昼食後のお手伝いを終えた私は、とりあえず部屋に戻ろうとしました。
え?方向音痴の私が無事に辿り着けるのか?
ははん。馬鹿にしちゃいけませんヨ。
すでに迷子中です(マテ)
木洩れ日のような 8
うわ〜〜…困った。本気で困りました。
かなりの確率で迷子です。
しかも、こう言うときに限って誰にも会いません。
ピンチな状態です。
どうしよう…?本当に部屋に帰れないかも…
第一、信玄様のお城の中だけど、ここ見た事ないよ〜〜。
こ…こうなったら最終手段よ!
「さっすけさ〜〜〜んっ!!」
と、大きな声で叫んでみた。
なーんてネ。流石の佐助さんも、いきなり呼んでも来れないよね。
ハハン。仕方ない。元来た道を戻りますか。
そう考えたとき。
「はいはい。呼んだ?さん」
しゅたっ!と佐助さんが現れました。
うそん………
「えっ!?さす…えぇ!?」
「何で俺がすぐに来れたのか不思議そうだねぇ」
「当然じゃないですかっ!信玄様のお城、すごく広いんですよ?
いくら大きな声で叫んだとは言え、遠くにいたら聞こえないじゃないですか。
あ!もしかして、偶然この近くにいたんですか?」
「ん〜…あえて言うなら近くにいたが正解かな?正確にはさんの後をつけてたの」
は?何でそんな事を?佐助さんってストーカー?
別に私をストーカーしても面白くも何ともないですよ。
そんな疑問を浮かびつつ、理由を佐助さんに尋ねたの。
「台所でさんを見つけたのは偶然だったんだぜ。そのとき女中に『部屋に戻る』って言ってただろ?」
そう言えばそんな会話もしましたねぇ。
女中さんに『何処行くのですか?』と尋ねられたから、とりあえず『部屋に戻る』って答えたんだっけ。
ふむふむ。それで?
「俺も真田の旦那に用があるし、さんと一緒に行こうと思ったわけよ。
だけどさーさん速攻で道を間違えるからさー。そのまま何処まで行くのか楽しみで、黙ってついてったんだ」
マジですか?
じゃあ何?私が迷子になってあたふたしてた様子を見て、佐助さんは楽しんでたと?
ふふ…ふふふ…ふふふふふふ…
上等じゃないですか!
「あはは。佐助さん殴っても良い?」
「ムリムリ〜。さんじゃ目ぇ瞑ってても避けれるよ」
くっ…事実なので言い返せない(悔)
こうなったら…幸村さんを使って仕返しするしかないですよね?(マテ)
私をからかった罪は重いですよ?
「んじゃま、(俺が)満足したから送ってきますよ。部屋に戻るんだよね?」
「ううん。やっぱり幸村さんの所へ行こうと思って」
「真田の旦那の所?旦那に用事でもあるの?」
「うん、ちょっとね」
まさか貴方に仕返しするためですとは言えないもの。
そこは誤魔化してっと。
「佐助さんこそ、幸村さんに用事なんですか?」
「そ。でもきっと俺が行ったら旦那は嫌な顔をするぜ」
「へ?何でですか?」
「これこれ。コレが理由」
と、佐助さんは手に持っていた紙の束を見せてくれたの。
これって…書類?
「そ。さんが来る前にやってた戦の事後書類。
真田の旦那は武将だから、こう言う書類をやらなくちゃいけないんだ。
だけど旦那ってばさー、こういう書類嫌いなんだわ」
「あ、そんな気がします。幸村さん、書類作成苦手そうですよね」
「そーなのよー。だけど旦那直筆の署名が必要だったりするじゃん?
まいっかい俺が苦労するんだよね〜。色々と」
「佐助さんも大変ですねぇ」
「ホント、忍使いが荒いから、参っちまうよ」
『はぁ…』と大袈裟に溜息をつく佐助さんが面白くて、クスクス笑う。
佐助さんって面白いよね。
話し上手で聞き上手だから、佐助さんと一緒にいると時間が早く過ぎる感じ。
今もあっという間に幸村さんの部屋に着いちゃった。
「幸村さん、です。お邪魔しても宜しいですか?」
「殿か?もちろんでござる〜。部屋に入ってくだされ」
幸村さんの許可が出たので、「お邪魔します」と言って障子を開ける。
部屋に入ると、文机に向かっていた幸村さんが笑顔で迎えてくれたの。
が、私の後ろにいる佐助さんを見ると、すごく嫌そうな顔をした。
「げっ!佐助ではないか。お前もいるならいると言え」
「え〜?執務中の旦那、俺が来たら問答無用で固有技を出すでしょ?」
「当然ではないか。執務している時のお前は、新たな仕事しか持ってこぬからな」
あぁ…だから幸村さんの部屋に着く直前、私に声をかけてくれって言ったのね。
というか…執務をやりたくないからって、佐助さんに固有技を繰り出すのね(汗)
幸村さんの固有技って、火系が多いんでしょ?
お城の中で繰り出して、火事にならないのかしら?
………バサラ技じゃないだけマシか(何か違う)
「ま、兎に角。これもやってくださいよ」
バサリと書類の束を佐助さんは机の上に置く。
どんな内容の仕事なのか気になった私は、書類を見てみたの。
ん?これって………
「佐助さん。この書類って、ここを計算すれば良いんですよね?」
「そうそう。でもその数が多過ぎなんだよねぇ。俺でもやりたくねぇもん」
「なっ!?佐助は自分がやりたくない仕事を某に押し付けるのか!?」
「何バカな事を言ってんの。コレは旦那の仕事でしょーが。俺には俺の仕事があります」
何だか果てしなく良い争いが続きそうだったので、「あの…」の声をかけて中断させました。
「差し出がましいかもしれませんが、幸村さんのお手伝いをしても良いですか?」
「殿が某の?」
「そりゃ良いだろうけど…大変だぜ?」
「大丈夫です。いい物があるんです。ちょっと待っててくださいね」
そう言い、私は一度自室に戻る。
和箪笥の中から、鞄の中に入っていたある『物』を取り出し、幸村さんの部屋に行った。
「お待たせしましたぁ!」
「さんの言ってた『良い物』ってそれ?」
「それは何なのだ?」
幸村さんも佐助さんも、私の持って来た物に視線は釘付け。
でも当たり前よね。この世界に『電卓』なんてないんだろうし。
いくら世界が違うからといっても、見た感じ文明的には『戦国時代』と同じなんだから。
機械と言えば『からくり』ぐらいなんだろうな。
ましてや精密機械なんてあるはずもない。
「これは『電卓』って言って、計算する機械なんですよ」
「聞いた事ないでござるな…佐助は?」
「俺もないねぇ。もしかしてさんの世界の物なのか?」
「そうですよん♪仕事では必須だったんです。論より証拠。一度やってみますねv」
お二方に、この世界の通貨単位と相関関係を教えてもらい、書類を見る。
その横に電卓を置き、スタンバイOK!
後は数字を見ながら利き手で電卓のキーを叩いた。
書類一枚分の計算をするのに、ざっと30秒くらいかな。
一度計算結果が出たんだけど、念のためもう一回。
こういうのって、1回だけじゃ駄目なんだよね。
2回以上やって、全部同じ計算結果にならないとネ。
今回はバッチリ!
念には念をって事で3回やってみたんだけど、全部同じ答えになりました☆
「幸村さん、この書類の金額ってこうなりますよ。3回計算して全部同じ結果になったので、正しいと思います」
「えぇ!?こんな短時間に3回も計算したと申すのか!?」
「ちょっと待って。どれどれ?」
佐助さんが書類を見ながら、この世界の計算方法で計算してる。
最初は信じられなくて当然だよね。
私も同じ立場だったら計算しなおすと思うし(笑)
「うっそ…合ってる。電卓って言ったっけ?さんの世界には便利な物があるもんだなー」
使ってみても良い?と佐助さんに尋ねられたので、電卓を渡しました。
佐助さんは上から見たり傾けて見たりと、色々眺めてます。
そして電卓のキーを叩こうとしたんだけど…
「さん、これって何て書いてあるんだ?」
佐助さんから電卓を受け取った幸村さんも、不思議そうに眺めていた。
あ、そっか。まだ数字ってないんだ。
漢数字が一般的なんだよね。
なので私は、お二方に数字キーと演算キーの説明をしたの。
その後、一番入力が速いからと言う理由で私が計算係に(笑)
結局佐助さんも手伝う事になり、三人で手分けしたら意外と早く執務が終わりました。
今回は幸村さんのお役に立てたみたいで嬉しかったですv
後書き
さん大活躍の巻き(笑)
何でさん、電卓が必要なお仕事なんですよ。
それはどんな仕事か…?
今は秘密ですv
機会があったら、その話も書こうと思います。
機会がなかったら…
ずっと秘密と言うことで(マテ)
因みに、持って来たものは電卓だけでは無いんですよ〜。
それは、今後ちゃんと書きますね。
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