ラブ・シンフォニー 第16話
アスランとキラが約束を交わしてから時は瞬く間に過ぎていった。
夏休み前のテストも元々成績の良いキラは何の問題もなくクリアし、苦手な教科でひっかかってしまったフレイのテスト勉強に付き合うなど、
それなりに慌しくも充実した日々を過していて気付いてみれば今学期最後の登校日になっていた。
「 あーやっと勉強から開放されるーー!! 」
「 なーに言ってるのよ、フレイはそんな事言うほど勉強なんてしてないじゃない 」
ぐんっと腕を伸ばして夏休みに入る開放感に浸ろうとしているフレイにミリアリアが水を差す。
「 何言ってるのよ、この前のテストで十分勉強したのよ私は。それに高校入って始めての夏休みなのよっっ
ちょっとくらい浮かれたってバチは当たらないと思うわよ?ねぇ、キラ? 」
「 ふえ?」
突然、自分に話が振られたのに驚いて思わず間の抜けた声を出してしまう。
キラのそんな反応に二人は思わずぷっと吹き出してしまった。
「 もう、キラったら… 」
「 そんなに呆けてて明日から大丈夫?」
特訓は厳しいわよ。とフレイがにやっと笑う。それを見たキラがあわあわと慌てていると
クスクスと笑いながらミリアリアがフォローに入る。
「 フレイったらそんなに脅かさないの。キラが驚いているじゃない 」
「 だってキラってばどこまでもボケてるんだものっ少しぐらい脅かした方がちょうどいいのよ 」
「 ……ははは、、、お手柔らかに… 」
鼻息荒く力説するフレイの勢いに押されてキラは反論できず、乾いた笑いで苦笑するしかないのだった。
夏休み中にリハビリをする、と言ってもフレイもミリアリアも所属している部活がある為毎日と言う訳ではなかった。
それでもフレイとミリアリアがキラの為にと作ってくれたメニューがあり、キラは自分で出来る事から少しずつこなしていっていた。
全てはアスランと行く花火大会の為に。数年ぶりに行ける祭り事にキラは心を躍らさずにはいられなかった。
だからこそ少しでもアスランの負担を軽くする為に、少しでもアスランが楽しめるように。
それには自分の症状が少しでも軽減する事が一番だから。
アスランは大丈夫だといったけどそれでも出来る限りの事はしたい。キラはそう思っていた。
「 えっと、コレは… 」
朝、開店したばかりの家の近所のスーパーにキラは着ていた。
勿論、これもフレイに言われたリハビリの一環。今まで人が集まる所を極力避けてきたキラにとってこの課題は難関だった。
事実初めて一人で着てみた時はほんの数分で逃げ出してしまった。
フレイ曰く、『キラは男云々の前に人に慣れなくちゃ』だそうで。確かにキラは男性を避けようとする余り、
人と関わり合いになる事からも逃げている傾向にあった。
いくら女性相手でもそこにいつ男性が介入してくるかも知れないという恐怖心からのある種自己防衛だったのだろう。
しかし、通い続けて一週間。朝開店したばかりと言うこともあって人は疎らだが普通に買い物が出来るまでになっていた。
まだまだ花火大会の人込みにいけるレベルではないけれど、キラにしてみれば大進歩だった。
そして、キラの当面の目標は日中の普通の状態のお店にいける事、だった。
( アスランが見たら何て言ってくれるかな…?)
驚くだろうか?喜んでくれるだろうか?少しは彼に掛かる負担が減ただろうか?
実はキラは夏休みに入ってからアスランには一度も会っていない。
何でも家の用事があるとかで一週間前程から会っていないのだ。しかし、昨日久しぶりにアスランから連絡があって明日会う約束をしていた。
『 アスランに会える 』
そんな些細な事が何故だかとても嬉しくて胸がふわふわとしてキラは終始落ち着かない自分の心に困惑していた。
( 学校に行っている時は毎日会ってたし、たった一週間会ってなかっただけなのに… )
前は、あんなにアスランとの時間が憂鬱だったのに。今は、気が付けば顔が綻んでしまう。自分は一体どうしてしまったのだろう?
これが親愛というものなんだろうか?でも何か違う気がする…
買い物篭を片手に百面相をしていたキラだったが、ふと視界に入る人影に気付き目を遣る。
キラの目線の先にいたのはこの一般的な庶民のスーパーには不釣合いな人物だった。
◆あとがき◆
はい。ラブシンフォニー16話をお届けします。
中々難産だったこの16話。夏休みに入る前をもう少し長くやろうかと思ったのですが余りここで引っぱってもと思いまして止めました。
夏休み中に皆でキラのリハビリとか言って置きながらフレイとミリアリアは部活、アスランさんは何やら御用時の様子…
キラ一人で頑張ってます。そして、やっと登場します!!容易に想像できると思いますが…そうっあの人です!!
アスキラを語る上でなくてはならないあの人。はるか的にはもう一人いますがその方はもう少し後での登場です。