「ここだ」


 政宗さんに連れてこられた先は、16畳ほどの大きな部屋でした。
 この部屋が、どうかしたのかな?







木洩れ日のような 19







「今日からここがアンタの部屋だ」


 ………え?今、政宗さんは何と仰いました?
 この広い部屋が私の部屋?


「えぇっ!?」
「この部屋は気に入らねぇってか?もっと広い部屋が良かったか?」
「とんでもない!!こんな広い部屋、私には勿体無いですよっ!!」


 だってこの部屋…広いだけじゃなくて、家具も置いてあるのよ?
 信玄様のお館でもそうだったけど、ここに置いてある家具もかなりの高級品。
 畏れ多くて使えないわよ(汗)


「この俺が良いって言ってんだ。遠慮するな」


 きっと、ここで更に何か言っても政宗さんは聞いてくれなさそうだし…
 だったら遠慮なく使わせてもらおう。


「こんな素敵な部屋、ありがとうございます」
「Anxiously.(気にするな)他に必要な物があれば言えよ?」
「あ、はい」


 部屋の中に一歩入り、辺りを見回す。
 和箪笥が二つに文机、三面鏡が置いてある。
 どれも女物みたいだけど…
 この部屋、以前に誰か女の人がいたのかな?
 ちょっと気になったので、政宗さんに尋ねようとしたとき。


「殿」


 と、小十郎さんがやってきました。


「Oh.どうした?小十郎」
「真田殿と猿飛殿の部屋が用意できました。あと、さんの部屋はこんな感じで宜しかったでしょうか?」
「それはに聞けよ」
「それもそうですね。いかがですか?この部屋で宜しかったですか?」


 急に話を振られ、私は慌てて小十郎さんに答えたの。


「はい!こんな素敵な部屋を用意して頂いて…」
「この部屋は、政宗様にとって思い出の部屋なんですよ」
「え?そうなんですか?」
「はい。さんに使って貰うために、貴女に会った時から用意してたんです」


 政宗さんにとって、思い出の部屋…
 良いのかな?そんな大切な部屋を私が使ってしまって。
 それに今の小十郎さんの話しだと、あの森で会った時以来、この部屋を用意してたみたいだけど…


「小十郎、今は余計なことを言うんじゃねぇ」


 むすっとしながら答える政宗さんに、小十郎さんはクスクス笑ってる。
 小十郎さん、政宗さんのお兄さんみたいだ。
 私も小十郎さんみたいなお兄さんがほしかったな。
 ほら、長女で一番上だから、自分よりも年上の兄弟に憧れるのよ。


「ついでだ。幸村と猿の部屋にも案内してやるよ」
「政宗殿、かたじけないでござる」
「ちょっと伊達の旦那。猿って言うなってさっきも言ったじゃん」
「あ、待ってください。私も見に行きたいです」
 

 面倒くさそうにこの部屋を後にする政宗さんを、幸村さんと佐助さんがついて行く。
 私も二人の部屋の場所が知りたいし、正直に言えば見てみたい。
 だから彼等の後をついて行ったの。
 小十郎さんと言えば、他にもやる事があるらしく、違う方向へ歩いて行ったわ。
 …ちょっと残念。もっと小十郎さんとお話したかったのにな。


「そうだ、。アンタまだ歩く元気はあるか?」
「え?はい。今は馬酔いもしてませんし、大丈夫です」
「OK.だったらこの城の中も案内するぜ。知っておいた方がいい場所もあるだろ」
「そうですね。お願いします〜〜」


 と、まぁこんな感じで、政宗さんにお城の中を案内してもらいました。






















+ + + + + 

 お城の中を案内してもらってから、私は部屋に戻ったの。
 そして、持って来た荷物を整頓しています。
 洋服類は和箪笥に入れて、化粧品は三面鏡に。
 やっぱり皺になりそうな服はハンガーにかけた。
 文机の引き出しに電卓や筆記用具を入れて。
 使わないだろうけど、一応持ってきた仕事関係の書類も引き出しに入れておいた。
 あとは…ノートパソコンか。
 何処に置こうかなぁ?
 ………使うことあるかな?
 武田にいた頃は、そんなに使わなかったし。
 使ったとしても、日記をつけるくらいだったからなぁ。
 と、散々悩んだ挙句、文机の上に置くことにしました。
 荷物の整理も終わったし、 どうしようかなぁ?
 政宗さんはやる事があるらしく、行っちゃったのよ。
 どこか探索に行こうかな?って…何かデジャヴるものかあるぞ?(笑)
 内心笑ってると、ドタドタドタと大きな足音が聞こえたの。
 この足音、幸村さんかな?
 パーンと音を立てながら開いた襖の方を見ると…


「やほ!ちゃんv」


 入って来たのは、何処となく政宗さんに似た男の人。
 この人って、武田での会議で私に話しかけてくれた人よね?
 えっと…何か用なのかな?


「入ってもいい?」
「え?えぇ…どうぞ。散らかってますが」


 そういうと、彼は嬉しそうに部屋に入ってきた。
 そして辺りを珍しそうに見回している。


「あの…?」
「あ、ごめんねー。珍しいもんばかりでさ。なぁなぁ、これってちゃんの世界の服?」
「え?えぇ。コートって言って、寒い時に着るんです」
「じゃあコレは?」


 そう言って指差したのはノートパソコン。
 えっと…これはなんて説明しよう?


「(一応)仕事の道具ですよ。ノートパソコンって言って、これで仕事をしてたんです」
「へ〜〜〜〜!!どうやって使うんだ?」
「まずは電源を入れて…」
「電源?」


 ………そこからの説明か(汗)
 うーん…なんて説明しよう?
 なるべく判りやすい言葉を選びながら、彼に説明をすると頷いてくれた。
 良かった。判ってくれたみたい。
 でも…でもね…?


「あの…失礼ですが、どちら様ですか?」
「へ!?あ…俺、名乗ってなかったっけ?ごめんごめん。
 俺は伊達成実。殿とは従兄弟なんだ。よろしく!」


 政宗さんの従兄弟さん!
 だから、何処となく似てたんだ。
 幸村さんみたいに、笑顔の可愛い人だなぁ。


「よろしく、成実さんv」


 成実さんの笑顔につられて、笑顔で答えたんだけど…


「No!俺の事は成実って呼んでよ」


 と言われてしまいました。
 ………なんですと?『成実』と呼び捨てにしろと?
 むむむ無理ですよっ!!
 だって政宗さんの従兄弟って事は、伊達では重臣でしょ?
 畏れ多くて呼べないですって!


「えー?俺が良いって言ってるんだから良いじゃん。ね、『成実』って呼んでよv」


 う…笑顔なのに、拒否を許さないってオーラが漂ってる。
 やっぱり政宗さんの親族だぁ。
 どことなく、サディスティックな感じがします(涙)


「えと…えと…成実…『君』?」


 こ…これが精一杯ですよ〜〜。


「えぇ〜?『君』〜〜?ん〜…ま、いっか。これ以上迫って、ちゃんを怖がらせるのもねぇ。
 それに殿よりも親しい呼びかただし?これからは『成実君』って呼んでね〜〜」


 成実君はそう言うと、ぎゅっと私を抱き締めた。
 って…ええええぇぇぇぇぇ!?
 真っ赤になって慌てふためいている私に、成実君はクスクス笑いながら離してくれた。


「成実君!?」
「あはは。これ位で真っ赤になるなんて、ちゃんは可愛いねv
 俺気に入っちゃったかも(笑)じゃ、またねーん」


 そう言いながら、成実君は去って行きました。
 私の中で、成実君は要注意人物決定です。





後書き
成実君登場(笑)
確か政宗さんの1コ下なんだよね?
私の中では成実君は軽い…というか、ノリの良い子なんです(笑)