何だこの突風は!?と思うぐらい凄い風のあと、
「Shit!」
と、近くで男の人の声が聞こえたの。
木洩れ日のような 10
辺りを見てみると、木の影に背の高い男性がいた。
腰に刀を下げているから、お侍さんだとは思うんだけど…
何だかその人、目を押さえてる。
どうしたんだろう?
「あの…どうかなされたんですか?」
恐る恐る尋ねてみると、男性は不機嫌そうに答えたのよ。
「あぁ?誰だおめぇは。俺に何か用か?」
「いえ…目を押さえてるので、大丈夫かなと思いまして」
「さっきの突風で目に塵が入ったんだよっ!」
「だったら涙を流してみると良いですよ」
「出来たら、さっさとやってる。できねぇから苦労してんだろうがっ」
間違いないですね。
うーむ…困りましたね。
目に塵が入った時の辛さは私も判るんですよ。
ならば仕方ない。最後(?)の手段を行使しますか。
ショルダーバックの中から小さなポーチを取り出し、目薬を出す。
普段コンタクトをしてるから、目が乾いたとき何時でも差せるように持ち歩いてるのよ。
まぁ潤いようだから、この世界の人が使っても害はないでしょう。
「ごめんなさい、ちょっと驚くかもしれませんが、我慢してくださいね」
一言断って、男の人の顔を上に向ける。
あ…この人って隻眼なんだ。
その事に驚きつつ、左目をガッっと開けたの。
「なっ!?テメェ何すんだ!!」
「いいから黙っててください」
手を振り落とされる前に、素早く男の人の左目に差した。
「テメェ…俺の目に何しやがったんだ…っ」
「目薬を差しただけですよ。
涙が流せないと仰ったので、かわりに目薬を差して涙の代わりをしたんです。
ほら、瞬きをしてみてください。塵、取れませんか?」
男の人は、言われたように瞬きをする。
すると塵が取れたらしく、目を開いた。
あら…?この人すっごく格好良いじゃないですか。
ふふv偶然とは言え、こんな美青年と話が出来てラッキv
と、そんな事を考えながら今度は鞄の中からタオルハンカチを出した。
「はい。これで拭いて下さい。目はどうですか?痛みません?」
「っ!?あ…あぁ。アンタのおかげで助かった。Thank you」
「You are welcome」
男の人はタオルハンカチを受け取り、涙を拭きながら言ったの。
だから私も何も気にしないで返事をしちゃったんだけど…
ん?んん??
今この人、英語を喋りませんでした?
「ほー。アンタ異国語が判るのか。Good!」
いやいやいや。Goodの意味が判りませんから。
と言うか。この世界では英語を『異国語』って言うんですね。
って感心してる場合じゃなくて…
この人、威圧感があって怖いよー(泣)
「Uh-n…それにアンタ、見た事ねぇ服を着てるな。Where are you from?」
「え…っと…どこからと言われましても…アッチ?」
とりあえず歩いてきた道を指差す。
すると男の人のこめかみがピクッって動いた。
………あれ?笑顔が徐々に怖くなってますが…(汗)
「A−ha―n.良い度胸だ。
こうなったらアンタが何者でどこから来たのか、
さっきの『目薬』ってなんなのかじっくり聞かせてもらおうじゃねぇか」
ヒィ!
そんな半目で睨まないで下さい。
顔が良い分、すっごく怖いですって(切実)
こうなったら逃げるが勝ちよね…?
「先に言っておくが、逃げようとしたって無駄だ。俺ぁ地の果てまで追いかけるぜ」
………ピーーンチ。
さんってばピンチですよ。
幸村さーーん!たっけてくださいーー!
心の中で叫ぶも、幸村さんは来てくれません。
うぅ…幸村さんの薄情者ーー(マテ)
半ば現実逃避をしていたら、美青年さんの接近を許してしまいました(汗)
「俺を目の前にして他事を考えるたぁ良い度胸じゃねぇか。アンタ名前は?」
「ひ…人に名前を尋ねる時は、自分から名乗るものですよ…っ!」
「Ha!この俺に意見するとはね。上等だよ、アンタ。俺の名は…『小十郎』だ」
「…と申します」
「ふーん。…ねぇ。で、はどこから来たんだ?それに変わった服を着てるな」
「えっと…これは…その…」
しまったー!こんな所でこんな質問をされるとは思わなかったよ。
これだったら、着物を着てきたほうが良かったー。
と、後悔先に立たずを実感しているけど、そんな場合じゃないって。
「どうしたHoney?黙ってたら判らんねぇだろうが」
「って誰がハニーなんですか!!」
ってしまったー!思わずツッコミを入れてしまったー!
どどどどどうしよう!?
不敬罪とかで、腰に下げてある刀で斬られないよね?
恐る恐る小十郎さんを見ると、彼は口角を上げて笑っていた。
ううん、笑うなんて可愛いもんじゃない。
ニヤリという効果音が背後に見えそうなくらい、黒い笑みだったの。
ヒィィ!!ホントどうしよう?
幸村さーん!ヘルプミーです!!
「ちゃんは威勢が良いねぇ。その調子で、どこから来たのか喋っちまえよ」
小十郎さんが近付いてくる。その度に一歩ずつ下がる私。
それを繰り返してるうちに、私は巨木まで追い詰められてしまったの。
真っ青になる私を見て小十郎さんはチャンスだと思ったのか、私の耳元に唇を寄せて囁いたの。
「もう逃げ場はないぜ。観念して喋ったほうが楽になると思うが?」
「ゃ…」
ヒィィィィ!本当に勘弁してください!!
耳が弱いんですよ、私。
そんな私の様子から、小十郎さんも耳が私の弱点だと気付いたみたい。
どんどん耳元で喋ってくるの。
もう…っ!いい加減にしてください!
また耳元で囁かれる前に、全力で小十郎さんを押したの。
まさか私が反撃するとは思ってなかったのかな?
少しよろめいたのよ。
今がチャンス!!
身を翻し、全力で幸村さんのいる村へ走っていく。
スニーカーをはいてて良かったー!
パンプスじゃ走れないもんね。
もうひたすら全力疾走ですよ。
後ろを見ている余裕なんてありません。
だから知らなかったの。
小十郎さんが懐かしそうに私を見ていた事に―
後書き
話しの展開を変えてみました。
あの人の登場です。
BASARAファンの方ならご存知の方です。
何で違う名前を名乗ったか?
それも今は秘密でござるーー(バカ)
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