ラブ・シンフォニー 第8話
何かをしなくてはいけないと思う時ほど時間は早く経つものである。
それはキラに置いても例外ではなく、半ば強制的に取り付けられたフレイとミリアリアとの約束を断る事の出来ないまま
時間は無常にも過ぎて行き、今は放課後。キラは二人と一緒にカフェでお茶をしていた。
「 噂どおりいい感じのお店でしょ?」
「 ホント、何か和み系よねー 」
確かにお店は可愛らしい雰囲気の外観で内装やインテリアにも温かみのある木製の物を使うなど拘ってあった。
それにあちこちにセンス良くレイアウトされた小物が店内の雰囲気を更に良くしていた。
キラもこのお店はあっという間に気に入り、久しぶりに心が和らぐのを感じていた。
「 私、ずっとキラと一緒に放課後こうして遊んだりしたかったんだ 」
「 私も 」
二人は嬉しそうに笑みを浮かべる。
そんな二人とは対照的にキラは驚きを露わにして目を瞠る。
「 何で?って顔してる 」
クスクスと笑い合う二人に内心を言い当てられて驚くキラはこくこくと頷く。
「 だって、友達だもの 」
「 友達だったら学校の外でも一緒に何かしたいって思うじゃない?」
キラは心底驚いていた。自分の事をこんな風に思っていてくれていたなんて。
「 だけど… 」
さっきまで笑顔だったミリアリアの顔が少し曇る。
手元にあるソフトドリンクのグラスの氷をストローでかき混ぜながら些か言い難そうに口を開く。
「 キラは違うのかな?って思ってた 」
「 え?」
「 学校で話しかければ返してはくれる。でも、自分から何かを話したり、自分の事をって一度もないじゃない?
だから、キラは私達と仲良くなんてしたくないんじゃないかって… 」
「 そ、そんな事っ…… 」
ない。とは言えなかった。彼女達の言う通りの態度を実際取っていたのだから。
親しい友達がいなかったのは自分が努力しなかったから、親しくなって自分と言う人間を知った時
拒絶されるのが怖かったから…
でもその行動の結果、二人に不快な思いをさせてしまった。自分という人間はどこまで人に迷惑をかけてしまうんだろう…
「 あの…ごめん、ね?」
咄嗟に出た謝罪の言葉。しかし、キラのその行動にピクリとフレイの眉が動いた。
「 それは何に対しての謝罪?やっぱり私達とは距離を置きたいって事?」
眉を寄せてフレイは鋭い眼差しをキラに送る。
「 ち、ちがっ!そうじゃないっっ今まで僕の事をそんなに気にしてくれていたのに僕、それに気付かないどころか
あんな態度を取り続けちゃって……… 」
必死に言葉を紡ごうとすればする程、何だか自分の言い訳をしている様で…最後の方にはその声は微かに震え
消えそうなほど小さくなっていた。
「 もう、フレイってば苛めすぎ 」
「 そうね、でもこれくらい追い詰めないとキラったら本心を言ってくれそうになかったんだもの 」
「 え?」
突然、割って入ってきた二人の言葉。
いつの間にか俯いていた顔を上げるとそこには二人の優しい笑顔があった。
「 もし、さっき距離を置きたいなんて言ってたら本気で許さなかったけど 」
冗談めいて悪態をついたフレイが軽くキラの頭をコツンと小突く。
「 これからは少しくらい私達にも付き合いなさいよ 」
「 キラの為なら彼氏なんかほっといて付き合うからっ 」
「 え?許して…くれる……の?」
こんなどうしようもない自分を?自分が傷付くのが怖くて二人との間に線を引いてきた自分を?
この友人たちは許すと言ってくれるのだろうか?
「 仕方ないから許してあげる 」
『今度だけよ』と付け加えて微笑むフレイ。
「 人に気を使い過ぎて一歩引いちゃうキラもキラだもの。私達はキラの全部を好きになりたいと思ってる 」
『あ、でも私達には遠慮は無用だからね』と優しく笑いかけてくれるミリアリア。
キラの中に暖かな感情が流れ込んでくる。
二人の気持ちが嬉しくて自然に瞳に涙が溜まる。
「 ……ありがとう……… 」
眼鏡のレンズ越しに見える紫の瞳に涙を浮かべたまま見せた心からの微笑み。
それを見たフレイとミリアリアは目を見開き絶句する。
その笑顔が同性から見てもドキリとするほど綺麗だったから……
二人の優しさに触れ、キラはある決断をする。
もう、立ち止まったままでは駄目だから。自分をここまで思ってくれる二人なら大丈夫話せる、そして前に進みたい。
もう、過去を引きずって生きていたくない。
「 僕、二人に聞いてもらいたい事がある 」
過去と決別する為、キラはその一歩を踏み出した。
◆あとがき◆
はい。『ラブ・シンフォニー』8話をお届けです。
アスラン出番なし、次も出て来ない…かも…(笑)でも、キラ人を信じ過ぎ…フレイとミリアリアは本当に友情で
動いているのだけど、世間には悪い人も一杯いるから。。。優しい言葉を真に受けて身の上話を直ぐにするのは
ホントは危ないんだよー(やらせてるのは自分)