ラブ・シンフォニー 第5話






キラとアスランのお友達付合い生活が始まって二週間という時間がたった。
毎日の様に放課後アスランと一緒にいる為、アスランに対しては随分と免疫が出来てきたキラはなんとか並んで歩く事は出来るようになっていた。
それでもやっぱり普通の人から見ると距離があるようにも見えるがキラにしてみれば大進歩だった。
この二週間、毎日アスランが下校時間には校門で待ち伏せている為キラには逃げる術も無く、毎日毎日毎日……

一緒といっても特に二人で何かする訳でもなく、お互いの事やその日学校であった事等を話したりしながらキラの家までアスランが送って行く、
それだけの事だった。先週の休みの日はアスランに外せない用事があってキラは難を逃れていた。
きっと今度の休みはアスランによって拉致られるんだろうな、と心の中で溜息を吐く。

そして、超有名校の生徒、しかも美形と毎日一緒に登下校しているというだけで女子高生達には恰好獲物で
学校に流れている噂はあれよ、あれよと言う間に大きく膨れ上がり、今ではキラは学校の有名人だった。

 『 僕の平穏な日常が… 』

今まで静かに目立たない生徒で徹してきたのに、あっという間にキラの日常は180度反転した。
話した事の無いクラスメイト他のクラスの生徒、上級生にまであれこれと聞かれるしまつ。
しかも、好意的に話しかけてくれる人なんて余りいない、殆んどの生徒が地味なキラが超有名校の美形と付き合いがあることを嫉み、
嫌味や悪意のもった言葉をキラにぶつけてくる。

 『 あんたなんかと彼は釣り合わないわよ 』
 『 遊ばれてるんじゃないの? 』
 『 大人しそうな顔して裏じゃなにやってるか分からないわよね 』










 「 はあー… 」

本日、何度めか分からない溜息をキラは吐いた。
学校でもその行き帰りでもいつも気を張り詰めた常態のキラは正直もう結構まいってしまっていた。
何故こんな事になってしまったんだろう…この二週間毎日の様に思ったが過ぎてしまった事は戻るはずも無く、
ただ、早く三ヶ月が過ぎてくれればと願うしかなかった。

 「 キラ 」

呼びかけられた声に反応するようにびくりと肩を揺らすと錆付いたロボットよろしくギギギと音を発てそうな様子でゆっくりと振り向く。
そこにいたのは予想通りというか当然というかキラの今の現状の諸悪の根源の少年、アスランが立っていた。

 「 どうした?何だか元気ないみたいだけど。学校で何かあった?」

キラに駆け寄りながら彼女を心配する様子はどこからみても彼女の事を心配する優しい彼氏のそれで。
周りにいる人々は羨ましげに二人の様子を見つめている。

 「 何でもないよ… 」

初めのうちはキラもアスランの言動、行動にドギマギしていたが慣れとは恐ろしいもので僅か二週間ではあるが
その時間で彼が結構世話焼きの心配性である事を知り、そんな彼の行動に慣れ初めていた。

そう、二週間の間で彼が悪い人ではない…というか結構良い人であるのは分かった。
でも、それでも彼が原因で日常が一変していまったのは事実な訳でキラの精神状態は目下情緒不安定なのだった。


 「 何でもない事はないだろ?溜息なんか吐いて、この所日に日に元気もなくなってる感じだし 」


 (それを君が言う?)

そしてアスランのあんまりな一言でキラの中で何かが切れる。
すっとアスランに背を向けるとすたすたと歩き始めてしまう。いつもなら渋々ながら律儀に約束を守り一緒に帰るようにしているのに。
キラの様子の変化に気付いたアスランは慌ててキラの後を追いかけるように駆け出していく。

 「 キラっ待てって 」

キラに追いついたアスランが彼女を呼び止める為声を掛けながら早足でキラの後について来る。
すると、さっきまですたすたと歩いていた彼女がぴたりとその足を止めた。
キラが歩みを止めてくれた事にアスランは取り合えずほっと安堵した。

 「 ザラ君。君、さっき聞いたよね?学校で何かあったのかって 」

 「 ああ… 」

 「 最近、元気がなくなっていってる感じがするって言ったよね? 」

 「 ああ… 」

キラの突然の問いかけに只答えるしかないアスランにキラは眉を吊り上げて振り返り様彼を睨みつける。
瞳の紫水晶は溢れそうな涙によってゆらゆらと揺れていた。
その射抜かれそうな眼差しに不謹慎だがアスランはドキリと胸を鳴らした。

 「 全部…全部…君のせいじゃないっっ 」

堰を切ったように溢れ出したキラの感情はもう本人にも止める事は出来なかった。

 「 学校で何かあったかって?あったよっあれから毎日、毎日、君といる事で今まで話したこともない人たちにあれこれ聞かれるし、
  嫌味を言われたり…そんなんで元気でいられる程僕は強くないっっ 」

 「 キラ… 」

 「 君は一時の気まぐれで僕に構っているのかもしれない、でも僕…僕には……つら…い……よ 」


最後は搾り出すように呟かれた言葉にアスランは胸を締め付けられるような感覚を覚えた。


そして、彼は無意識にその小さく悲しみとやり場のない怒り震える華奢な身体を抱きしめていた。







                                         


  ◆あとがき◆
はい。かなり開いてしまいましたが、『ラブ・シンフォニー』第5話をお届けです。
今回、いきなり二人が修羅場ってますがこれがないと次のステップに進めないので仕方がないのです(笑)
アスランさんはお坊ちゃんでモテるのに結構、心配性の苦労症なのはお約束vvv
女子高の中で有名校の美形と仲良しさん何て噂が流れたら結構苛められると思ってしまうのは私の偏見でしょうかね?
女の子の苛めって結構陰険なジメジメドロドロした感じがあるのですが…(どんなイメージだよ…)
さて、次回はまた一騒動あります。中々落ち着きはしません。(大笑)