電話の修理を終え、護衛をしてくれた人と帰っている時、事件は起きた。
「少尉」
不意に名前を呼ばれ、振り返った。
「なんですか?」
「あちらに居る人物…スカーではないでしょうか?」
「!?」
言われた方を見ると、そこには確かにスカーが居た。
幸いスカー迄の距離は遠く、向こうは私達に気付いていない。
「貴方は急いで司令部に連絡を」
「少尉は…?」
「私はスカーを追跡、チャンスがあれば逮捕します」
「しかし、危険です!」
「私は大丈夫だから。これは上官命令です」
「…は!くれぐれも無茶はしないで下さい」
護衛をしてくれた人は敬礼すると走っていった。
これで大佐には連絡が行く。あとは…私がスカーを見失わなければ良い。
…見失いたくないけど、見つかりたくも無いです(汗)
一刻も早く大佐達に連絡が行けばいいけど…
なるべく気配を消し、距離をとってスカーを尾行した。
けれども角を曲がった瞬間、見失ってしまった。
「確かにこっちへ曲がったのに…見失った…?」
スカーを捕まえるチャンスが!
アイツは国家錬金術師を…大佐を狙っている。
早く捕まえなければ、大佐の命が危ないのに。
「何処行ったのかしら?遠くへは行っていないと思うけど」
万が一の事も考え銃を抜き、トリガーに手をかける。
銃を構えたままスカーを見失った所へ辿り着いた。
「己れに何か用か?軍の狗」
「!?」
背後から声がし、振り返る。
果たしてそこに居たのは、見失った筈のスカーだった。
いつの間に背後に!?
慌てて飛び退き、スカーとの間合いを取り銃を構える。
何時でも発砲できる体勢だ。
「スカーですね。国家錬金術師殺人容疑で逮捕します。大人しくして下さい」
計算外だ!
まさか一人でスカーと対峙する事になるとは…
エド君とアル君が…何よりアームストロング少佐が敵わなかった相手に、私が勝てるはずが無い。
気丈に振舞ってはいるが、内心は冷や汗をかいている。
お願い!早く来て下さい、大佐!
「お前は…・…か?」
何故スカーが私の名前を知っているの?
何故私を驚いた目で見るの?
スカーとは初対面のはずなのに。
…初対面?
「答えろ。お前の名は?」
『お前の名は?』
私はかつて、この会話をした事がある…?
「・」
『・』
何?今、何か思い出した…?
「十数年ぶりになるか?」
「十数年ぶり…?」
「覚えてはおらぬか?イシュヴァールの戦いの最中、お前に助けられたイシュヴァール人を」
「私が助けた…イシュヴァール人…?」
イシュヴァールの戦い…東部内乱の時期…あの時私は、薬師だった両親と共に戦地に近い森に居た。
戦いで傷を負った人達の為に、傷薬を作っていた。
ある日、森に中に倒れていたイシュヴァール人が居て…
傷の手当てをして、暫く家で治療していたけど、いつの間にか居なくなった男の人
「!?まさかあの時の!!」
「思い出したようだな。まさかが軍人になっていようとは思わなかった」
そう言いながら、スカーは一歩ずつ近寄ってくる。
「止まりなさい!止まらないと撃ちます!!」
「、お前に銃は撃てない。お前は人を傷つける事を嫌っていた」
「ですが貴方は国家錬金術師殺人の容疑者です!」
そう例え相手がかつて慕っていた人でも。
私にはスカーを逮捕しなければならない義務がある。私が軍人である限り…
スカーが一歩近づく度に私は一歩下がる。
一定の距離を保っていたが、すぐに私は壁際に追い詰められてしまった。
こうなったら…!
スカーの動きを止めようと引き金を引こうとしたが、それより早くスカーが一気に間合いを詰めてきた。
そしてそのまま、銃を例の『右手』で破壊してしまった。
「っ!!」
僅かに痛みを感じたため思わず手を開くと、銃だった破片が零れ落ちていく。
銃が破壊された今、私にはスカーと対峙しうる手段が残されていない。
このまま私も破壊されるのだろうか?
せめて大佐に想いを伝えたかったなぁ。それだけが後悔だよ。
スカーが私を掴もうと手を伸ばしてきた。
とうとう私も死んじゃうんだ…
大佐、大好きです。貴方に会えて…貴方の部下になれて幸せでした。
さようなら。
死を覚悟して目を閉じたけれど、何時までたっても衝撃は来ない。
と言うより…この感触は…?
恐る恐る目を開けると…スカーに抱きしめられていました。
えええぇぇぇ!!!???何で〜?
「あの…えっと…?」
「己れはお前に会いたかった。ずっとお前を探していた」
い…いきなりそんな事を言われましても(汗)
「イシュヴァール人である己れの命をは救ってくれた。
あの時と共に居たかったが、軍が近くまで来ていて、己れは逃げなければならなかった。
それ以来ずっとに会いたかった…」
こ…これは…
愛の告白ですヨ!
かつて助けて慕っていたイシュヴァール人が、国家錬金術師殺害の容疑者で?
そのイシュヴァール人が私に愛の告白―――!?
びびび吃驚ですよ!世間は狭いですよ!奥さん(誰やねん)
「軍など辞めろ。そして己れと共に歩め」
すすすスカーが耳元で囁いています(汗)
本日2度目です〜。耳元で囁かないで下さい〜(泣)
スカーの抱きしめる腕が、ますます強くなっている気がするのは私の気の所為デスカー?
「…好きだ。愛している…」(手塚の声で囁き/笑)
「ままままま待って下さい!」
「何故だ?」
「あ…あの!あのですね!私には好きな人が…」
ってそう言う問題じゃないだろ!私。
これはチャンスだ。早くスカーを捕まえなくちゃ!
そう思ってるのに〜。
体が上手く動かないよ〜。それに何だかスカーの気配が先程より恐ろしくなってます〜(泣)
もう私が手に負える状況じゃないです!
「早く来て下さい!大佐〜」
「大佐…そうか。の好きな人とやらは『焔の錬金術師』か」
しまった!声に出てた!
あまりの恥ずかしさに、耳まで赤くなっていくのが判る。
も〜…今日は一体何なのよ〜。
悪日ですか?今日の運勢は最悪ですか?
それよりも、この体勢を何とかしたいです!
お…男の人に抱きしめられている状況はちょっと(汗)
「あの…そろそろ離してくれませんか?」
「お前が共に歩むと言うなら離してやろう」
困りました…それは無理なのです。
私が仕えたいと、共にいたいと思うのはただ一人。
まぁそれは私の勝手な想いなんだけどね。
それでも大佐の傍に居たいです。
「焔の錬金術師がいる限り、は己れと共には歩めぬのだな。ならば丁度良い。神の意に背きし者だ。破壊するまで」
「!?それはさせません!大佐には指一本触れさせません!」
「お前に己れが止められると思っているのか?」
「どんな手を使ってでも、貴方を止めてみせます」
絶対大佐を殺させはしない。
どんな手を使ってでも、大佐は必ず守ります。
だから今は、このスカーの腕の中から逃げ出さなくてはいけない。
どうやって抜け出そうか考えていたとき
ガウン ガウン
銃声が聞こえたかと思ったら、その弾が私の横をすり抜けていった。
正確には、スカーの腕を掠めて。
スカーは銃弾に驚いたのか、私を拘束する腕を緩めた。
チャンスだ!
私は渾身の力を込めてスカーを押す。
さっきはびくともしなかったけれど、今回は簡単に抜け出す事が出来た。
「!こちらへ来い!」
後書き
漸くスカーの登場。
更に大佐とスカーが鉢合わせ。
オチ(?)をどうしようか迷った挙句、アレにしましたヨ。
かっこいい大佐が書きたいです(切実)
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