ラブ・シンフォニー 第9話
キラは今の自分の現状を二人に話し始めた。
男性が怖い事、それは過去に襲われかけた経験が原因であること、そしてアスランの事も全て包み隠さず話した。
途中、何度も言葉に詰まったり過去の忌まわしい事を思い出して涙が出そうになったりしたけれど
キラはちゃんと最後まで自分の言葉で話し終える事ができた。
その間、フレイとミリアリアは只、黙ってキラの話を聞いていた。
「 これが今の僕の全部… 」
全てを話し終えたキラが不安げに二人を見つめる。
自分が話している間、何も言わずに聞いていてくれた二人。彼女たちが自分の話をどんな風に受け止めたのか
キラにはそれが怖くてしかたがなかった。
自分の事を自分で人に話すのは初めてで。それによって二人の自分を見る目が変わってしまうのではないか?
二人を信じてはいてもどうしてもそんな不安を拭いきる事はできなかった。
長い沈黙が続いた。キラはいたたまれない気持ちになって俯く。
「 やっぱり― 」
キラが口を開き始めた次の瞬間、自分の手に温かなモノを感じた。
「 え?」
咄嗟に顔を上げれば黙って正面に座っていた二人がテーブルの上のキラの手に自分達の手を重ねていた。
「 フレイ、ミリィ?」
「 ありがとうキラ、話してくれて 」
「 そんな大事な事、もっと早く言いなさいよね 」
二人の顔を見れば全てを受け止めてくれているかのように優しい笑顔を浮かべ、その瞳には薄っすらと涙が浮かんでいた。
「 今まで誰にも頼らず頑張ってたんだね?キラ 」
「 一人で抱え込んでるんじゃないわよっ私達、親友でしょ?」
優しい二人の優しい言葉。それが凄く嬉しくて話して良かったと心から思った。自分は何て幸せ者なのだろうと。
彼女たちと友達になれて本当に。止まっていた筈の涙が再び溢れ出す。
そしてもうそれを止める事は出来なかった。
「 もう、キラったら何泣いてるのよ 」
「 だっ…だって……… 」
「 そんな事言ってるフレイだってっ 」
「 こ、これは……そ、そうっキラが泣くから貰い泣きよっっ 」
「 フレイ、その言い訳は厳しい… 」
泣きながら笑って、冗談言ってふざけ合って。そんな事が凄く嬉しくて楽しくて。
こんな気持ちこの数年、ずっと忘れていた。
あの日以降、自分が再びこんな風に笑える日が来る事になるなんて考えもしていなかった。
「 それで、、、キラ?」
一頻り笑ったところで、フレイがにっこりとキラを見つめる。
「 何?」
「 さっき言ってたZ高の人の事だけど 」
「 えっ?ザラ君??」
その名前にびくりとキラは反応する。すっかり忘れていたが彼との事が解決していなかったのだ。
「 そうっその人。単刀直入に聞くけど…キラはザラ君のことどう思ってるの?」
「 どうって…その…… 」
どう思っているか?と聞かれてもそんな風に考えた事がないからどう答えていいか分からなかった。
「 ちょっとフレイ。キラが困ってるじゃない 」
「 大事な事なのっっキラ、じゃあ聞き方を変えるわ。彼の事、嫌い?」
嫌い?キラは自分の中で問いかける。自分は彼の事が嫌いなのだろうか?
出会いは最悪だった。その後それを理由に約束を交わさせられた。嫌いになる理由は十分あった。
でも、一緒にいる間彼はずっと自分に優しかった。男性が怖いと分かっているからある程度の距離をとって接し続けてくれた。
自分を優しく見つめる翡翠の瞳。不思議と彼には他の男性に感じる不快感を感じなかった。
「 ……嫌い……じゃ…ない……… 」
それがキラの出した答えだった。そう『嫌い』ではない。しかし、今のキラにはこれ以上の答えは見つけることが出来なかった。
そんなキラを余所に彼女の答えにフレイが何か確信めいた笑みを漏らす。
「 もうフレイ、一体何なの?」
「 ふふふっキラ。あんたの男性恐怖症あたしがなんとかしてあげるっ 」
「 えっ?!ホント?」
「 そんな事できるの?」
キラとミリアリアは驚きながらフレイに詰め寄る。
「 まかせてっ!!でも、まず彼を何とかしないと… 」
「 彼?」
きょとん、と小首を傾げるキラ。
「 そう、彼よっアスラン・ザラ。彼が全ての鍵を握っているわっ」
◆あとがき◆
はい。お久しぶりの更新です。ラブ・シンフォニー9話をお届けします。
今回、前半は凄く真面目な話をしていた女の子三人、後半は只の恋バナになってましたね…
恋愛ドリームモードの乙女は誰にも止められないと思います。フレイはもう二人がこの後どうなるか確信してるご様子。。。
次回は3話?くらいぶりにアスランさん登場予定です。