漸く到着した西ドイツ。

 そこで私を待っていたのは、地獄のようだった。















 地面には大きな穴が開いていて、周りの建物は全て破壊されていた。

 木々も倒れてしまっている。

 穴の近くには、壊れた機械。

 何より………エッジさんと同じ白いコートを着た人達が夥しい血を流して倒れていた。

 もう命が無い事が遠目から見ても判る。




「神田………これは…?」

「アクマが居たようだな」

「アクマ………酷い」




 そこは言うなれば地獄絵図。

 元の世界でも内乱はあったけど、ここまで酷いのは見た事ないよ。

 思わず目を背けたくなる光景。

 何の動きもない「静」の世界。

 そんな中で唯一動くものがあった。

 白いコートを着た探索部隊の人が、かすかな呻き声をあげていた。




 まだ生きてる!!

 


 考えるより先に体が動いた。

 だけどその動きは神田に止められてしまった。




「何するのっ!?」

「馬鹿ヤロウ!アクマがいるかも知れねぇんだぞ!」

「だけど、まだ生きてるの!助けなきゃっ!!」




 神田の手を振り切って走る。

 助けられる命があるなら助けたい。

 もう…あんな思いをしたくない。させたくない。

 あの人にも大切な人はいるはずだもの。




 走り出した私の後を追って神田とエッジさんも来てくれる。

 何だかんだ言いながらも、私のことを心配してくれる神田に感謝した。

 




「もう大丈夫です。今治しますから」

「エクソ…シス…ト……来て…」

「喋っちゃ駄目です」




 倒れている部隊の人の傷を確認する。

 出血は酷いけど大丈夫。これなら治せる。

 鞄の中からチョコレートを取り出し、この人の口の中に放り込んだ。




 パン   パシィ




 両手を合わせ、錬金術を発動させる。

 その手を傷口に翳すと傷はゆっくりと、でも確実に治っていった。

 それでも出血量から考えると、安静にしてなくちゃいけない。

 この人をエッジさんに任せて、二人には安全な所まで避難して貰った。

 何故なら………さっきまでは感じなかったはずの、何とも言えない気配を感じたから。




「神田……」

「アクマだな。近くまで来てる」




 何処?アクマは何処にいる?

 神田と背中を合わせ、死角がないように二人で辺りを見回す。

 気配はするから、居る事は間違いない。




 『見えない相手を見ようとするな。流れを感じろ』




 先生の言葉を思い出し『流れ』を感じようと目を閉じた。

 何処…?今この場所で動いている場所は………




「神田!下ッ!!」

「ちっ!」




 急いで飛び退くと、今まで立っていた地面を破壊しながら何かが現れた。

 さっきの気配はコレだという事は確信できるけど、一体…?




「あのアクマ、レベル2になってやがる」

「レベル2?」

「この間、が戦ったアクマはレベル1。あのアクマが進化したんだ」

「進化!?アクマが進化するの!?」




 うっそ!そんな話は聞いてないわよ!




「ひゃひゃひゃ。ぜ〜んぶ殺したと思ってたのに、まだニンゲンがいたんだ〜」




 レベル2のアクマは、私達を見ると嬉しそうに笑った。

 え?笑う!?自我があるの?




「自我だけじゃねぇ。レベル2になると能力も持ってやがる」




 自我もあって能力もある。これは厄介だわ…

 前に戦ったあのアクマは攻撃パターンが決まっていたし、攻撃も単調だった。

 自我があるという事は、パターン攻撃ではないという事。

 その上、能力について何も判っていない。

 でも…それでも戦うしかない!

 この地獄絵図を作った…多くの人を殺したアクマを私は赦さない。

 そして!神田を殺させない!!




……いけるか?」

「もちろん!!」




「「イノセンス発動」」




 神田は六幻を抜き、私もピアス型のイノセンスを発動させた。

 イノセンスを発動させてから錬金術で作った武器は、全て対アクマ武器と同等の力があるらしい。

 ヘブラスカがそう言っていた。

 ただ私しか扱えないらしいけど……

 そんな訳で、私は地面から対アクマ武器としてショットガンを練成した。

 相手の能力が判ってないから接近戦は避けたいもの。

 狙いを定めてトリガーを引く!

 弾丸は確かに体を貫いたはずなのに、アクマは何事も無かったかのように立っている。

 神田も六幻を構え遠距離から攻撃したものの、結果はやはり同じだった。

 傷さえない。

 アクマは自分の体を見た後、私達を見てニヤっと笑みを浮かべた。




「んふふ〜。傷付けるコトなんてムリムリ〜♪」




 ………腹の立つ喋り方だわ。

ってそんな事考えてる場合じゃなかった(汗)

 アクマが私達に向かって攻撃してきている。

 私も神田もアクマの攻撃をよけつつ攻撃をしているんだけど、全く通用していない。

 攻撃は当たってるんだ。

 考えろ。考えるんだ。

 何かからくりがあるはず。

 それを見つけれない限り、あのアクマは倒せない―――





後書き
シリアスです。初シリアスですよ!奥さん(誰!?)
エクソシストに就任してからのVSアクマ編。
ここにきて漸くイノセンスの説明が出来ました(嬉)
さて、勢いでここまで書いたのですが、アクマの正体をどうしましょうか…
まだ決めてないんですよねぇ(マテ)



BACK   NEXT