ごめんね神田…ちょっと会うのが遅くなるかも…



Gebeurende vakantie  中編



 ん……ここは…?

 霞む頭を振り、自分が置かれている状況を把握する。

 神田と買い物に来て、いつの間にか逸れてしまったのよね。

 そして神田を探しているうちに、迷子の男の子…アッシュと会って。

 一緒に護衛の人を探している時に、あの青年にクロロホルムを嗅がされて……

 もしかして、私もそのまま攫われちゃいましたか?

 はぁ…(溜息)洒落にならないわよ…

 アッシュは無事かしら?

 あの状況だと攫われてるわね。ここにいれば良いのだけれど…

 とりあえず、ここはどこかしら?

 何かの建物の部屋だと言う事は判るわ。

 窓から現在地を確かめたいけれど、手足を縛られているから立ち上がれない。

 さて、どうしようかしら?

 まずは、この両手足の縄を切らなくちゃ。

 これは幸いにも両手が体の前で縛られてるから、錬金術の発動は可能だわ。

 それから、アッシュがいる場所を…ドアの向こうに誰かいる!!



「おや、もう起きてらしたんですか?」



 入ってきたのは、私達を攫った青年。

 意地の悪い笑みを浮かべ、私の反応を楽しんでるみたい。

 嫌な感じよね。



「ご気分は如何ですか?」

「最悪よ。レディがいる部屋にノックもしないで入ってくる男の人がいるんですもの」

「それはそれは…失礼致しました」



 青年は恭しく礼をする。

わざとらしい…



「私はナイジェルと申します。貴女の名前をお聞かせ願えませんでしょうか?」

よ。そんなことより、今おかれている状況を説明してほしいんだけど?」

「単刀直入に言うと、貴女を誘拐しました」

「でしょうねぇ。で、犯人は貴方でしょ?」

「はい。単独犯ではありませんがね。我々の目的はあの少年です。

 貴女はあの少年とたまたま一緒にいた。だから連れてこさせて貰ったんですよ」

「アッシュは?アッシュは無事なの?」

「えぇ。今のところは…ね」



 アッシュが無事なのは安心したわ。でも、いつ状況が変わるか判らない。

 早くアッシュを見つけ、ここから逃げ出さなくちゃ。

 恐らく私達をつけてた人物も一味なんだろう。

 となると…最低でも、ナイジェルを合わせて犯人は5人。

 だけど実際には、もっと犯人がいると考えても良さそうね。



「おや?恐がったり驚いたりしないんですねぇ?」

「不幸な事に、こう言う事態には慣れてるのよ」



 何度もトレインジャックに遭遇したし、傷の男にも命を狙われたわ。

 ホムンクルスに賢者の石を埋め込まれて、真理を見て…

 真理の代価に異世界に来てからはエクソシストとして戦ってる。

 これだけ体験していれば、誘拐の一つや二つどうって事ないわ。

 自分で言ってて泣けてくるけど…



「ははは。気丈なお嬢さんだ。気に入りましたよ」

「それはどーも」

「見た目は儚く美しいのに、意思が強くたおやかだ。どうです?私のものになりませんか?」

「………は?何を言ってるのかしら?」

「貴女を私のものにしたいのですよ。良い話だと思いますが」



 どこがどう良い話なのでしょうか…?

 簡潔かつ速やかに30文字未満50文字以上で話して貰いたいものです。

 初めて会う人に誘拐されて『私のものになれ』ですって!?

 冗談もほどほどにして貰いたいわ。

 それに私は…



「残念ですが、私は売約済みです」



 誘拐犯が幾ら美青年だからって私の心は動いたりしないわよ。

 私が愛してるのは、ただ一人だもの。

 それに正直な話、神田は貴方よりかっこいいわ。



「おやおや。それは残念ですね。ですがその方の事は諦めて貰うしかありません」

「どうしてかしら?」

「貴女がここを出る事が有り得ないからです」

「つまり…誘拐だけじゃなく監禁すると言う事?」

「監禁だなんて…貴女が恋人の事を忘れ、私に想いを寄せて頂けるまで居て貰うのですよ」



 それって立派な監禁じゃない(呆)

 しかも私が神田を忘れるなんて有り得ないわ。



「大丈夫ですよ。私は気の長い方ですから。さて、私は次の準備がありますので。

 今度は夕食を持って伺いますよ。あぁ間違っても逃げようとは思わないで下さいね。

 逃げ場なんてありませんから」



 ナイジェルはそう言うと、この部屋から出て行った。ご丁寧に鍵までかけて。

 ………はぁ。何でこんな展開になったのかなぁ。

 そう言えば…元の世界にいた時も、ホムンクルスに好かれてたっけ…

 私、変な人に好かれるのかなぁ(遠い目)

 それは兎も角として。ここから逃げなくちゃ。

 何か書くものは…ありませんね…

 仕方ないわ。

 人差し指を口元に持ってきて、それを思いっきり犬歯で噛む。

 痛った〜〜〜(泣)

 うん、でもまぁ上手い具合に血が出てきてくれた。

 手は体の前にあるけど、手首を縛られてるから合わせられないのよ。

 その血を利用して、床に練成陣を描く。

 練成した物は小さなナイフ。

 それを床に突き刺して、腕の縄を切った。

 続いて足の縄も切る。

 ふぅ。これで自由の身ね。

 っあ〜〜〜…無理な体勢が続いてたから骨が鳴ったわ…

 準備運動(?)も終え、窓から外を伺う。

 部屋の外は見渡す限りの断崖絶壁。ここから逃げるのは無理ね。

 だったらドアから出ていくしか方法がないわ。

 ドアに近付き人の有無を確かめるたけど、気配はない。

 私も甘く見られたものねぇ(笑)

 助けが来るのを待ってるか弱いお嬢様だと思ってるのかしら?

 ふふvその方が都合は良いけどvv

 ここを出て、まずはアッシュを探さなくちゃ。それから…

 作戦を練っている時。



 ジリリリリリリ



 わっ!?何?あれ…この音って…

 音がするカバンへ近付くと、中からゴーレムが飛び出した。

 これ…神田のゴーレム!!



!!聞こえるか!!』

「えぇ。聞こえるわ。どうしたの?」

『どうしたのじゃねぇよ!!お前どこに居るんだっ?』

「どこと言われても…ここはどこでしょう(汗)」

『はぁ?何言ってんだよ』



 呆れた声を出す神田に、事の顛末を話す。

 うわ〜………話せば話すほど神田の機嫌が悪くなっていくのが判る。

 ばっちり眉間にしわが寄ってるのが安易に想像できます。

 

『で?お前はどうするつもりなんだ?』

「へ?どうするって?」

『そこで大人しくしてるつもりはないんだろ?』



 さすが神田さん。よく判ってらっしゃる(笑)



「誘拐された子を探し出して、脱出するつもり」

『そうか。俺は今からそっちへ向かうからな』

「え?こっちへって…どうやって来るの?」

『教団にいるゴーレムを使うんだ。そのゴーレムに俺のゴーレムの居場所を探させる』

「へぇ〜。そんな事も出来るんだ。初めて知ったよー」

『感心してる場合か。もし俺が着く前にそこから脱出できたら駅に向かえ』

OK!駅で待ち合わせね♪」

 

 打ち合わせをし、会話を終了する。

 神田も迎えに来てくれる事だし、さくさく脱出しましょう♪









後書き

漸く神田さん登場。
声のみですけど…(汗)
神田さん、さんの性格を熟知してますねぇ(#^.^#)
展開的に次が最終話です。
さくさく書いてしまいますので、少しお待ち下さいませ〜〜vv