ラブ・シンフォニー 第11話
( うー眠い…… )
結局、あれからキラはアスランとの事を自分なりに一晩中考えた。時々キラ理解不能な動悸に戸惑いながら。
そして、キラなりに考えた今一番しなくてはいけない事に結論付いた時にはもう早朝と呼べる時間になっていた。
結論は出た。しかし、それを行動に移すとなるとまた勇気が必要な訳で…キラは眠気と今日自分がしようとしている事に対する緊張とで
まだ一日も始まったばかりだというのに精神的に疲労を感じて自らの机に突っ伏していた。
「 おはよう、キラ 」
「 眼鏡掛けたまま寝てると痕が付くわよ 」
アスランから逃げる為にいつも誰よりも早く学校に登校していたキラは今日もついつい早く登校してしまっていた。
突っ伏したまま少し眠ってしまっていたのかふと気が付いたらガヤガヤと賑やかしく人の会話が聞こえてきていた。
顔を上げるといつの間にいたのかフレイとミリアリアがキラの近くの席に座っていた。
「 あれ…?フレイ…ミリアリア……? 」
まだ頭が覚醒していないのか焦点の合っていない目でぼーっと二人をみる。
「 ほらっ!しゃんとしなさい 」
「 もうすぐHR始まるよ?大丈夫?」
ゆっくりと頭がはっきりし始め今の状況をこれもゆっくり理解していく。
「 …うん……あ、僕…寝ちゃって…た? 」
やっと理解できた今の状況にキラはかあっと頬を赤くする。
「 そりゃあもう、ぐっすりと!!ぐーぐー寝てたわよ。あたし達が話しかけても気付かないくらい 」
「 えっ嘘っっホントに?! 」
顔を真っ赤にして慌てるキラを見てミリアリアとフレイは思わず笑い出す。
「 あはははははっもうキラってばホント単純ね 」
「 ちょっと…フレイ、そんなに笑ったら…っか、可哀想よっっ 」
爆笑するフレイにフォローを入れようとしているけど笑いを我慢して上手くできてないミリアリア。
そんな二人の様子にキラはぷくっと頬を膨らませて拗ねる。
「 むー酷いよ二人ともそんなに笑わなくてもいいじゃないかーもう… 」
「 ごめん、ごめん。拗ねないでよキラ 」
「 ぐっすり寝ていたのは本当。起すのが可哀想だから私達が起きないようにしてただけ 」
「 え?」
さらっと言われた言葉に少し驚いて視線を二人に向けた。
「 どーせキラの事だからザラ君の事でも一晩中考えてたってトコでしょ?」
「 何で分かるの?」
「ミリィから聞いたんでしょザラ君の事 」
キラはこくんと頷く。そんなキラに二人にふっと優しい笑みを浮かべる。
「 キラは真面目過ぎるからザラ君の事を話せばきっとそんな風に考えると思ってた 」
「 でも、それは今のキラにとって必要な事だと思うわよ 」
「 うん…僕もそう思う… 」
そう、睡眠時間はなくなってしまったけれどあの時間が無駄だったとは思わない。
そのお陰で自分が納得の出来る答えが見えてきた気がするから。
「 でも、無理をさせてしまったのも事実だから… 」
「 で、HRが始まるまでキラの安眠の番をしてたって訳 」
二人の優しさが胸に染み渡る。自分はなんて幸せ者だろうと昨日から何度思ったのだろうか?
いつか二人に何か辛い事や困った事があった時には…
( 僕も全力で助けるから )
心の中でそう誓うとキラは二人に向かい微笑みを浮かべる。
「 二人とも、ありがとうね 」
ミリアリアとフレイも二人で目を見合わせてくすりと小さく笑う。
「「 どういたしまして 」」
そして、三人で笑いあう。この学校に入学して初めてキラは学校が楽しいと心から思った。
友達の存在の有難さと共に。三人の語らいはHRの始まるギリギリまで続くのだった。
その日の放課後。
毎日の日課のように校門の脇に佇む少年が一人。アスランである。
( …今日も駄目かな…… )
キラに避けられてから早一週間。アスランはただひたすら此処で待っていた。
彼女が裏門から帰ってしまうのは知っていても彼はそちらには行かなかった。
それは彼が自分にかせた戒めだった。彼女…キラが自分から此方に来てくれるまでは自分からは行かないと。
自己満足と言えばそれまでだが、そうしなければ彼自身が自分を許せなかったから。
( 約束の期限までには許してくれるかな…まあ、自業自得なんだけど…… )
自照気味に小さく笑っていると傍に近寄ってくる二人の女生徒の姿が目に映った。
アスランは眉間に皺を寄せて溜息を漏らす。
( またか… )
アスランがここでキラを待ち続けて一週間余り。その間何度かこの学園の生徒から声をかけられていた。
しかし、今のアスランにはキラの事しか考える余裕が無い為、その全てを綺麗に聞き流していた。
今回もまたその類のものだとアスランは思っていた。
「 ちょっと!何無視してくれてんのよっ 」
「 別に無視しているつもりはない。ただ話したくないだけだ 」
「 それを世間一般では無視って言うのよっ 」
「 ちょっとフレイ… 」
突然食って掛かってきた気の強そうな赤髪の少女を茶髪の少女が止めた。
一体何なのだろうか…今まで話しかけてきた女達は皆頬を赤らめながら明らかな意図を持って声を掛けてきていた。
しかし、この二人はどこか様子が違う。何がしたいのだろう?
アスランから少し離れて何か話していた二人が再びアスランの傍に近寄ってきた。
そして、黙ってじっとアスランの顔を見つめる。
「 なんなんだ一体。用がないならどこかに行ってくれないか 」
流石に鬱陶しくなってアスランは声をあげた。
すると彼の顔黙って見つめていた赤髪の少女がきっと睨み付けて口を開く。
「 本当はアンタみたいなのには渡したくないんだけどっ 」
「 はっ?」
「 これはあの子が望んだ事だから仕方ないわ… 」
「 だから一体何を… 」
勝手に一人で話を進める赤髪の少女にアスランはついていけない。
それでも彼女の話は勝手に進んでいってどうしたものかと困っていると彼女の話がぴたりと止んだ。
「 これ… 」
ずっと赤髪の少女の後ろに黙っていた茶髪の少女が赤髪の少女を制して彼女の前に出た。そして一枚の手紙の様なモノをアスランに差し出す。
アスランはそれを受け取るとその手紙を開いて中を見る。
「 !!!!」
手紙の中を見てアスランは驚愕する。何故ならその手紙の送り主は…
「 キラから預かってきました 」
◆あとがき◆
はい。『ラブ・シンフォニー』11話をお届けします。
少しの間ブランクを開けたら小説が書けなくなってしまいこの話凄い難産でした…(汗)
ブログには一昨日くらいにUPすると書いていたのに…二日オーバー……まあ、何とかUP出来て良かったです★
今回やっと…久しぶりにアスラン登場です。長かった…もっと早く出てくる予定だったのに女性陣が思いの他頑張ってくれて
しまったので…(笑)アスとキラの再会は次回です。ここはもうずっと書きたかったトコなので早く書きたいですvvv