ラブ・シンフォニー 第2話
自分の不注意で出会い頭にぶつかっり、その上心配してくれた相手を投げ飛ばして逃げるようにその場から去ってから
キラはその場から離れても走る速度を遅くすることなく走り続けた。
自宅についてからも逃げ込むように自分の部屋に走りこんみ、ベットの上に突っ伏した。
( また、やっちゃった… )
思い返すのは先程の事。いつもは気を付けている筈なのに今日は帰りが遅くなっている事に気を取られて注意散漫になっていた。
その上、相手は親切にしてくれようとしていたのに、投げ飛ばしてしまった。
全ては自分が悪い。相手に何の落ち度もない。そう思えば思うほど落ち込みも深くなっていく。
しかし、キラとて好きでこんな態度を取った訳ではない。ちゃんと理由があるのだ。
キラは…異性ー即ち男性が苦手なのだ。
苦手と言ってもそんな軽いものではなく、話す事は勿論の事、傍に近寄られたり、身体に触れられたりそう言った日常生活で起こりうる事も
駄目な程でその域は異性が苦手と言うよりも恐怖症なレベルのものだった。
だから、先程のように手を差し伸べられてもその手を取る事は出来ずキラが限界を感じる距離まで近くにこられると
自己防衛の為に身体が勝手に動いて投げ飛ばしたりしてしまうのだ。
元々、運動も苦手な訳ではないキラ。護身術にもなるからと家族に進められて始めた柔道はもう黒帯レベルだった。
「 はぁ… 」
帰ってきた当初の異性に対する恐怖から来る体の震えはおさまった。
しかし、元々心根の優しいキラは今回のような事がある度に心を痛めていた。
あんな風に接したくないのに、、、男性にだって優しい人はいる…と思う。あんな事する人間ばかりではないーと。
その瞬間、過去の忌まわしい出来事がキラの中で甦ってきそうで自分の身体を強く抱きしめた。
大丈夫、大丈夫、と自分に言い聞かせて自分を落ち着かせる。
その時ふと浮かんだのは自分を心配そうに見つめる碧。ほんの一瞬だけ見えた碧の瞳。
それがキラの脳裏に何故か焼きついていた。
( もしも…もう一度会う事があるなら…ちゃんと誤りたいな…… )
今までこう言った事があって心を痛めてはいてもまた再び会えたならーなどとは考えた事はなかった。
そのキラが無意識ではあるが異性に興味をしめし初めていた。
だが、その小さな己の変化にキラが気付く事はないのだけれど。
それから三日後、再会は突然訪れた。
「 ねぇねぇ、校門の前に凄い美少年がいるらいしよ 」
「 えっ!!うそっどこっどこっっ 」
何気なく耳に入った同級生の声。女子高であるその場所に他校のしかも男子が来る事はそれだけで話題の種だった。
しかも、それが美少年となれば年頃の乙女達からすれば黄色い声の一つでも上げるというものだ。
でも、キラと言えば聞こえてきた同級生の声に何の反応する事もなく
それどころか頭の中でぼんやりと帰る時に拘りあいにならないようにしないと…とさえ考えていた。
「 あれって、Z高の制服じゃない? 」
「 Z高ってあの名門の? 」
「 じゃあ、上手くお近づきになれば将来は玉の輿?? 」
きゃいきゃいと話に花を咲かせる乙女たち。普通ならキラもこんな会話に混ざって色恋話をしても良い年頃だ。
友達と恋愛話をできたら…そんな風にキラとて思わない訳ではない。しかし、今現実にそれは出来るはずも無くて…
キラはそんな自分が情けなくなり大きく一つ溜息を漏らす。
そして、マイナスになっいる頭を無理やり切り替えて黙々と帰り支度を始めるのだった。
特に部活にも委員会にも所属していないキラは授業が終わってしまえば自由の身で帰りも早い。
まあ、お人好しな性格のため頼まれると嫌と言えなくてよく教師やクラスメイトに頼まれ事されてはいるのだが…
今日はそんな事もなくすんなり帰路につく事ができそうだった。
下駄箱で靴を履き替え、校門に目を向けるとまだ例の美少年がいるのだろう、そこは注目の的だった。
数多くの生徒が帰る素振りで遠巻きからその少年を見つめていた。
その雰囲気にそこを通ることに怯んだが通らなければ帰れないのだから早く抜けてしまおう。
そもそも自分が見られる訳でもないのだし、噂の美少年も自分には一生拘りを持つ部類の人ではないのだから。とキラは結論づけて歩き出した。
俯き足早に校門に向かい、そしてあと少しで通り抜けれると思ったときー
「 あっ、君 」
皆の注目を一身に浴びていた少年から呼び止められる。
「 え?」
何となくどこかで聞いた事があるようなーでもそんな事よりも一生拘りを持つ部類ではないと思っていた人間に声をかけられ
今のキラはここにいる生徒の注目の的になってしまった。
それに男の人に話しかけられても自分には返答する術が無い今も口が硬直してしまって上手く言葉を紡ぐことが出来なくなっていた。
「 キラ・ヤマトさん…だよね?」
「 あ、あの… 」
見ず知らずな人のはずなのに突然名前を呼ばれてキラは、顔を僅かに上げた。
そこに飛び込んできたのは鮮やかな碧。
「 覚えてない?三日くらい前に… 」
やっぱり…三日前に出会い頭にぶつかって投げ飛ばした人だった。
もしも、もう一度会えたら誤りたい…と思っていたが、まさか本当に再会できるなんて思ってもみなかった。
お互いに名乗った訳でもないし、キラにいたってはパニックになっていたので顔すらしっかり見てはいなかったのだ。
覚えていたのはずっと目に焼きついていた碧の瞳。それだけだった。
「 ……あ、あの…… 」
折角再会できたのだから、あの時の事をしっかり誤りたい…とは思うものの口が上手く動いてくれず話もままならない。
しかも、この注目を浴びている状態ではキラの症状を更に悪化させていた。
どうしようもなく俯いて黙っているとそれに気付いた彼が助け舟を出す。
「 ここじゃ、目立つから歩きながら話してもいいかな?」
男性と二人で歩く事に躊躇いをしめしたが今この状況にいるよりはましと判断したのかこくりと頷いた。
キラの脳裏で明日学校に行ったら質問攻めにあうんだろうなーと掠めた。
しかし、取り合えずは明日の事より今この現状をどうにか乗り切らないといけないという思いの方が強かった。
三日前の失敗を繰り返さないようにとキラはこっそり拳を握り締めていた。
◆あとがき◆
はい。ラブ・シンフォニー第2話をお届けしました★
キラがアスランを拒絶した理由…男性恐怖症だったんですねーありがちですよ!!ええ、わかってますとも(開き直り)
これからアスランがキラを手に入れるべく頑張って貰う予定です。
ちなみに何故アスランがキラの学校、名前を突き止めることができたか?それはザラ家の力です(笑)
学校は制服で分かったんでしょうね、半ストーカー化しているような気もしますが…
キラは当たり前ですが美少女です。ですが人前に出るときは顔を眼鏡と前髪で隠しているので気付いている人は今のところいません。
それに気付いた時のアスランを早く書きたいですvvv
取り合えず、もう少し出会い編が続きますのでお付き合いくださいませ★★★