信玄様に挨拶〜♪と思いつつ、佐助さんと訓練所に向かった私。
 そこで目にしたのは


「お館様〜〜〜〜!」
「幸村ー!」
「お館様〜〜〜〜っ!!」
「幸村〜〜〜〜っ!!」
「お館さむぁぁあああ!」
「幸村ぁぁぁあああっ!」



 と、お互い叫びながら殴りあってるシーンでした。
 って…えええぇぇぇぇ!?







木洩れ日のような 4







「あああああの!佐助さん!?」
「あちゃ〜。大将と真田の旦那、始めちゃってたか。
 あれ始まると長いんだよね〜」


 ちょっと待て?大いに待て?
 何ですか?佐助さんの言葉からすると、この奇怪な出来事は初めてじゃないんですか?
 信玄様ってここの領主様なんでしょ?
 幸村さん、殴っても良いの…?


「良いの良いの。どうせいつもの事なんだし」


 え?今、私ってば口に出したっけ?
 心の中だけで思ったような…
 佐助さん、もしかしてエスパー?


「だって俺忍よ?忍のする事なんざ何でもあり…だろ?」


 佐助さん怖ッ!!
 もう佐助さんの近くでは変な事を考えられたませんね。
 忍びなのに何で迷彩服なんだろうとか、ポンチョが可愛いな…とか。
 って…ヤヴァイ!今考えちゃったーーっ!
 お…怒られる〜〜〜?
 あたふたしながら、冷や汗をかいていた時。


「だっはっはっはっは!」


 と、佐助さんの笑い声が聞こえました。


「あーもう駄目。さん面白すぎ」
「え?」
「安心してよ。流石の俺様でも、心の中までは読めないからさ」
「へ?でもさっき私の考えてた事、当てたじゃないですか」
「あれはさんの表情を見たんだよ。さん、思ってる事が顔に出てるって言われない?」
「言われないですよ!」


 寧ろ、表情を作る方が上手なはずなのに…
 やっぱり佐助さんは忍びだから、洞察眼が鋭いのかな?
 むーとしながら佐助さんを見ると、彼は未だに肩を震わせて笑っていた。
 ………そんなに笑うなんて失礼じゃないですか?(怒)
 もう良いです。佐助さんなんて知りません。
 そう思い再び信玄様と幸村さんの方へ視線を戻す。
 きっとあれがお二人のコミュニケーションなんだろうなぁと思い見ていると、
 殴り合い(?)に夢中になっていた幸村さんが私に気付いたの。
 が、次の瞬間。


 ドゴォ!!!


 信玄様の拳が見事幸村さんにクリティカルヒット☆
 殴られた幸村さんは、ありえないくらい吹っ飛ばされました。
 って…うそん。


「幸村ぁ!少しの隙が命取りになると思え!」
「お…お館様ぁ!某、まだまだ未熟でございました!
 この真田幸村、どんな時でも隙を作らぬよう、努力する次第でございます!」
「うむ。幸村!」
「お館様!」
「幸村ぁ!」
「お館様ぁ!」


 ………何時まで続くのですか?これは…
 もしかしてこれを毎朝やってるのでしょうか?


「もしかして、これを止めるのが佐助さんのお仕事なんですか?」
「そーなのよ。判る?俺の苦労」
「あー…何となく判りました。心中お察しします」
「最後の言葉が棒読みだねー。
 ま、いいや。さんも大将に用事があって来たんだし。そろそろ止めるとしますか」
「あ!良いですよ。私は信玄様にご挨拶に来ただけですから」
「だーめ。挨拶は大事な事だからね。
たーいしょー。さんが用事があるそうですよ」
「むっ?がワシにか?」


 信玄様は幸村さんとのコミュニケーションを終え、私の方に歩いてきたの。
 やっぱり信玄様って威厳があるよね。
 普通に歩いているだけで大きく見えるというか。
 流石は戦国時代の大将!
 そんな大将の貴重なお時間を裂いて挨拶しようなんて、おこがましいにも程があるぞ私v


「で、。ワシに何の用じゃ?」
「ああああのですね。今日はまだ信玄様にご挨拶をしていなかったので…
 それで…その…『おはようございます』!!」


 ペコリと90度のご挨拶。
 信玄様は一瞬驚かれたみたいだけど、すぐに笑顔を向けてくださったの。


「そんな畏まらなくても良いぞ。それよりも昨日は良く眠れたか?」
「はい!私にはもったいない位の部屋まで用意していただいて…」
「はっはっは。構わぬ。ここにいる間はおぬしはワシの娘も同然じゃ」


 そ…そんな滅相もない!
 置いてもらえるだけでも感謝しているのに、娘同然だなんて!
 信玄様は何て懐の深い方なの…っ!
 何度も何度も御礼を言いながら、信玄様のお役に立とう!
 心の中でそう決めました。







後書き
なかなか話が進まない(笑)
たまには、のんびり進めていくのも有り…ですよね(^_-)-☆