「某はこれからある村に行くのだが、殿も一緒に行かぬか?」


 幸村さんのこの一言で、物語はまた動き始めました。







木洩れ日のような 9







「それって私が行っても大丈夫なんですか?」
「もちろんでござるよ!そんなに遠くないし、殿も館の中ばかりじゃ退屈であろう?」


 そうなんです。この世界に来て早2ヶ月。
 今までお館の外に出た事がないんです。
 だからここ以外ってどうなってるのか凄く知りたかったの。


「行きたいです!是非連れてってください!」
「判った。では準備をしてきてくだされ」
「はい!あ…っと。その村まではどうやって行くんですか?」
「馬を使って行くでござるよ」


 そっか。馬かぁ。
 だったら着物はやめたほうが良いかも。
 む〜…初お出かけのときは、信玄様に頂いた着物を着て行きたかったんだけどな。
 でも着物を着ながら馬に乗る自信はないし。
 スカートも駄目だよね。
 となると、残る候補はジーンズかパンツか…
 よし、ジーンズにしよう!動きやすいしネ。
 上はこの世界に来る直前に買った、ベロアのパーカーにしよう。
 これってアンサンブルになってて、中はキャミなの。
 フード部分の内側と袖の部分はレースで可愛いんだv
 ヒトメボレで買ってしまった(笑)
 そうそう、ジーンズも左足の太ももの部分に蝶の刺繍みたいなのがあって可愛いのよ。
 服装が決まり、後はショルダーバックに必要な物…と言うか普段から持ち歩いてるものを入れて。
 よし、準備完了☆
 スニーカーを履き、幸村さんの所へ行く。


「幸村さん、お待たせしました」
「大丈夫でござるよ。そんなに待ってはおらぬ。
 それよりも…殿は異世界の服で行くのだな」
「はい。本当は信玄様に頂いた着物が良かったんですが…
 着物で馬に乗る自信はなくて…あ、もしかして似合ってないですか?」


 試着しないで買ったもんなー。似合ってなかったらへこむよ…
 恐る恐る尋ねると、幸村さんが慌てて否定したの。


「そんな事ないでござる!殿にとても似合っている。
 ただ殿のいた世界の服は、何とも奇妙な形をしていると思ったのだ」
「そうですか?ん〜…この世界の服と比べると、そうかもしれませんね。文化の違いってやつですよ」
「世界は広うござる!某が知らぬ事はまだまだ多い!
 殿の世界の事ももっともっと教えてくだされ」


 目をキラキラさせながら幸村さんが言う。
 な…なんて可愛いんですか!
 その真っ直ぐな瞳がたまらんとです(笑)
 好奇心旺盛な幸村さんを、我が家に招待したいです。
 ぜーったいに驚く&喜ぶと思うな。
 ホント、機会があれば幸村さんだけじゃなくて信玄様や佐助さんも招待したい。
 だって凄くお世話になってるから――


殿、どうしかしたのか?」
「へ?ううん、何でもないの。早く行こう?」
「了解した!」


 幸村さんが私を馬に乗せてくれる。
 ははん。どうせ一人で馬に乗れないさ。
 だって馬に乗るのって初めてなのよ。
 乗ってからどうすれば良いかも判らないっス。


「あの…私、馬に乗るの初めてなんですが…どうすれば良いですか?」
「へ?殿は馬に乗った事がないと申すのか?ならば遠出する時の手段がないではないか。
 まさか遠くへ行くときも歩いていたのでござるか?」
「いやいやいや。そんな事はしませんよ。『車』って言う移動手段がありますよ。
 他にも『電車』なんかもね」


 どんなものなのか幸村さんに聞かれたので、とりあえず簡単に説明しました。
 詳しい事は私も判んないって!
 とまぁ色々話しつつお館を出発しました。
 馬に関しては幸村さんが全て操作してくれるので大丈夫だそうです。
 幸村さん、安全運転でお願いしますね(苦笑)






























 馬を走らせる事約三時間。
 漸く目的地の村に着きました。
 幸村さんの運転(?)は………かなりスピードが出てました。
 うん、慣れればジェットコースターみたいで楽しい…よ?
 楽しいよ、楽しいのよ
 と、自分に言い聞かせてみたり。
 だって…こうでもしないと…怖いんですよ、正直な所。
 そして帰りも乗るのよ。
 楽しいと言い聞かせないと乗れにゃい…(汗)
 で、その肝心な幸村さんはと言うと、村の中でお仕事をしています。
 因みに私は村の外れにある森を散策しています。
 あ!もちろん森の散策は幸村さんの了承を得てるわ。
 ただこの辺りは『伊達領』との境があるらしいから注意しなくちゃ。
 うっかり入って掴まったら、幸村さんだけじゃなくて武田の皆さんに迷惑が掛かっちゃう。
 肝に銘じなきゃね。
 そんな事を考えながら歩いてたとき、物凄い風が吹いたの。
 何だこの突風は!?ってくらい凄い風。
 あまりの風に、ぐちゃぐちゃになった髪を整えていたとき。


「Shit!」


 と、近くで男の人の声が聞こえたの…









後書き
さん初お出かけ〜〜♪
ゆっきーと二人で遠出です(笑)
あ!甲斐と奥州が隣接してるのか?っていうツッコミはナッシングの方向で。
まぁ夢小説なので大目に見てください