「…このような所に女子が何故?」


 戦に勝ち、自軍の陣地に帰ろうとしていた真田幸村は、木陰に一人の女性を見つけた。
 幸村の頭に真っ先に浮かんだのは『何故?』という単語だった。
 『何故』こんな所に女子がいるのか?
 『何故』こんな所で眠っているのか。
 『何故』見た事もないような服を着ているのか?
 尽きない疑問を抱えつつも、幸村は女性を抱きかかえ、その場を後にした。






 ―そう。この出会いが貴女の物語の始まり―







 木洩れ日のような


 ん…ここ…どこ?
 ゆっくりと目を開けると、初めに見えたのは見知らぬ天井。
 家…じゃない?
 あ、そっか…私はこれから出張で…って…あれ?
 いつ私は出張先のホテルにチェックインしたの!?
 慌ててガバッと起き上がると、一瞬だけ目の前が暗くなった。
 うぁ…貧血…(汗)
 眉を顰めてじっと耐え、貧血による気持ち悪さが治まった私は、辺りを見回してみた。
 10畳くらいの和室で、布団の上に寝かされてた私。
 この部屋に置いてある調度品は、派手な飾りはないものの、一目で高級品だと判る物ばかり。
 ここは…一体どこ?
 何で私はこんな所にいるの…?
 不安になった私は、再び辺りをきょろきょろと見回してみたの。
 すると部屋の隅からクスクスと笑う声がした。
 え?笑い声!?
 慌てて声がした方を向くと、そこには一人の青年がいたわ。


「いや〜。面白いお嬢さんだわ」
「あなた…だれ?」
「俺?俺は猿飛佐助っていうの。お嬢さんは?」
「私は…です。。あの…猿飛さん。お聞きしたい事があるんですが…」
「佐助で良いよ。奇遇だねぇ。俺もさんに聞きたい事があるんだ。
 でももう少し待ってもらえる?もうすぐ大将と真田の旦那が来ると思うんでね」
「あ、はい」


 ………佐助さん、恐いって!
 口調こそ軽いしフレンドリーだけど、目が全然笑ってないの。
 変な事をしたら即殺しちゃうよ?
 そんなような事を言ってる目だわ…
 ど…どうしよう?
 早く『大将』と『真田の旦那』という人が来てくれないかな?
 誰でも良いからこの雰囲気を払拭して!!
 半ば本気で祈っていると、廊下の方から騒がしい音が聞こえた。
 この音って…誰かが歩いてくる足音…よね?
 それにしては、ちょっと乱暴すぎない?
 その足音は段々と近付いてきて…
 そして部屋の前で止まると、勢いよく襖が開いたの。


「佐助っ!あの女子は目が覚めたでござるか!?」


 部屋に入ってきたのは、赤いジャケット(?)を着て、赤い鉢巻を巻いた青年。
 って…ジャケットの下って素肌じゃないですか!?
 お願いですから服を着てください。
 この時期だと風邪を引いてしまいますよ?
 と言うか、見ている私が寒くなってしまうので服を着てください。
 お願いします。
 そう思いながら、私がじーっと見ていた所為かな?
 青年はふと私の方を見たの。
 あ、目が合っちゃった。


「おぉ!!目が覚めたでござるか!某の名は真田幸村。そなたの名は?」
と申します。真田さん…ですね?」
殿と言うのか!!某の事は幸村と呼んでくだされ!」
「てゆーか、真田の旦那。あんなに煩く入って来て、さんがまだ寝てたらどうするつもりだったの!?」
「あ…そ…そうでござるな…すまん、殿」
「いえいえ。起きてましたし大丈夫ですよ。気にしてませんから、幸村さんも謝らないで下さい」


 幸村さんは元気のいい方ですね。
 佐助さんと違い、ちゃんと笑顔を向けてくれてる。
 幸村さんの笑顔を見たら、ちょっと安心しちゃった。
 あとは佐助さんの言っていた『大将』と言う人を待つだけなんだよね。
 『大将』って言う事は、ここの一番偉い人かな?
 どんな人なんだろう?
 怖くない人だと良いなぁ。
 ぼーっとそんな事を考えてると、幸村さんが私に話しかけてきたの。


殿。これは殿の持ち物でござるか?」
「え?あ!私の鞄です!!」


 幸村さんが渡してくれたのは、間違いなく私の鞄だった。
 1週間分の着替えとメイク道具。そして仕事の道具が入ってる。
 良かった〜〜。無くしたらシャレにならないわ。
 ほっと一安心した私だけど、次なる失態に気付いてしまった…っ!
 仕事よ仕事!今何時!?
 慌てて腕時計を見てみると、研修が始まる30分前。
 急いで行かなくちゃ!!


「(よく判らないけど)助けて下さってありがとうございました!
 本来なら御礼をしたいのですが、何分仕事の時間が迫っていますので、ここで失礼させて頂きます。
 後日改めてお伺いに参りますので、連絡先を教えて頂いても宜しいでしょうか?
 あ、これは私の名刺になります」


 鞄から名刺入れを取り出し、佐助さんと幸村さんにそれを渡す。
 名刺には会社名と名前、会社用のメールアドレスが書いてあるの。
 一応、身分証明の代わりにはなる…と思う。
 はぁ…研修が始まるまで30分かぁ。
 間に合えば良いんだけど…
 そもそも、ここは何処なんだろう?


「あの…迷惑ついでに教えて頂きたい事があります。ここは何処ですか?
 S市にある○○ビルに行きたいんですが、どのくらいの時間がかかるのでしょうか?」


 タクシー使った方が早いかな?
 電車よりもタクシーを使った方が早く着くなら、タクシーを呼ぼう。
 結構イタイ出費になるけど…ね(泣)
 あ、そうだ。先に研修先へ連絡をしておこう。
 『もしかしたら遅れるかもしれない』と。
 連絡なしで遅れるよりも、連絡をしておいた方が良い。
 そう思い携帯を取り出そうとしたとき。
 幸村さんと佐助さんが不思議そうに話しかけてきました。


殿。これは一体なんでござるか?」
「それにS市ってどこの事いってんの?ここは甲斐だぜ?」
「へ?甲斐?」


 甲斐って…昔の地名でしょ?今でも使ってるの?
 ううん、それよりもS市を知らないなんて…
 S市と言えば、日本では知らない人はいない位の大きな都市よ?
 それに落ち着いて考えてみれば、幸村さんや佐助さんの服。
 もしかしなくても、あれは鎧?
 ありえない事を想像してパニックになっている私に、佐助さんは苦笑しながら近付いてきたの。
 

「はいはい、さん。落ち着いて。そろそろ大将も来る頃だからさ」
「『大将』ですか?ここの一番偉い方…ですよね?」
「そうでござる〜〜。お館様は日本一の武人でござるよ!!」


 幸村さんが自信満々に言うのですが…
 ちょっと待ってください?
 今、気になる単語がありましたよ?
 『武人』って何ですかーーー!?


「あの…お伺いしても宜しいですか?」
「ん?なになに?」
「幸村さんや佐助さんが仰る『大将』のお名前は…?」
「「えっ!?」」


 いや、そんなに驚いた顔をしなくても…
 私が『えっ!?』ですよ…


殿、本当に知らないでござるか?」
「はぁ…会った事ないですし」
「マジでぇ?だって有名っしょ?『甲斐の虎』って言われてるんだぜ?」
「そうなんですか?」
殿、お館様の御名前は『武田信玄』でござるよ」


 ………………武田信玄っ!?
 うそ!?武田信玄って言えば、戦国時代の武将でしょ?
 ちょっとまって?どう言うこと!?
 信じられない名前を聞いた私は、ここがどこか確かめる為に、幸村さんや佐助さんに目一杯質問をしました。













後書き
とうとう別ジャンルに手を出してしまいました(笑)
発売からかなり時間が経っている『戦国BASARA]』ですが、
最近入手した私は、まだまだ熱いです!
そう言えば…時間があれば、絶対にBASARAやってるなぁ。
『政宗さ〜〜ん!!』と絶叫しながら^^;
Dグレ同様、BASARAも気に入っていただけると嬉しいですv