涙色の旋律 Melody.4
やっとの事で家を抜け出して、慌てて彼がいつも座っているベンチへ向かう為に茂みから遊歩道に飛び出した。
「きゃっ」
ドンという音ともに自分の身に何かがぶつかる衝撃。
それに耐え切れなかったキラの体は地面にペタンと座り込んでしまう。
「大丈夫ですか?」
「…はい…すみません……」
どうやら自分は飛び出した拍子に人にぶつかってしまったようだ。
キラは自分の今の状態を把握すると心配そうに声をかけてくれる人物を見上げた。声だけを聞くとどうやら若い男性だと言う事はわかる。
「!!」
見上げたキラが見たものは深い闇色のような藍色の髪と翡翠色の瞳。
キラは大きな菫色の瞳を更に大きくして彼を食い入るように見つめた。
(この髪の色はもしかして…)
「あの…どうかしましたか?」
「あっ、いえ…何でもないです」
そう言って差し出された手を取り座り込んでいた体を起こしてもらう。
咄嗟に思った疑問を口に出しそうになるのを飲み込んでしまった。
でも、見れば見るほどキラの中で今目の前にいる彼があの彼ではないかと思えてしまう。しかし、今のキラにはそれを確認する術がない。
どうしたものかと考えあぐねていると不意に彼から声がかかる。
「えっと…もう大丈夫そうですので俺はこれで」
「あ…」
人助けしたことが照れ臭いのか気恥ずかしそうにして軽く頭を下げてその場を後にしようとする彼。少しずつ離れていく彼にキラは思うよりも先に体が動いた。
「あ、あのっ」
「え?」
駆け出して思わず掴んでしまった彼の腕は見た目よりがっしりとしていた。
「僕、キラって言いますっっ貴方のお名前教えて貰えませんか?」
見上げてきたその大きな菫色の瞳に吸い込まれるかと思った。
突然、飛び出してきて自分にぶつかってきたのはまだまだ少女とも思える少女だった。真っ白な肌に大きくつぶらな菫色の瞳、小さな鼻と唇がその顔に絶妙なバランスで配置されていた。
美少女という言葉が正にぴったり当てはまるそんな少女を目の前にしてアスランは暫くの間ポカンとしてしまっていた。
「えっと…もう大丈夫そうですので俺はこれで」
初対面の少女に見惚れてしまった自分がなんだか気恥ずかしくてアスランはその場から離れようとした。
次の瞬間。アスランは腕に暖かな温もりを感じた。
驚いて振り向くと、少女は大きな菫色の瞳を更に大きくしてどこか必死そうな面持ちでアスランの腕を掴んで見上げていた。
「あ、あのっ」
「え?」
「僕、キラって言いますっっ貴方のお名前教えて貰えませんか?」
「はい?」
「あ、突然ごめんなさい…でも、その…あ、助けて貰ったし…何かお礼したいですし…それに……」
「あ、別にそんなお礼をして貰うほどの事もしてませんし、それにこっちも他に気を取られてて注意してなかったので」
「あ…でも…」
気にしなくてもいいと言うつもりで言った言葉だったのだが何故か彼女は少し悲しそうに顔を歪めた。何か自分は悪いこと言っただろうか?
黙って俯いてしまった彼女に何故だか分からないが罪悪感を感じてしまってアスランは小さく息を吐いた。
「アスラン」
「え?」
「俺の名前はアスランって言うんだ」
突然砕けた口調になったアスランにキラは目を見開いて驚いたがその後は花が飛ぶような笑顔をアスランに向けた。
「はい!ありがとうございます!!」
一体なんのお礼なんだかと思わず吹き出してしまう。
さっきまで泣きそうな様子で自分を見つめてきた人物と本当に同一人物なんだろうか?思わずそう思ってしまう位の変わりっぷりだった。
キラとアスラン。二人の初対面は何とも不思議で可笑しな雰囲気になった。
◆あとがき◆
はい。現在までにブログにあったのはこれで全部です。これからはボチボチと更新がんばっていきます。
ブログで書いている時はキラ視点とアスラン視点の交互で書いていたので何の直しもしないで纏めてしまうと同じシーンを
繰り返してしまってる部分がどうしても出てきてしまいます。取り合えずここまでなので見逃してくださると嬉しいです。
アスランとキラいよいよ出会いました。でもまだアスランはキラの正体に気づいてません。
勿論キラはアスランの事を分かって声をかけています。元々は大人しい性格なのでかなりの勇気を振り絞っての行動なのです。