暗く深い闇の中を歩いている感じ。
 一筋の光さえなく、常闇が続いています。
 寒いです…
 何処へ行ったらいいか判りません。
 宛てもなく歩いていると、誰かに名前を呼ばれたような気がしました。





 華舞う場所で 9





!!」


 名前を呼ばれ、うっすらと目を開けました。
 窓から入る光りが眩しすぎて、目が痛いです。
 ここは…何処なのでしょう?
 お屋敷ではなさそうですが…


!大丈夫?痛い所はない?」


 声のする方を見ると、アレンが心配そうな顔で私を見ていました。
 そう言えば私…エクソシストの攻撃を受けて…
 死んだとばかり思ってたのですが、生きてるんですね。


「ここは…何処ですか?」
「街のホテルだよ。あれから3日経ってる。ずっとは眠ってたんだ」


 3日!?そんなにも経ってるんですか!?
 急いで戻らないと…っ!
 慌ててベッドから降りようとした時、「ジャラ」と音がしました。
 そして足にある違和感。
 恐る恐る布団を捲ってみると、私の足に鎖が繋がれていました。
 鎖は私の足と部屋の太く大きな柱を繋げていたのです。


「ッ!?何!?」
「ごめんね、驚いた?でもには聞きたい事があるんだ」
「聞きたい事…ですか?」
「うん。どうしてがアクマを庇ったのか。が仕えてる一族が誰なのか。聞きたい」
「………………」


 それは教える事はできません。
 ノアの皆様は、私にとって何よりも大切な人。
 例えアレンであろうと、エクソシストに答えるはずありません。
 唇を噛み黙って俯いた時、ドアをノックする音が聞こえました。
 私の代わりにアレンが返事をし、中へ入るよう促しました。
 入って来たのは、白い服を着たメガネの青年です。
 その後ろには高い位置で髪を二つに括った少女と、
 アレンと一緒に戦っていたエクソシストの青年がいました。


「やあやあ、目が覚めたかい?ボクはコムイって言うんだ。彼女はリナリー。
 ボクの可愛い可愛い妹だよvで、この眼つきが鋭いのが神田くん。君は?」
「…………………」


 勝手に自己紹介を始めたコムイと言う人を横目で見て、再び私は俯きました。
 敵であるエクソシストと仲良くなるつもりはありません。
 すぐにでもここから出て行きたいのに。


「テメェ。何か喋りやがれ。死にてぇのか?」


 怒気を含んだ声で神田さんが話しかけてきます。
 それを庇ってくれたのはアレンでした。


「カンダっ!そんなに怒らなくてもいいでしょう。が怖がるじゃないですか」
「あぁ?テメェは敵を庇うのか?」
は敵じゃないです。僕の大切な幼馴染なんですっ!」
「その幼馴染が、何でアクマを庇うんだよっ!」
「それは…」
「はいはい。ストーップ」


 アレンと神田さんとのやり取りを止めたのは、コムイさんでした。
 コムイさんは二人を止めた後、私のほうを向いたのです。


「名前はくん…だね。10年前、黒の教団に引き取られるはずだった」
「っ!!」
が…?黒の教団に引き取られるはず…だった?」
「どういう事だ?コムイ」


 コムイさんの言葉にアレンは驚き、神田さんは訝しんでいます。
 当然ですよね。アクマを庇った私が、本当なら黒の教団に引き取られるはずだったんですから。


「アレンくんから連絡を受けてね、気になって調べてみたんだ。するとある事件が出てきた。リナリー」
「はい、兄さん。この書類よ」


 コムイさんはリナリーさんを呼んで、書類を受け取ったんです。


くんの母親…と言っても、本当の母親じゃなくて、父親が再婚してできた母親だね。
 その母親がアクマになった。不慮の事故で夫を亡くした哀しみを千年伯爵につけ込まれたんだね」
「…やめてください」
「アクマがいるからね。エクソシストを派遣したんだけど… その時に『ママを殺さないで』と訴えた少女がいたらしい」
「や…めて」
「その少女は他に身寄りがなく、教団で引き取る事になったんだけど、エクソシストが一瞬目を離した隙にいなくなった。
 エクソシストもそれから探したらしいけどねぇ。どうしても見つからなかった。
 いくら見知った街で、裏道なんかを知ってたとしても少女の足。
 エクソシストが見つけれないはずがない。なのにどうしても見つけれなかった。
 当時の関係者は凄く訝しんでたらしいよ」
「まさか…アクマに連れ去られた?」


 コムイさんの言葉に、アレンが驚いたように声をあげました。
 やめてください。これ以上続けないで。
 未だに忘れられない傷を抉る様な事はやめて…っ!


「…ここからはボクの想像なんだけどね、アクマがくんを攫うとは思えない。
 攫うとしたら千年伯爵か…」
「ノア一族かっ!?」


 今度は神田さんが驚いた声をあげました。
 そして私を見てきます。
 エクソシスト達の視線に耐えれなくなった私は、ぎゅっと目を閉じました。
 浮かんでくるのはティキの顔。
 逢いたい…ティキに逢いたいです。
 でも…今の私にできるのは、ノアの皆様にご迷惑をかけない事。
 口をぎゅっと閉じました。


「ねぇはアクマが仲間だって言ったよね?
 どうして?は千年伯爵の仲間なの?」


 アレンが哀しげな表情で尋ねてきました。
 もし…この再会がなかったら…
 10年振りに両親のお墓参りをした時に会ってただけだったら…
 アレンは私の大切な幼馴染だったでしょう。
 でも…アレンはエクソシスト。
 私の憎むべき相手…!!


「私が伯爵様の仲間だなんて、畏れ多いです。
 ただ…一つだけ言える事があります」


 キッとアレンを真っ直ぐに見つめました。


「私はエクソシストを憎んでいます。
 アレン、例え貴方が大切な幼馴染でも、エクソシストである以上、憎むべき相手です」
!?どうして?」
「エクソシストは母を殺したから。『殺さないで』と言った私の目の前で母は殺されました。
 今でもその光景を忘れられません。私から家族を奪ったエクソシストを赦さないっ!」
「だけど…アクマは…アクマは人を殺すんです。
 千年伯爵に組み込まれたプログラムによって!!」
「知ってるわ!そんな事くらい知ってる。でも…私は赦せないの」
…僕はアクマに内蔵されてるアクマが見えます」


 アレンが急に話した内容に私は首を傾げました。







後書き
あれ…?あれあれ?
おかしいな…ティキ夢のはずなのに、ティキがいない…
おまけに、シリアスっぽくなってきてますよ?
大丈夫なのか?私…