ラブ・シンフォニー 第15話
季節は春から夏に移り変わりつつある。キラとアスランが出会ってから二ヶ月の月日が経とうとしていた。
アスランと出会ってからいろいろあったキラの周りも少しずつ落ち着きを取り戻し日々は平穏に戻りつつあった。
アスランが校門で待っていても、その後キラが現れて一緒に帰って行っても前のようにキラに嫌味を言ったりする者もいなくなり
人の噂も七十五日とは良く言ったものだ。皆きっと慣れて飽きたんだろうとキラは思っていた。
しかし、その実は素顔を曝したキラとアスランはどこからどう見てもお似合いの二人で誰も口を出せなくなった。と言うのが真相だった。
そして、やっと訪れた二人の平穏を乱すトラブルがまたゆっくりと直ぐ傍までやってきていた……
「 花火大会?」
いつも通りのアスランとの帰り道。
最近ではキラも大分アスランに慣れてきていて触れられなければ、かなりの距離でも普通に会話ができるようになっていた。
「 そ、毎年やってるだろ?もうすぐ夏休みだし一緒にどうかなと思って 」
「 …でも、僕…人込みは…… 」
キラはそう言って口篭る。いくらアスランと至近距離で話せるようになったとはいってもそれはアスラン限定。
男性が大丈夫になった訳ではない。
一応、アスランやミリアリア、フレイと共に夏休みに入ったらいろいろリハビリをする予定みたいなものはあるのだが
それにどれ程の効果があるかはやって見なければ分からない事で、仮に効果が出たとしても
いくらなんでも夏休み半ばにある花火大会の日までに人込みに行ける様になる等という劇的な事にはならないだろう。
「 …僕はいいから皆で行ってきてよ、ね 」
僕の分も皆で楽しんできて、と笑うキラにアスランは大きく息を吐く。
「 キーラ。誰が他の人も誘うって言った?俺はキラに一緒にどうって聞いたんだよ?」
「 え?だっていつも出掛ける時は皆一緒だし… 」
「 キラは俺と二人だけは嫌?」
「 そ、そんな事ないけど…でも僕… 」
キラはそれ以上何も言えず俯く。決してアスランと二人きりが嫌とかそう言うのではない。
花火大会だってこんな身体になってしまうまでは毎年家族や友達と行っていたし、行けなくなってからも
皆には大丈夫だからと笑って見送っていながらも内心は羨ましくてしかたがなかった。
だからアスランの誘いはびっくりしたけれど凄く嬉しかった。しかし、自分と一緒に行く事によって確実にアスランには迷惑をかける。
いくら友達になったとはいえ、いや、友達だからこそ余計な負担をかけてアスランの楽しみを潰したくない。
やっぱりしっかりと断らなくては…そう思ってキラが口を開こうとする。
「 アスラン、僕やっぱり― 」
そう言いかけてアスランの顔を見上げるとアスランは苦笑を浮かべていた。
「 まったく…キラは考えなくてもいいような事まで考えて一人で抱え込むんだから。それ悪い癖だぞ 」
そう言ってアスランはキラの頭を軽く小突いた。
「 っっ! 」
ほんの僅かな触れ合い。でも前までのキラならそれでも気絶の反応を表していた。しかし、今は……何ともなかった。
キラはそんな自分自身に驚いてアスランに小突かれた場所を手で触れて彼を見る。
「 キラは少しずつだけど良くなって来てるし、俺に迷惑がどうとか考えてるのならそんな事気にしなくていいから 」
「 で、でもっ… 」
そんな事言われても気にしなくていいと言われてはい、そうですかと言う訳にはいかない。
そんな風に割り切れるのならこんな苦労はしていない。
アスランはここまで言ってもぐるぐる考えているキラに深く溜息を吐く。
「 キラ、大丈夫だから絶対に 」
きぱっと断言するアスランにキラはおずおずと言葉を返す。
「 本当に迷惑じゃ、ない?」
「 ああ 」
アスランがそう言って頷くとキラはもう一度だけ考える素振りをしてからアスランに向き直る。
「 わかった、行くよ花火大会 」
「 キラ…ありがとう 」
「 アスランがお礼を言うなんて変だよ、お礼を言うのは僕の方…アスラン、ありがとうね 」
キラはふわりと微笑んだ。その笑顔にどきりとしてアスランの胸の鼓動が高鳴った。
もう直ぐ夏休み。キラにとっては久しぶりに楽しい予感のする休みになりそうだった。
◆あとがき◆
はい。久しぶりの更新です。『ラブ・シンフォニー』15話をお届けします。
何とか今の季節に微妙にずれながらもギリギリ付いていっています。てか、世の中はもう夏休みも終盤近くなのに
このお話は夏休み前。どうにか追いつきたいものです。。。そして、花火大会ってお約束過ぎますかねー
只の夏祭りにしようかとも思ったのですがそれこそキラには無理かなーって思いまして。
書いていてギャルゲーとかのイベントみたいだとかちょっと思いました(笑)