あの日から10年。
物語の序章は、本編へと突入していく。
華舞う場所で
「ロード様、朝でございます。そろそろ起きて下さいね」
カーテンを開けながら寝ているロード様に声をかける。
ロード様はベッドの中で寝返りをうちながら、もう一度寝ようと布団を被った。
その様子に苦笑しながらも、もう一度優しく声をかけた。
「ロード様。本当に起きてください。学校に遅れてしまいますよ」
「ん〜〜〜…今日は休む〜〜〜」
「いけません。学校に行かないと、私が伯爵様に怒られてしまいます」
「大丈夫〜〜。千年公はに甘いからぁ」
「そう言う問題ではないですよ。起きてくださいませ」
ロード様にもう一度声をかけるけど、ベッドから起きる気配は皆無ね。
さて、どうしようかしら…?
本気で悩んでいたとき、ロード様のお部屋のドアを叩く音が聞こえた。
入って来たのは、ロード様と同じ一族のティキ様。
―私の恩人―
「、ロードの目ぇ覚めたか?」
「ティキ様…それがまだ…」
「やっぱり?ロードの寝起き、最悪だからなぁ。
仕方ねぇ。ロードはこのまま寝かせておいて、コイツの分の朝食、俺が食ってイイ?
今朝は特製のパンケーキだろ?俺好きなんだよね」
ティキ様のこの言葉を聞いた瞬間、ロード様はベッドから勢いよく起き上がった。
そしてティキ様を睨みつける。
「ティッキー、僕の分のパンケーキ食べたら殺すよ?」
「起きない奴が悪ィんだろ。と言っても、起きちゃったか。仕方ねぇ。
大人しく自分の分を食べるとしますか。じゃ、先行ってるな」
ティキ様はそう言い、ロード様の部屋を後にする。
部屋に残った私は、ロード様の身支度を手伝うべく傍に寄った。
「おはようございます、ロード様。ふふ。大丈夫ですよ。
パンケーキはちゃんとロード様の分もありますよ」
「やった〜〜。、大好きぃ」
「お洋服、ここに置いておきますね。私はもう少し朝食の準備をしてまいります」
ロード様の服を用意し、厨房へ向かう。
私がこのお屋敷で働き始めて約10年。
アクマになった母親をエクソシストに殺されたあの日。
行く宛のなかった私をティキ様は連れてきてくださった。
そして、ロード様のお世話係になった。
初めは驚くことが多かったけど、今ではここの暮らしが好きよ。
皆様、優しくしてくださる。
例えあの方達が何者であっても………
「」
「はい?何ですかティキ様?」
不意に呼び止められ振り返ると、先にダイニングへ行ったはずのティキ様がいた。
クセのある髪を無造作に下ろし、いつもとは違うラフな格好をされている。
相変わらずティキ様はかっこいいです(笑)
だけど、今は何だか憮然とした表情をしている。
どうしたのかしら?
「いつも言ってるけどさ。何で『ティキ』って呼んでくんねぇの?」
「え…?だってティキ様はお仕えする一族の方ですし…」
「俺がイイってんだからイイんだよ。ほら呼んでみ?『ティキ』って」
「ですが………」
「遠慮する事なんて無ぇって。も家族だろ?」
ティキ様の意外な言葉に、目が丸くなった。
「私も…ですか?」
「そ。10年前、俺が連れてきた時点では家族。
千年公も何も言わねぇんだし、の事を認めてるんだって」
「伯爵様も…認めてくださってる…?」
「でなけりゃ、とっくに殺されてるさ。それに俺達ノア一族は、皆が大好きなんだぜ」
「あ///ありがとうございます///」
いきなりの言葉に少し気恥ずかしい気もするけど、大好きな皆様に好かれているのは純粋に嬉しい。
ティキ様の言葉にはにかんでいると、不意に腰を引っ張られた。
引っ張った相手はティキ様。
いきなりの事で驚いた私は、そのままティキ様の胸に倒れこんでしまったの。
「ティ、ティキ様!?」
「『ティキ』だって言ってんだろ?ほら、呼んでみろよ」
耳元で囁かれる。
ティキ様の低く透った声と、その吐息に体が震える。
電気が体中を走る感覚に耐えるため、ティキ様の服をぎゅっと掴んだ。
そんな私を、ティキ様は更に強く抱き締める。
「ほら『ティキ』って呼んでみろ」
「ティ…ティキ…?」
一生分の勇気じゃないかと思うくらいの勇気を振り絞り、『ティキ』と呼んでみたの。
なのにティキ様は何も言わない。
どうしたんだろう?と訝しんでいると…
「ヤベ…すっげぇ可愛いっ!」
ぎゅーっと抱きしめられる。
「ちょ…ちょっとティキっ!離して下さいませ!」
「ん〜…あとはその敬語だよなぁ。無くせねぇ?」
「流石にムリですよっ!離して下さいませ〜〜〜」
ティキの腕の中でもがいていると、準備の終わったロード様が部屋から出てきたの。
「ティッキー、何やってんの?」
「あ?を愛でてんのv」
「ふーん…僕も混ざる〜〜」
今度は後ろからロード様に抱きつかれる。
ちょ…お二方ともっ!
離してくださいませっ。
朝食の準備が出来ないですよ〜〜〜。
ロード様が学校に遅れてしまいます…
必死で訴えるも、ティキもロード様も離してくださる気はないみたい。
どうしようか本気で悩んでいたとき。
「二人ともが困っているでしょウv」
伯爵様がお見えになったの。
「伯爵様、おはようございます」
「はイ。お早ウ。、我輩も朝食を作って貰えますカ?」
「もちろんです!私の料理で宜しければ」
「の料理、美味しくて好きですヨvと言うわけで、二人とも、を離しなさイ」
伯爵様に言われ、お二方ともやっと私を解放してくれた。
さて…と。伯爵様もいらっしゃいますし、はりきってもう少し作ろうかな。
私の作った料理が好きだと仰ってくださる方の為に腕を振るう。
それは私にとって何よりも嬉しい事。
―願わくは、この幸せが続きますように―
後書き
ノ…ノアサイドって難しいです(汗)
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