ラブ・シンフォニー 第24話
「 ……フレイ、やっぱり僕…… 」
あれから部屋に篭りがちになってしまったキラ。その彼女を半ば無理やりフレイの家に連れ込んだ。
そして、家に入った途端フレイの「お願いね」の一言で数人のメイドが登場しキラはあっと言う間に着替えされられていた。
「 ここまで来て往生際が悪いわねっ」
「 往生際も何も突然連れ去ったのはどこの誰だよー 」
「 あら?そうだったかしら?」
「 フレイ〜 」
扉の向こうでキラは半泣き状態だった。
着替えはとっくに済んでいる筈なのに一行に出て来ようとしないキラに痺れを切らしたフレイが扉を叩く。
「 キラっいい加減出てきなさい!!」
「 だっ、だって…こんなの似合わないよ……恥ずか…しい 」
「 大丈夫だから、私がキラの為に選んだのよ?似合わない筈ないわっ 」
「 …………笑わない? 」
「 笑ったりなんてする訳ないじゃないっ 」
暫くの沈黙の後、ゆっくりと扉が開かれた。そしてそこから遠慮気味にそっと浴衣姿のキラが出てきた。
淡い桜色で桜の刺繍の施された生地、それを薄紫の帯で締めて手には浴衣とお揃いの生地の巾着袋。
髪はアップにされて、これまたお揃いの桜の髪飾り。
キラの白磁の肌に桜色の生地はとても映えて儚げな印象を与える。
「 やっぱり…変、だよね?」
恥ずかしそうに俯いて頬を紅潮させる。しかし、何の反応も示さないフレイの様子を見て不安になってその瞳を揺らす。
浴衣なんて初めて着たけど、こんな綺麗なもの自分に似合う筈ない。きっとフレイも余りの似合わなさに声もでないのだ。
そう思うと自分が滑稽に思えてきて情けなくなって泣きたい気持ちになった。
「 フレイ、やっぱり着替え… 」
「 …そ、… 」
沈黙に耐え切れなくなったキラが紡いだ言葉を遮るようにフレイが微かに何かを言った。
「 え?」
「 想像以上だわっキラ!!いい!凄く可愛いっっ!!! 」
がしっと肩を掴まれて、先程の様子が嘘のようにハイテンションでキラを褒めちぎる。
元々褒められることに慣れてない事もあるが、ここまで褒められると恥ずかしい。
「 あ、あの、、、フレイ?そこまで言ってくれなくても僕は変でなければそれで…… 」
あくまで控えめなキラにフレイは「何言ってるの」と詰め寄る。
「 今のキラならどんな男でも一発で落ちるわ。それ位可愛いわよ、キラ 」
「 ……そんなことないよ……… 」
そんな訳ある筈がない。自分がそんなに魅力的な人間なら今、自分の隣には彼がいた筈だ。
でも、彼は別の人と一緒にいる。それは自分がそれだけの人間だったから。
彼、アスランとはあれから一度も会っていない。何度が彼から電話はあったみたいだったが全部断った。
彼と話すのが怖かった。話して決定的な別れを告げられるのが怖かった。
こんな事をしても、話を聞かなくても結果は変わらないって事は分かっている。でも、どうしても嫌だった。彼を失う事が。
( 好きだなんて気づかなければ良かった… )
そうすればもっと楽だったかもしれない。彼と友達でいられ続けたかもしれない。
今日も約束通り花火大会に二人で行く事ができたかもしれなかったのに。
突然押し黙って自傷気味微笑むキラをフレイは痛ましげに見つめる。
「 キラ、ぼんやりしてないでそろそろ行くわよ 」
「 え?あ、うん。 」
「 今日は何も考えずに素直に楽しむわよ?」
ぱちり。とウインクを一つ決めてフレイが微笑む。
彼女の気遣いが凄く嬉しくてキラは微笑を浮かべて頷いた。
「 うん 」
◆あとがき◆
はい。久しぶりの更新です。『ラブ・シンフォニー』24話をお届けです。最近いろんな連載を抱えすぎて一つの更新するペースが
遅いです……このシリーズはもう一年以上経過しているので早く第一部完結させたいのですが…
でも、もうすぐです。あともう少しです。今回、キラとフレイのみで話も短いですがー次は久しぶりにアスランとキラが出会います。
舞台はいよいよ、温め続けていた花火大会です。いい加減、アスランとキラをすれ違わせるのが辛くなってきました…(笑)
次回の目標はアスランを格好良く!です。出来るかなー出来るといいなー。