ラブ・シンフォニー 13話














朝、久しぶりな道を心なしか軽く見える足取りで歩く少年、アスラン。
先日キラと和解して、今度こそ本当にお友達ポジションを獲得した。
そして今日久しぶりにキラと登校出来るのだ足取りの一つも軽くなると言うのも頷ける。
キラの自宅前に着くと一つ大きく息を吐いた。そしてゆっくりとベルに手を延ばした。



― ピンポーン ―



音がしてから少し遅れて家の中からパタパタとした足音が聞こえてくる。
家の中でどんな様子になっているのか想像に容易い。きっと慌てて支度しているのだろう。
慌てるくらいならもっと早くからやればいいのにと思ったりするが、そんないかにもキラらしい姿を想像して思わず口元が綻ぶ。

そして待つ事数分。玄関のドアがガチャっと音をたてて開いた。

 「 ごめんなさいっっ待たせちゃって 」

 「 いや、大丈…………キラ?」

出て来たキラに目を向けたアスランは目を瞠った。
目の前に立っている少女は自分の見知っているキラ・ヤマトとは別人のようだったから。
長かった前髪は綺麗にカットされ、結っていた髪も下ろされて彼女が動くたびにふわふわと揺れていた。
そして、菫色の瞳を覆っていた眼鏡は外されて大きな瞳を露わにしていた。

 「 えっと…やっぱり…変かな……?」

キラは僅かに頬をを赤らめながら髪を手で触る。

 「 えっ、いやっっ!!そんな事ないよ、一瞬誰かと思った…凄く可愛い…… 」

はっとアスランは我に返ると不安気に見つめるキラにふわっと優しくアスランは微笑んだ。

 「 えっ?!あの……ありが…とう ////// 」

アスランが思わず口にしてしまった本音にキラは益々顔を真っ赤にした。
その様子が余計に彼女を可愛らしく見せていてアスランはくすりと笑う。

 「 え?何?」

 「 ん?キラがどうして顔を出す気になったのかなって思って 」

アスランは話しながら歩き出すようにキラを促した。そして、二人は久しぶりに一緒に歩き出した。








 「 変わりたいって思ったから 」

 「 え?」

 「 さっきの答え 」

歩き出して先に話し出したのはキラだった。

 「 君と出会って、成り行きだったけど一緒にいて色々あって君と喧嘩みたいな事にもなったけど…
  でも、それがきっかけで今の自分を見つめなおす事が出来た…それで変わってみたいと思ったから 」

アスランは真っ直ぐ前を見詰めて話すキラから目を離せないでいた。
その瞳は本当に真っ直ぐに迷いがないように見えたから。
黙って聞くアスランにキラは視線を移した。

 「 だから、先ずは態度で示そうと思って。自分の姿を隠して変わりたいなんて可笑しいでしょ?」

「ちょっと恥ずかしいけどね」と悪戯っぽく笑った。
その笑顔にアスランは鼓動が高鳴った。
周りを特に男性を気にして過さなければいけない今のキラに外見を露出するという決断だけで
キラがどれほど本気で変わろうとしているかが伺える。
会わなかった少しの間に彼女は精神的に強くなった。そして、その姿に改めて彼女に惹かれている自分を自覚してしまう。

 「 キラは凄いな…」

 「 何が?」

きょん、と首を傾げるキラをアスランはやれやれと苦笑する。
まったく、彼女には自分が結構凄い事をやってのけているという自覚という物がないのだろうか?
それがキラらしいと言えばそれまでなのだが。
きっと自分が同じような状況に置かれていたら彼女のようになんてできないだろうと思う。

 「 何でもないよ 」

全く分かっていないキラには何を言っても無駄だとアスランは判断して微笑する。

 「 何だよ、もーやっぱり君って訳分かんないっ 」

ぷーっと頬を膨らませてアスランに悪態を吐く。

 「 ほらほら、そんな顔してたら折角の可愛い顔が台無しだよ?」

くすくすと笑いながら、さらりと言われた言葉にキラは顔を真っ赤に染める。
そんなキラの様子を楽しそうに見ているアスランを赤い顔のまま睨んだ。

 ( 絶対楽しんでるっ!! )




 「 でも… 」

いつまでも笑っているアスランを不貞腐れた顔で睨んでいたキラがぴたりとその足を止めた。
それに気付いたアスランも足を止めて振り返る。

 「 キラ?」

もしかしてまた怒らせてしまったのか?とアスランが声をかけると、キラはパッと顔を上げた。
二人の視線が絡んだ。そしてアスランを見つめるキラがにっこりとはにかむ様に微笑んだ。
不意打ちだった。アスランは思わず顔を紅潮させてしまっていた。


 「 僕、アスランと出会えて…友達になれて良かったと思ってる 」


少し恥ずかしそうにそう言うキラは本当に魅力的で。アスランは即座に言葉を続ける事ができなかった。



 「 あっ、フレイとミリィだっ 」

いつの間にかキラの高校の付近まで着いていたらしく、キラは友人二人を発見した。

 「 じゃあ僕行くね。また帰りに 」

アスランにそう告げると嬉しそうに友人のところに駆けていった。
未だ頭がフリーズ状態のアスランは黙ってその後姿を見送っていた。






 ( …まいった… )

少し落ち着いたところでアスランは思わず弛んでしまいそうになる頬を堪える為に片手で自分の顔を覆った。

 ( キラは天然だ。多分、さっきのあれも本人的には純粋に友達が増えて嬉しいんだろうな…しかし… )

まさか、あそこまで可愛らしかったなんて。想像以上だった。
確かに、元々の素材はいいのだろうと大方予想はしてたし、そもそもキラの外見なんて気にしてはいなかった。
だが、あれは問題だ。あの性格で、あの容姿だといつキラに善からぬ気持ちを抱く輩が現れても可笑しくない。



 「 これからは益々目が離せなくなるな 」



さっき見たキラの笑顔を思い出してアスランは顔に浮かぶ笑顔を深くした。









                                        



   ◆あとがき◆
はい。ラブ・シンフォニー13話をお届けします。
今回は久しぶりのアスランとキラの登校風景です★あとは、顔を隠すことをやめたキラの素顔を見て驚くアスランが
書きたかったのですvvv今回は中休みです。前回でやっと和解したばかりなので平穏な時間もあげないと…
これは何度も言っていますが、今のところアスランとキラはお友達ですっ!!
アスランがどう想っていようともキラに全くその気はありません(酷)まあ、無意識の中ではどうかは…その後の展開って事で。
次回、新たなキャラを出す予定です。フレイさんも水面下で動いてます(笑)