ラブ・シンフォニー 第6話
気付いた時には彼の腕の中だった。
自分を労わる様に優しく包んでくれる腕。しかし、キラには衝撃的なことだった。
あの時以来の男性の体温。途端にキラの中で過去の出来事がフラッシュバックする。
身体が震え始め、身体から血の気が引くような感覚がキラを襲う。
呼吸が上手く出来ない、苦しくて意識が飛びそうだった。
「 キラ?」
殆んど無意識に身体が動いてしまいキラを抱きしめていたアスランは彼女の異変に気付き我に返りその身体を開放する。
途端にキラはアスランから一歩、二歩と後退り距離をとる。
そして、自らの身体を力の限り抱きしめた。それを見たアスランは、自分のとった行動にしまったと思う。
青白い顔で怯える様に自分の姿を見つめ、身体を抱きしめているキラの様子は全身でアスランを拒絶しているように見えた。
その姿が余りにも痛々しくてアスランはいたたまれない気持ちになる。
キラが男性に対して恐怖の感情を抱いている事を自分は知っていた筈なのに無意識とはいえ、軽率な行動を取ってしまった己をアスランは諌めた。
そして、自分が思っていた以上にキラの心に残る傷が深いのだとを思い知る。
「 ごめん、、、 」
その後、アスランは何も反応のないキラを距離を取りながら促し、家まで送り届けた。
キラは最後までアスランに何かを言う事はなかった。
「 最初の時みたいに思い切り投げ飛ばされる方がまだマシだったな… 」
この状況よりは…とアスランはキラの部屋がある窓を見上げながら呟いた。
翌朝、アスランがキラを迎えに行くと彼女は既にいなかった。
( 避けられてるな… )
無理もない事かもしれない…昨日の今日だから。しかし、アスランにも譲れないモノがあった。
『 君は一時の気まぐれで僕に構っているのかもしれない 』
昨日、キラに言われた言葉。確かに初めは気まぐれだったのかもしれない。
でも、この二週間キラと一緒にいて自分が彼女に惹かれていくのをアスランは感じていた。
怒ったり、泣いたり、笑ったりと(怒っている事の方が断然多いが)いろいろな感情を素直に表に出してくるキラ。
今までアスランが付き合った誰も持ちえなかったそんな表裏のないキラに対する愛しさは日に日に大きくなるばかりだった。
今思えば始めてあったあの時に自分は直感的に気付いていたのかもしれない。
― 自分が求めているのは彼女だと ―
自分がこんなに誰かに執着するのはきっと後にも先にもこれが最後だろうと苦笑を漏らす。
決意も新たにしたアスランはその場を後にする。
立ち止まってなどいられない。自分には期限があるのだから。
あと、二ヶ月半でキラとの約束は終わってしまう。それまでにキラとの関係を進展させないといけない。
何せ今はスタートラインに戻ったどころかスタートラインにすら立ててない状況まで戻ってしまっているのだから。
「 覚悟しておけよキラ。必ずお前を捕まえてみせるからなっ 」
◆あとがき◆
はい。ラブ・シンフォニー6話をお届けしました。
前回、理性をすっばして思わずキラを抱きしめてしまったアスランさん今回、後悔しまくりです。
そして、キラは今回一言も喋っていません。過去のトラウマを引っ張り出されてしまったのです。
アスランは既にキラを恋愛対象で見ています。殆んど初めからそれっぽかったんですが二週間付き合って再確認vvvみたいな。
キラにはまずはお友達からと行っておきながら…アスラン…策士です…(笑)
次からアスランさんは頑張ってキラを捕まえようとします。頑張ってもらわないと…ホントに……(笑)