
はキッチンに向かって行く。
そして暫くして、飲み物と何かを手にして戻ってきた。
「何を持ってきたんだ?」
「コーヒーゼリーよ。クッキーの焼き時間を利用して作ったの」
が作ったコーヒーゼリーは、上に生クリーム乗っている。
普段菓子なんて食わねぇ俺だが、これは美味しそうに見えた。
コーヒーゼリーと紅茶を配り、も椅子に座る。
こうして、成り行き上4人での不本意なティータイムが始まった。
が作ったコーヒーゼリーを食べてみる。
美味い。
コーヒー独特の苦味が上手く引き出されている。
ゼリー自体は苦いんだが、上の生クリームがその苦さを和らげてくれる。
並みの職人じゃには勝てねぇな。
「美味しい!凄いわ。はお菓子も作れるのね!」
リナリーもご満悦の中、モヤシだけは渋い顔をしていた。
「〜〜〜。僕には苦い…」
「え?苦い?」
「ガキだな」
「うるさいですよ」
「も〜。神田も喧嘩を売らないの。あ!そうだ。ちょっと待っててね」
何かを思いついたらしく、はまたキッチンへ戻っていく。
今度は何を持ってくる気だ?
「これならきっとアレンも大丈夫よ」
は持ってきた白い液体を奴のコーヒーゼリーにかける。
「食べてみて」と言うに、奴は恐る恐る口に入れた。
「あ…苦くない。大丈夫です」
「ふふ。良かったわ」
「それは何なんだ?」
「コレ?クリームシロップよ。かけると甘くなるの。神田もかける?」
「いや、俺はいい」
「私もかけてみたい!」
「はいどうぞ。リナリー」
はリナリーのゼリーにもシロップをかける。
美味そうに食べる二人を見て、も微笑んでいた。
今までの俺なら、こんなティータイムなんて考えもしなかった。
が来てから…と出会ってから、何かが変わった。
あいつの笑顔を見るだけで幸せな気分になれる俺がいる。
だが…それも悪くねぇな。
後書き
偽物神田(笑)
最近(じゃないけど)神田さんが壊れてきているっスねぇ……
エプロンにフリルですが…。
どこぞのファンシーヤンキーが着けている物をイメージしてください(笑)
しかし……紅茶にコーヒーゼリー…
微妙な組み合わせだ^^;
その辺りのツッコミはナッシングでvv
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