所用があって、私は今ある街に来ています。
 この街も、活気があって賑わってます。
 最初は私がこの街に来るのをティキは反対してました。
 『危ないだろ』って、物凄く心配してましたね。
 私も子どもではないのですから、自分の身は守れますよ。
 そう説得し、何とかティキからの外出許可が得られました。
 ただ、やはりと言うか…
 アクマを護衛につける事が条件です。
 ティキは本当に心配性ですね(苦笑)





華舞う場所で 8





 例によって例の如く、アクマには待ってて貰って買い物を済ませました。
 買い忘れがないか確認をし、アクマの所に戻っている時の最中です。


 ドオオオォォォン!!


 大きな爆発音が聞こえたのです。
 驚いて爆発音のする方を見たのですが…
 その方向は、私達が待ち合わせをしていた場所。
 何だか嫌な予感がします。
 急いで待ち合わせ場所に向かうと、そこで信じられない光景を目にしました。


「え…エクソ…シスト…?」


 そう。2人のエクソシストが転換前のアクマと戦っていたのです。
 日本刀を持った黒髪の青年と、フードを被った少年の二人です。
 アクマはエクソシストを攻撃してました。
 あのアクマはレベル2ですが、エクソシスト2人に押され気味です。
 このままでは破壊されてしまう!!
 母をエクソシストに殺されたシーンが頭をよぎった瞬間。
 私は思わず走り出していました。


「これで終わりだ。六幻…
「やめてください!!」
「「!?」」


 いきなり現れた私を見て、エクソシスト二人は驚いています。
 私がアクマを庇ったからでしょう。
 ですが今がチャンスです。


「急いで戻りましょう」


 お屋敷に戻るようアクマに声をかけました。
 イノセンスを破壊出来ないのは残念ですが、不利な状態で戦ってアクマの数を減らすより良いです。
 もし戦うとしても、もっと私達に有利な状況でないと、アクマの無駄死にになってしまいます。
 それは絶対に避けたい事。
 だから逃げることを選択しました。
 そう…選択したはずだったのに………


!?何をしてるんですか!?」


 フードを被ったエクソシストの少年が話しかけてきました。
 もしかして…この声は…


「あ…アレン…?」


 まさか。あの大好きな幼馴染が、憎むべきエクソシストだなんて…
 そんなはずはない。何かの間違いであってほしい。
 ですが、その願いは聞き入られませんでした。
 フードを外した少年は、やはりアレンだったのです。


、それはアクマなんだ!離れて!!」


 アレンが必死な様子で私に話しかけてきました。
 けれど、退く気配のない私を見て、黒髪の青年は私を睨んできます。
 初めて受ける鋭い殺気に、体中が震えてきました。


「テメェが何者かは知らねぇが、ソレを庇うなら一緒に破壊するまでだ」


 再び刀を構えた青年に、今度はアレンが立ち塞がります。


「邪魔をするな」
「待ってください!は人間です!僕の大切な幼馴染なんです!!」
「人間が何でアクマを庇う!?」
「それは…僕が…僕がに聞いてみます。だから攻撃しないでください!」


 青年を説得したアレンが、私を見据えてきます。
 私の記憶にない、哀しげな表情で………


は知らないかもしれないけど、貴女の後ろにいるのはアクマなんです。アクマと言うのは…」
「千年伯爵様が作り出した兵器…でしょ?知っているわ」
「っ!?…アクマを知って…?」
「えぇ。貴方達エクソシストのことも知ってるわ」
「だったら、どうしてアクマを庇うんですか!?アクマは破壊しなくちゃいけないのに!!」


 どうして?何でアクマを庇うの?
 そんな事、決まってるわ。


「彼は仲間だからです」
「アクマが…仲間…?もしかして、この間言っていた一族って…ノアの事なの…?」


 アレンと再会した時、『ある一族に仕えてる』って言ったわ。
 もちろん、それはノア一族の皆様よ。
 でもね…


「エクソシストに答える義務はありません」


 母を殺したエクソシスト。
 未だにあの痛みを忘れてはいないの。
 愛する母を殺され、独りぼっちになってしまった時の痛みを!


!!退いてください!!アクマは哀しすぎる。破壊しなくちゃいけないんだッ!!」
「いいえ、退きません。大事な仲間を殺させませんっ!」
「どうして…?に何があったの?この10年、に何がっ!?」
「…………」


 何も答えない私に、黒髪の青年が話しかけてきました。


「テメェはソレがアクマで、アクマがどう言うものかも知ってんだな」
「えぇ」
「だったら敵だ。いくぞ六幻」


 青年は日本刀を構え、私達の方へ向かってきました。
 ………私もここで死ぬのかな?
 死んだら、お父さんやお母さん達の所へ逝けるかな?
 私が死んだら、ノアの皆様は哀しんでくださるでしょうか…


「待ってください!カンダ!!あの人は…は人間です!!」
「アクマの味方をする以上、敵に決まってんだろ。イノセンス発動…」


 青年の持つ日本刀が、白く輝いていきます。
 私もここで終わりですね。
 ロード様、私がいなくても朝起きるでしょうか?
 お掃除はきっとアクマがしてくれると思うので大丈夫でしょう。
 スキン様は甘い物がお好みなので、皆様より砂糖や蜂蜜を多めにいれなくちゃいけません。
 この10年ノアの一族にお仕えして、皆様の好み等を把握してきました。
 それをこれからも出来ないのが残念です。
 さようなら、皆様。
 私は皆様にお仕えする事ができて、幸せでした。
 そしてティキ。
 私も愛しています。
 この想いを伝えられないのが心残りですね。
 最期に愛しい人の顔を想い浮かべたくて瞳を閉じました。
 浮かんだのはティキの優しい笑顔。


「愛して…ます」


 そう小さく呟いた瞬間、大きな衝撃を受けました。
 深く沈んでいく意識の中、誰かが私を呼ぶ声だけが聞こえました。





後書き

ワォ!話が急展開☆
さん大ピーンチっ!
これから、どうなるんですかねぇ(おまいが聞くな)