アレンとの再会から数日後。
 晩餐会は恙無く終わりました。
 皆様、私の作った料理を美味しいと言って仰ってくださいました。
 それが凄く嬉しかったです。







華舞う場所で 7







 晩餐会も終わり、日常が戻ってきました。
 ロード様のお世話をして、ティキが遊びにいらして…
 こんな些細な毎日が凄く幸せです。


、いるか?」
「ティキ!どうされたのですか?」
「ん?の顔を見に来た」
「えっ?」


 ティキの思いがけない言葉に、思わず頬が熱くなりました。
 恥ずかしくてまともにティキの顔が見れない私を、ティキは笑って見ています。


「くく。やっぱりは可愛いな。苛め甲斐がある」
「ティキっ!?」


 ティキのとんでもない発言に非難の声をあげました。
 けれども、そんな私をティキはますます楽しそうに見てきます。


「そんな顔で睨まれても怖くねぇよ。いや…寧ろそそられるな。、こっち向け」
「嫌です!」


 ぷいっと顔を背けると、ぐいっと顔をティキの方へ向けられました。
 ななな…何だか以前の記憶が蘇るのですが(汗)


「ティ…ティキ!?」
「し。黙ってな。オレのお姫様」


 ゆっくりとティキの顔が近付いてきて…
 ぎゅっと目を閉じると、唇に暖かい感触がしました。
 ティキはよくキスをしてきます。
 小鳥が啄ばむような優しいキスや、全てを喰らいつくすような激しいキス。
 たくさん、たくさんしてきます。
 名前を呼ばれて振り向いた瞬間にキスされた事もありました。
 でも…嫌じゃないんです。
 ティキに触れられるのは、凄く嬉しい。
 やっぱり私はティキの事を………


「何を考えてんだ?」


 唇が離れた瞬間、ティキが尋ねてきました。
 どうしてそんな事を聞くのでしょう?
 不思議に思った私は、ティキに問いました。


「何でって…この間の晩餐会の買い物辺りからか?が嬉しそうにしてるからさ」
「そう…ですか?」
「あぁ。オレがの事で間違えるはずねぇだろ」


 えっと…買い物辺りから…あ!もしかしてあの事ですか?


「私が嬉しそうに見えたのは、あの時にアレンに会ったからですね!」
「アレン?名前からして男だな。誰だソイツは…」


 アレンの名前を出した途端、ティキの機嫌が悪くなったのですが………
 ティキは顔が良い分、怒ったり不機嫌になったりすると迫力があるんですよ。
 本音を言ってしまえば、ティキの前から逃げたいのですが…
 そんな事ができないのも、許されないのも判ってます。ハイ…


「アレンは、小さい頃に近所に住んでた男の子なんです」


 と、アレンの話をし始めました。
 ティキは真剣な顔で私の話を聞いています。
 そんなに真剣に聞かなくても…小さい頃の思い出話なんですけれど…


「じゃあアレンはにとって幼馴染なんだな?」
「はい。父と母との思い出を共有できる、大切な幼馴染です」
「『大切な』幼馴染…ねぇ。もしかしてがノアと一緒にいる事も話した?」
「まさか!!ある一族にお仕えしてる事は話しましたが、皆様の事は一切話してません!
 今の私の一番大切なものは、ノア一族の皆様なんです。
 不用意に話せばエクソシストにも伝わるかもしれない…そんな愚かな事は致しません!」


 これ以上エクソシストに私の幸せを壊されたくありません。
 アレンが黒の教団と繋がってるとは思いませんが、リスクは避けたいですから。


「悪ィ。がそんな事するはずねぇよな」
「いえ…私こそ、声を荒立てて申し訳ありません」


 頭を下げるとティキは、ぽんぽんと頭を撫でてくれました。
 驚いて顔をあげると、優しく微笑むティキと目が合いました。
 どれだけ、この笑顔に救われてきたのでしょう。
 母を殺され、一人になりかけた私に、居場所と家族をくれた人。
 やっぱりティキの事、好きです。
 ノアの皆様の誰よりも…そして伯爵様よりも…
 この気持ちは、家族への『好き』ではなくて…


「ティキ」
「あ?何だ?」
「あの…私…ティ「たっだいま〜〜」


 ティキに思いを告げようとした時、ドアが開きました。
 入って来たのはロード様。
 気付けば、もうロード様が帰ってくる時間だったのです。


〜〜。ただいまぁ」


 ぽふっと、ロード様が抱き付いてきました。
 その可愛らしい行動に、私も頬が緩みます。


「お帰りなさいませ、ロード様。今日も楽しかったですか?」
「うん、まぁね〜〜。ところでティッキー来てたんだぁ」
「何?来たら駄目なワケ?」
「別にぃ?、お腹空いた〜」


 そうですね。そろそろおやつの時間です。
 今日は何を作りましょうか?


「ロード様は何が食べたいですか?」
「う〜ん…ムースが良いな」
「ムースですか…そうだ!この間、伯爵様から『抹茶』を頂きました。
 今日は抹茶ムースに致しましょう。ティキも食べて行きますか?」
「そうだな。オレも頂くよ」
「はい!畏まりました」


 そう言って、私はキッチンへ向かいました。
 ロード様達とは違う、ティキへの想い。
 きっと、これが『愛』なのでしょう。
 まだ確信は持てません。
 でも…今度この想いをティキに伝えようかと想います。







後書き
ティキさんはSだと思ってます。
Sなティキさんは、さんをいじめながら愛でてると信じたいです(笑)