カシャン

 身支度の最中、何か…金属のような物が落ちた音がした。

 その音の方を見てみると………





















「おはよう、神田」

「あぁ。おはよう」




 ちゅっと神田は私のこめかみに口付ける。

 私も部屋まで迎えに来てくれた神田のこめかみに口付けた。

 これは、私が教団に来てからずっと続いている朝の挨拶。

 最初に比べたら恥ずかしさは減っているけど、未だにドキドキするわ。

 周りに人が居ないか確認するし………

 だって見られたら恥ずかしいじゃない。

 なのに神田は人前でも構わずに『挨拶』をしてくる。

 これも習慣の違い…なのかな?




 本当は、朝のお迎えも無くても平気なのよ。

 流石に建物内の把握は出来てるわ。

 だけど




「俺がやりてーからやってんだ」




 って神田が言うから、お言葉に甘えてるの。

私も神田に来て貰えると嬉しいもの。

 朝のお迎えとこの挨拶は、私達の日課になってるわね(笑)

 今日も挨拶を終え、いつものように食堂へ向かおうとした。




「何?」

「それはどうしたんだ?」




 神田が私の首元を指す。

 そこにあるのは、革紐に通したサイズの違う銀のプレートが2枚。

 プレートにはそれぞれ風をかたどった紋章が半分ずつ彫ってある。

 2枚で1対のプレート。

 私のお気に入りのアクセサリなのよ。




「そんなの持ってたか?」

「うん。元の世界で買った物なの。ほら、こうすると風の紋章ができるのよ」




 首から外し、実際にプレートに彫ってある風の紋章を合わせてみた。

 旅の途中に寄った街のお店で見つけたアクセサリ。

 このプレートに一目惚れしたけれど、純銀で出来てるから高かった。

 でも買えない値段でもないから、どうしようか迷っているとお店のオーナーが教えてくれた。




『このプレートには………』




 オーナーの話を聞いて、私はますますこのプレートが欲しくなった。

 だからちょっと値が張ったけど、思い切って購入したの。

 お金を払う時、オーナーが安くしてくれたけどね(笑)

 それ以来ずっとつけている。

 寝る時とお風呂に入る時以外は外した事ないかな。




「見た事ねぇぞ」

「今までは長めのチェーンだったから」

「チェーンを代えたのか?」

「うん。今まで使ってた金属のチェーンが切れちゃって。
錬金術で直せるんだけど、気分転換も兼ねて短い革紐にしてみたの」




 金属の長いチェーンだった時は、胸の位置にヘッドがあったから必然的に服の下になってた。

 でもこの革紐は短いから、鎖骨上辺りにヘッドが来る。

 この制服を着てても見えるのよ。




「もしかして、アクセサリって禁止なの?」

「そんな事ねぇよ。で、大きさが違うのには訳があるんだろ」

「えぇ。こっちの大きい方が男性用で、一回り小さいのが女性用」




 1対のプレートを買ったのは良いんだけど…

男性用をあげる相手が居ないから、2枚とも自分でつけてるのよ。

ある願いも込めて――




「あげる奴がいなかったって……」

「今、淋しい奴って思ったでしょ」

「んな事ねぇ。寧ろその方が好都合だ

「え?何?ゴメン、最後の方が聞き取れなかったんだけど」

「気にするな」




 はぁ。気にするなと言われても…気になりますよー。

 でも神田の様子から、言う気は無さそうね。

 こういう時の神田は絶対言わない。

 仕方ない。聞かなかった事にするわ。




「そうだ。神田、このプレートの片方を貰ってくれる?」

「これはの大切なアクセなんだろ。俺が貰っても良いのか?」

「うん。神田に貰ってほしいの。駄目かな?」

「いや……大切にする」




 革紐から大きい方のプレートを外し、神田に渡す。

 受け取って貰えて安心しちゃった(苦笑)

 あ!ヘッドだけ渡しても駄目だよね。




「チェーンはどうしようかな。神田に合わせて練成する?」

の前のチェーンじゃ駄目か?」

「私が使ってた物だと神田には短いよ」

「構わねぇ」




 ん〜…短いような気もするけど、ま・いっか。

 壊れたチェーンを取り出し、錬金術で切れた部分を元に戻す。

 直ったそれに、再びプレートを通して神田に渡した。

 受け取った神田は、そのままアクセサリをつける。

 やっぱりちょっと短いね。

 神田の鎖骨より数センチしたにヘッドがあるもの。

 


「つけ心地はどう?」

「悪くねぇ。ホントに俺が貰っても良かったのか?」

「うん。これを買った時から思ってたの。
プレートの意味にぴったりな人が出来たら渡そうって。
でね、私は神田に持っててほしいの」




 不思議よね。

 前の世界にいた時間の方が長いのに。

 このプレートをあげたいと思う人がこの世界にいたなんて。

 まだこの世界に来て1年も経ってないのに…




「このプレートに意味なんかあるのか?」

「もちろん。意味を聞いて買うのを決めたのよ!」

「ふーん。で、その意味って?」

「聞きたい?」

「あぁ。教えろ」

It is a secret. 教えない〜」

!!」




 そう言って、神田の前から走り出す。

 神田は私の後を追いかけてきた。

 追いかけてきても無駄だよ。

 まだ教えてあげない。



















 『To you who were loved by the wind

 これは風の印。

 風があなた達を守ってくれる。

 そして大切な人を守れるよう、風が力を与えてくれる。

 風に愛されたあなた達が永遠であるように―













後書き

書けました!書けましたよ〜。
念願のお話が!
さんが持っていたアクセを神田にあげる事ができました!!
神田への想いに気付いたさん!
これで次のステップへ進めます☆
あ!英語にミスがあったら教えてください!
自信が無いので…(汗)


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