ふと目を覚まし、私はベッドから起きました。
動くたびに『ジャラ』となる鎖の音。
既にあたりは暗くなりつつあります。
私は自分の身に起こった出来事を思い返しました。
華舞う場所で 11
「っ!」
バタンと勢いよくドアを開けて入って来たのはアレン。
彼は起き上がっている私をみて、急いで駆け寄ってきました。
「もう起きて大丈夫なの?体の調子は?痛い所はない?」
矢継ぎ早に質問してくるアレンの頭を、そっと撫でました。
いきなり頭を撫でられたアレンは、きょとんとしています。
けれども、すぐにムッとした表情を浮かべました。
「、何で頭を撫でるの?僕はもう子供じゃないんだよ?」
「アレンはまだ子供ですよ。それに撫でたのは何となく…ですね」
「子供じゃないってば。背だってとっくにを越えてるんだ!」
そうやってムキになる所が子供なんですよ。
なんて事を言ったら、ますますアレンは怒りそうです。
でもね…私は見ちゃいましたよ。
頭を撫でた時、一瞬だけでしたが嬉しそうな顔をしてるのを。
マナさんや私の両親に誉められて頭を撫でられた時と、同じ表情でしたよ。
あまり撫でるとアレンがますます怒りそうなので、私は腕を下ろしました。
「体は大丈夫。何ともないわ。でも…まだ少しふらつきます」
「あまり無理はしないで。もうすぐリナリーがご飯を持ってきてくれるから、それまでベッドで寝ていよう」
「そう…ですね。そうします」
『はい』とアレンは私に手を差し出しました。
にっこり笑うアレンに、私も微笑み返します。
そしてアレンは私をベッドの方に連れて行きました。
…私は上手に笑えていたでしょうか?
でも…アレンが何も言わないという事は、きっと上手に笑えていたのでしょう。
ベッドに入った私は、己の身に起きた事を思い返しました。
リナリーさんに呼ばれ、一度部屋を出たコムイさん。
次にお二方が戻ってきた時、衝撃的な事実を突きつけられました。
まさか私がエクソシストだったなんて………
† † † † †
私の前に差し出された、光り輝くもの。
「くん。これに触れてみてくれないかい?」
コムイさんに言われ、疑問を浮かべながらも私はそれに触れました。
その瞬間、それは私の中に入ってきたのです。
「やっぱり…キミは適合者だったんだね」
「適合者?どういう事だ、コムイ」
コムイさんの言葉に、神田さんが訝しみます。
私もアレンも、コムイさんの言葉の意味が判らず疑問が浮かびました。
「今のはイノセンスだったんだよ。リナリーが、イノセンスが反応しているのに気づいてね。
もしかしてとは思っていたんだけど…やっぱりくんはエクソシストだったんだ」
「私が…エクソシスト…?まさか…」
「いや、キミはエクソシストだ。現にイノセンスに選ばれてる」
コムイさんは…今なんて仰いました?
私が…エクソシスト?
母を奪った憎いエクソシスト…千年伯爵様や私の大事なノア様方の敵っ!?
まさか…そんな………
目の前が真っ暗になる…とはこんな感じなんでしょうね。
どこか遠くで人事みたいに思いながらも、私はコムイさんの話に耳を傾けます。
「今のはリナリーが任務で回収して来たイノセンスなんだ。
今まで何の反応も示してなかったのに、くんの近くへ持って行った途端、反応し始めたんだよ」
「私も吃驚したわ。
アレン君や神田の近くにいても何の反応もしなかったイノセンスが、さんの近くに寄った途端反応し始めたんだもの」
「本当にはエクソシストなんですか?」
「間違いないよ。現にイノセンスがくんの体の中へ入って行ったでしょ」
「ハッ!ノアに加担してる奴がエクソシストになれるのかよ」
神田さんの言葉は最もです。
私はノア一族に仕える者。
敵である私がイノセンスに選ばれるはずありません。
「そうは言ってもねぇ…実際にイノセンスに選ばれてるんだよねぇ。まさか体内に入るとは思わなかったけど」
「そう言えば…ッ!!、体は大丈夫!?苦しくないっ!?」
アレンの必死の顔に、私も我に帰りました。
体に以上はありません。
ただ…イノセンスが入った胸の部分に違和感がありますが………
「何とも…ないです…」
あえて伝えることも無いと思い、『大丈夫』と答えました。
アレンは安心した表情を浮かべると、再びコムイさん達と話を始めます。
その間、私は今起きた事を思い返していました。
私が…イノセンスに選ばれた…エクソシスト…
唯一アクマを破壊してしまう者…
千年伯爵様の敵。
それが私だったなんて………
何で私なのでしょう…?
ノアの皆様をお慕いしている私が、何故イノセンスに選ばれたのですか…?
3日前、買い物に出なければ、こんな思いをしなくても済んだ筈なのに…
いつもだったら、ロード様を学校へお送りして掃除をしているはずなのに。
掃除の最中にティキが来て、私をからかいながら優しく見つめてくださる………
『愛してる』と囁きながら、キスを沢山してきます。
ティキにキスされるのは恥ずかしいけど嫌いじゃありませんでした。
初めこそ気付かなかったけど、私もティキの事を愛していたのです。
家族としてではなく、一人の男性として…
だけど………
このままですと、ティキと敵対してしまいます。
嫌です…ティキと敵対するのは嫌。
ティキのご迷惑になるのは絶対に嫌です!!
二度と逢えなくても構いません。邪魔にはなりたくないんですっ!!
それに、ティキは優しい方。
自惚れかもしれませんが、私が教団側にいたら、絶対に哀しみます。
あの方の負担になる事はしたくありません。
だったら…残された道は一つです。
「………て…だ…………さい」
俯き掠れた声で言った私を皆は振り向きました。
「…?なに?どうしたの?」
アレンが心配そうに覗きこんできます。
「お願いです…私を殺してくださいっ!!」
「!?何を言ってるの!?」
「殺してくださいっ!お願いします!!私はノアの皆様を裏切りたくありませんっ!
大切な家族をこの手にかけるよな事はできませんっ!殺せないなら、この鎖を外してください!私が自分で――」
パンッ
涙を流しながら叫んでいる私の頬を、アレンが叩きました。
驚いてアレンを見ると、彼は怒っているようです。
「馬鹿な事を言うなっ!は僕の大切な人なんだっ!
それなのに殺せるはずないし、命を断つと判ってて鎖を外すわけないだろっ!」
「だけど私はエクソシストになりたくないっ!!
両親が死んで一人になった私に家族をくれた人を苦しめたくないんですっ!愛する人を裏切りたくないの!」
「僕だってを失いたくないっ!やっと再会できたのに「はいはい、ストップ」
アレンの言葉をコムイさんが遮ります。
急に話を止めたコムイさんを
「二人とも熱くならない。くん、ボク達が戦っているのは千年伯爵やアクマ達だ。人間を殺すことはしないよ」
「ノアの皆様も人間です」
「そうだね。でも伯爵側についてる。それにね、キミは貴重なエクソシストなんだ。人手が欲しい今、殺すことなんてしない」
『エクソシスト』
圧し掛かったその言葉に耐えれなくなった私は、俯きました。
そんな私の頭を、コムイさんが優しくなでます。
「くんにとって、これほど辛い事はないんだろうね。家族と引き離された辛さはボクにも判るよ。
でもね、『殺して』や『死ぬ』なんて言わないでほしい。生きたくても生きられない人だっているんだから」
コムイさんの言葉に、私はぎゅっとシーツを握り締めました。
辛くて痛くて、心が張り裂けそうです。
彼等はきっと私を殺してはくれないでしょう。
自分で命を断とうにも、ノア一族側にいた私に監視がつき、それもできなくなります。
どうしたらティキに迷惑をかけなくても済むのでしょうか…?
その事だけを私は必死に考えていました。
後書き
ヤヴァイです…
自分でも思ってもみなかった展開に発展中です(マテ)
…そろそティキさんを出したいな(切実)
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