えーっと…私、は、只今『お館様』の前に座っております。
あ、ハイ。もちろん正座でございますよ。
私の隣には幸村さんと佐助さん。
何も悪い事はしていない(と思う)のですが、私は何故こんなにも畏まるのでしょう?
はっ!?もしかして、ここにいるだけで万死に値するとか…?
木洩れ日のような 2
「そんな緊張せずとも良い。…と言ったな?おぬしはどこから来たのじゃ?」
いやいやいや。緊張するなと言うほうが無理な話ですよ。
そもそもどこから来たのかと言われましても…
何て説明すればいいのでしょうか?
いや、ほらね…さっき幸村さんや佐助さんに色々と質問をした結果、
私の中ではここは『過去の世界』だと言う結論に達したのです。
で、それをどうやって説明したらいいですか?
私自身も、どうやって過去に来たのか判らないのに………
「どうした?言えぬ事なのか?」
「え…?あの…あ…」
「あれ〜?まさかマジで敵国の間諜だったりする?」
「いや…その…」
「そうでござるか!?お館様に仇なす者は、この真田幸村が成敗いたす!!」
ちょっとちょっとちょっとー!!
私ってばピンチじゃありません?
いーやー!ここで死ぬのは嫌よ!
だって私には………
「あ…あのですね!私は…っ!」
意を決して話を切り出したとき。
チャチャチャーチャ チャチャチャ チャチャチャチャチャ♪
び…びっくりした〜。
そう言えば携帯電話のアラームを設定しておいたんだっけ。
でも私以上に驚いてる人達が。
言わずもがな、武田信玄様と幸村さんと佐助さんですよ。
三人とも…何と言うか…臨戦態勢?
音の鳴る方をじっと睨んでる。
「あの〜…すみません、この音私なんです」
鞄の中から携帯電話を取り出し、アラームを止める。
その様子を三人とも固唾を呑んで(?)見つめていた。
「殿、それは何でござるか?」
「これですか?携帯電話と言います」
「携帯電話とな?」
「あ〜…と。何て言えば良いんだろう?遠くの人と話せる道具…ですかね?
と言っても、同じ物がないと出来ないんですけどね〜」
あはは〜。だったら『戦国時代』では無意味じゃん!
試しに液晶ディスプレイのアンテナマークを見たんだけど、やはり圏外でした。
っあー!連絡できない!
私の研修が…仕事が………
これって絶対にヤバいよね。下手したらクビかなぁ?
それは絶対にマズイ。
私には扶養家族がいるんだもの。
と言っても、弟なんだけどね。
少し歳の離れた弟。今年で17歳。
何で私が扶養してるかと言うと、両親はもういないから。
去年に事故で亡くなったの。
一応は親の残した財産や保険金はあるわ。
でも、何時何があるか判らないでしょ?だから働いてるのよ。
「で、さんは何でそんなものを持ってるんだ?」
「携帯電話ですか?そりゃ仕事でもプライベートでも必要だからですよ」
「プライベート?」
「私的って事です」
「じゃが、ワシはそんな物を見た事がないぞ」
「某もないでござる」
「俺もないねぇ」
「いや、この時代にあったら私が吃驚ですよ」
「「「この時代?」」」
「えっとですねぇ…非常に言いにくい事なんですが、私はどうやら未来から来たようです」
「なんと!?未来からとな」
「え?ちょーっと待って。それって新手の冗談?」
「冗談だったらどんなに嬉しいか………」
そうして私は、鞄の中身とここに至る経緯(と言っても、記憶がある所まで)の話をしたのでした。
いやー、自分でも何でこの時代に来たのか不思議でたまりません。
なので戻る方法も判りません。
私は一体どうすればいいのでしょうか?
「で、。おぬしはこれからどうするつもりなのだ」
「問題はソコなんですよね。行くアテもありませんし」
「ならばここに住むがいい。なに、おぬしのような娘が一人増えた所で何も変わらん」
へ?ここに住んじゃっても良いんですか?
信玄様のお申し出は嬉しいのですが、見ず知らずの私がいても大丈夫なのですか?
と言うか、私が間諜だったらどうするおつもりなんですか?
「はっはっは。己の気配すら隠せぬ者が間諜のはずなかろう」
「そーそー。俺も最初は疑っちまったけど、今ではもうさんが間諜だなんて絶対に思わないね」
「え?何でですか?」
「殿は気配を全く消してないでござるよ。
それになんと言うか…雰囲気がすごく柔らかいでござる。
間諜とか、そういう仕事をしている人には出せない雰囲気でござる」
「はぁ…そうなんですか…?」
気配とか雰囲気とか、よく判らないのですが。
とりあえず私はここにいても良いって事なんですよね?
歴史に疎い私でも『武田信玄』と言う名前は知っている。
だから、ここなら安心よね。
帰る方法が見つかるまで、ここにお邪魔させてもらおう。
「あの…えっと…不束者ですがよろしくお願い致します」
そう頭を下げたら、佐助さんに「それは嫁入りした時の挨拶だってー」と笑われました。
いきなり来てしまった戦国時代。
乱世の時代では戦が当たり前。
今日は生きてても、明日は保障されてない時代。
だけど私は生き残ってやる。
私には死ねない理由があるもの――
後書き
BASARA第2話は、いろいろと伏線を張ってみました(笑)
そして、ようやく信玄様の登場です。
武田信玄は『甲斐の虎』と呼ばれてますが…
OPなどのムービーを見たとき、思いっきり笑ってしまいました。
服の柄が、まんま虎やん(笑)
流石は信玄様です!
← □ →