コーヒーを二人分入れて執務室に戻る。




「失礼致します。大佐、コーヒーをお持ち致しました」

「ありがとう。それではそっちのテーブルで休憩にしようか」




 大佐が指差したのは、来客用のテーブル。

 机の上は書類が沢山あるから、コーヒーは置けないもの。




、貰い物のクッキーだが食べるだろう?」

「クッキー?はい!頂きます!」




 うわ〜い。クッキーだ。甘い物だ〜

 いそいそとテーブルの上にコーヒーを置いていく。

 

クッキーに気を取られていたから、私は気付かなかった。

いつの間にか大佐が背後に来ていた事に。




「きゃ!?」




 背後から伸びた腕は私の腰に回し、強い力で引き寄せられた。

 犯人は…考えなくてもわかる。

 この部屋にいるのは私と大佐しか居ないもの。




「何してるのですか?大佐」

「少しでもの傍に居たくてな」

「だからと言って、いきなり引張らないで下さい」




 もう少しでコーヒーが零れるところだったじゃないですか。

 口ではそう言っても、内心はドキドキしてる。

 やっぱり好きな人に『傍にいて欲しい』って言われたら嬉しいもの。

 だけど大佐の事だから、他の女性にも言っているんだろうな。




「気にするな」

「気にするなって…無理ですよ〜。もう少し離れて下さい」




 せめて、腰に回している腕をほどいて…




「やはりの淹れてくれるコーヒーは美味しいな」




 あ、話を変えた。

 どうあがいても、この体勢を変えてはくれないのですね(汗)

 心臓がバクバク言ってる。

 とりあえず、心臓を落ち着かせようと思い、コーヒーを飲んだ。

 そしてテーブルの上にあるクッキーに手を伸ばしたとき…




「わわ!?」




 いきなり景色が反転しました。

 

 何!?何が起きたの!?

 えっと…落ち着け、自分。

 

 落ち着いて辺りを見回すと…




 大佐に押し倒されていました。




 え?えぇ〜〜〜!?何で?何で〜?

 おおおおおおお落ち着け!落ち着け自分!

 落ち着いて…いられるか〜!


 大佐に押し倒されてますヨ!大佐の顔がもの凄くアップですよ!




…」




 たたたたた大佐が、みみみ耳元で囁いております!

 幸せだけど嫌だよ〜。




「大佐///離して下さい!」

「何故だ?は私の事、嫌い…か?」




 だから耳元は駄目です〜(汗)こういう事の免疫が無いのです〜。




「からかうのは止めて下さい…」

「からかう…?私は本気だ」

「何時も女性にそう言っているのでしょう?私じゃなくても良いじゃないですか」




そう。大佐は何時も女性に囁いている。

 そして大佐は人気者。

 私じゃなくても良い。

 そう考えたら、胸が痛くなって涙が出てきそうになった。

 


「兎に角、離して下さい」




 大佐の体を押したけど、力は大佐に敵わない。

 私が体を押したのが気に食わなかったのか、大佐はますます私を拘束する。




「私が欲しいのはだけだ」

「信じられません」

「ならば信じてもらうまでのこと」




 大佐はそう言うと、左手で私の両手首を拘束し、右手で私の顎を掴んだ。

 そしてそのまま顔を近づけてくる。

 


顔が段々と近くなり、大佐の髪が私の顔にかかる位の距離に来た。

 もう少しで唇が重なる瞬間…




 あ…




「あの…大佐…やはり辞めて頂きたいのですが…」

が私の気持ちを信じてくれるまでは辞めるつもりは無い」

「ですが…」




 大佐の命が危ないのです。

 そう伝えようとしたとき。




 ゴツ




 黒い塊が大佐の後頭部に突きつけられた。




「セクハラは犯罪ですよ?」




 銃をつきつけ、大佐の動きを止めてくれたのは、敬愛なる上司のホークアイ中尉だった。




「ホークアイ中尉〜」




 大佐をどかし、ホークアイ中尉に駆け寄る。

 すると中尉は私を優しく抱きしめてくれた。




 幸せ…v




「大丈夫?。セクハラ上司は私が退治しておくわ。だから、はここに行ってくれる?」




 ホークアイ中尉に渡された紙を見る。

 そこには住所が書かれていた。




「どうも電話の調子が悪いみたいで直して欲しいと連絡があったの。
フュリー曹長は外出していて、頼めるのはしかいないのよ。行ってくれる?」

「はい!もちろんです」




 中尉からの命令なら、何処までも行っちゃいます☆

 それに今は大佐の顔、見たくないから…




 大佐が私を欲しいって言ってくれたのは、凄く嬉しかった。

 だけど、それは本気の言葉?

 何時もみたいに、女性を口説いてるだけ?

 今はまだ、大佐の言葉が信じられないよ…




「待ちたまえ」




 執務室から出て行こうとした私を、大佐が呼び止めた。




「何でしょうか?」

「先日の件もある。を一人行かせる訳には行かない」




 傷の男による国家錬金術師襲撃事件。それによって、エド君の機械鎧が破壊されたっけ。

 スカーは逃げてしまい、行方は未だ掴めていない。

 確かに私だけじゃ、スカーを捉える事は出来ないだろう。




「そうね…一人では心配だわ」

「だから私がの護「護衛を付けるわ。それで大丈夫かしら?」




 大佐の言葉を遮って中尉が言う。




「護衛は私が「銃のスペシャリストに頼むわね。も危ないと思ったら迷わずに銃を抜くのよ」

「あの…護衛が無くても大丈夫ですよ?スカーが狙うのは国家錬金術師だけみたいですし…」

「「それは駄目だ(よ)」」

「ですが、皆さんも仕事がありますし…それに私も軍人の端くれです。自分の身は自分で守ります」




 そもそも、この街にスカーが居るかどうかも判らない。

 ハボック少尉達が一生懸命捜索しているのに見つからないから、大丈夫だとは思う。




「駄目よ。万が一という事もあるでしょう。護衛は付けます」

「だから私がの護衛をするといっているだろう」

「いけません。国家錬金術師が狙われていると言うのに、大佐が護衛したら相手の思う壺です。
それに大佐には、やらなければならない仕事が山ほどあります」




 確かに…

 『焔の錬金術師』である大佐が街を歩いていたら、スカーは狙ってくるだろう。

 いくら大佐が強いといっても、危険には違いない。

 それに…中尉の言うとおり…片付けねばならない書類の山が…(汗)

 

 結局…大佐は司令部でお仕事、私は修理と言う形で落ち着きました。



後書き
リザさんが好きです。
とてもかっこいいと思います。
そしてヘタレな大佐も大好きです。
でも、実は大佐は策士だと思っています。
策士、策に溺れる(マテ)

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