ある任務の帰り道。
生まれ故郷の近くを通った私達は、無理を言ってお墓参りをさせて貰いました。
木洩れ日のような 14
「我侭を言ってすみません。ありがとうございました」
私はお墓参りに付き合って下さったアレンと神田さんにお礼を言いました。
最初は面倒くさそうな顔をしていた神田さんですが、結局は一緒に来てくれてます。
神田さんて、何だかんだ言いながら優しいですよね。
約1年、皆さんと一緒にいて沢山の良い所を知りました。
皆さんの優しさに触れました。
でも…私が本当に逢いたいのは………
愛おしい人物が頭に浮かびます。
ですが今はそれを考えないようにする為に、頭を振りました。
「?どうかしたの?」
「いいえ。何でもないですよ、アレン」
「そう?それなら良いけど…は一人で抱え込んじゃうから心配だよ」
「ふふ。アレンは優しいですね」
「おい、何話してンだ。用が終わったらさっさと帰るぞ」
神田さんが睨みながら私達にそう言います。
アレンは神田さんの言い方が気に入らなかったのでしょうか?
神田さんに反論していました。
アレンと神田さんの見慣れたやり取り。
『また始まってしまいましたね』
内心そう思うくらい、私は教団にいるのに慣れているのに………
思い出されるのはティキのことばかり。
優しい笑顔、かけてくださった言葉。
忘れた事なんて一度もありません。
愛される資格なんてあるはずもないのに………
それでも『愛してる、』と言って貰いたい愚かな私がいます。
涙が出そうになった私は、その場で立ち止まりました。
………どうしたんでしょう、私は?
やけに感傷的になってます。
エクソシストになって、初めて故郷に帰って来たからでしょうか。
ここは、ティキと初めて会った街。
そう言えば…初めてティキと会った、あのお花畑は今もあるのかしら?
両親のお墓参りは数度来ましたが、お花畑には行ってなかったです。
「、どうした?」
立ち止まった私に気付いた神田さんが声をかけてきました。
そして私の様子を見て訝しんでいます。
「神田さん?」
「いや、アンタの様子が変だったから…何か考えてたのか?」
「特に何も…ただ、ここからもう少し歩いた先にお花畑があったんです」
「花畑?」
「はい。小さい頃の話なので、今はないかもしれませんが…」
「それって、昔が花冠を作ってくれたあのお花畑?」
「はい。色とりどりのお花が咲いて綺麗でしたよね」
「うわぁ!懐かしいなぁ。ねぇ、行ってみようよ!」
「え…?でも、早く教団に戻らないと…」
確かにお花畑は懐かしいですし、私には思い出の場所。
凄く行きたいですが、あまり時間がないのも事実です。
それに神田さんには、何の想いもない場所。
わざわざお墓参りをする為に付き合って頂いたのに、これ以上我侭をいう訳には…
チラっと神田さんを見ると、彼は軽く溜息をつきました。
やっぱり呆れて…ます?
「別に、少しくらいなら構わねぇよ」
「え…でも…」
「カンダもそう言ってるんだし、言ってみよう!ね?」
アレンは私の手を取り、お花畑に向かって歩き出しました。
思いがけず寄る事になった思い出の場所。
今も、あの時みたいに沢山の花が咲いていると嬉しいです。
少しでもティキとの想い出に出会えたら…
淡い期待を抱きながら、私も歩き出しました。
+ + + + +
千年公からの用事を終えたオレは、すぐに家に帰る気になれず、フラフラと歩いていた。
1年前までは、しょっちゅう家に帰ってたが、今はあまり足を運んでいない。
正直に言えば、のいない家に帰るのは辛い。
あそこは、との想い出が沢山ある場所だからな。
家に帰ると、がいない事実を再確認させられる。
オレは煙草を取り出し、それに火をつけた。
肺まで吸い込み、そして吐き出す。
紫煙が青い空に吸い込まれたかのように消えていく。
…が行方不明になって1年以上経つのか。
あのアクマにを探させているが、一向に見つかる気配はない。
遺体はなかったから恐らく生きてはいるのだろう。
「なぁ…今何処にいるんだ?」
答えが返ってこないと知りつつも、俺は尋ねずにはいられない。
もう一度紫煙を吸い込み、吐き出した。
がいなくなってから消えないこの喪失感。
紫煙と共に消えてしまえばいいのに。
………なんてオレらしくねぇな。
の事を思い出すのは辛いが、を愛した事を後悔した事はない。
いや、今でもを愛してる。
がオレの腕の中に帰ってくるなら、どんな事でもするだろう。
だから…帰ってこい。
そんな事を思いながら歩いていたオレは、辺りを見て立ち止まった。
前に見える街は、の生まれ故郷。
そしてオレ達が出会った場所。
懐かしいな。
と出会ったあの花畑に、久々に足を運んでみるか。
そう思い、俺は街に向かって足を進めた。
―少しでもとの想い出に出会える事を期待して―
後書き
おや?おやおや?
またまた話が急展開しそうな感じですよ?
さんもティキさんも、思い出のお花畑に向かってます。
このまま二人は逢う事ができるのでしょうか?
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