★キミとボクと約束のカケラ★ 第11回















「シン!どうしてあんな事言ったの?!」
「いや、勢いでつい…」
「つい、じゃないよー君にはちゃんと彼女がいるじゃない!僕、ルナにどんな顔して会えばいいんだよ…」

シンにはルナマリアという立派な彼女がいる。それにも関わらずシンはキラの彼氏だっと言ってのけたのだ。
ある意味大物ではあるがキラは困ってしまう。しかし、キラの心配を余所にシンはケラケラと笑う。

「キラは大袈裟なんだよ、あれはキラにこれ以上ちょっかい出させない為にアイツを牽制しただけなんだから。実際、アイツは引き下がったじゃないか」
「シンが楽観的すぎなんだよ!!それに、どんな理由があっても嘘は駄目だよ」

嘘は吐いてもいい事なんて1つもない。中には優しさからくる嘘もあるだろうがそんなものはごく僅かでその殆どが結果的に誰かを傷つけることになるのだ。
だったら嘘なんて吐かないほうがいい。キラはそう思っていた。

「キラってホントに馬鹿が付くくらい真面目だよな」

神妙な顔をしているキラを見てシンが苦笑する。

「シン、それって褒めてくれてるの?」
「一応。そこがキラの良いところだしな」
「何か素直に喜べない…」

どこか不に落ちなくてジト目で見ているとシンはあっさりスルーして話を元に戻してしまう。

「とにかく、ああ言った以上、アイツの前では俺はキラの彼氏って事で!」
「で、でも…」

どこまでも言葉を濁すキラにシンは仕方ないな。とポンとキラの肩に手を置いた。

「ルナにはちゃんと言っておくから心配しなくて大丈夫だって」

安心させるように言うとキラはおずおずとシンを見遣る。

「…本当にちゃんと説明しておいてよ?」
「ああ」
「……わかった……嘘つくのは気が進まないけど…」

キラは渋々ながらもシンの申し出を了承した。








― 翌日。

「ど、どうしたの?!シン。その顔」

左頬を赤く腫れさせたシンがバツの悪そうな顔をしてやって来た。
キラは吃驚して心配そうな顔で駆け寄った。
不機嫌極まりない顔をしていたのに、キラが近づいた途端、目が泳いで視線を合わそうとしない。その態度には流石に良い気持ちはしないけれど、今はシンの事だ。

「シン?」

キラはもう一度、心配そうな面持ちでシンを見た。菫色の大きな瞳がゆらゆらと揺れていて、彼女が真剣だという事は一目で見て取れた。
キラのこの顔にはきっと誰も敵わないんだろうな。とシンは思った。
そして、半ば諦めたように溜息をつく。

「……これはルナにやられたんだよ」

「え?」

恰好悪いからホントは黙ってようと思ったのに。とシンは機嫌悪そうに呟く。
シンの話からすると、昨日の『シンがキラの彼氏』騒動の後、キラと別れたシンは本当の彼女であるルナマリアと会ったらしい。そこで、キラにくれぐれもと頼まれていたのもあってその旨を説明した、のだけれど、彼女から返ってきたのは納得や了承の言葉ではなく、渾身の平手打ちだった。



「……シン、君…一体どんな説明したの……?」
「どんなって、そのまま事実を言ったぜ?『キラの彼氏になった』て」
「………」

シンの言葉にキラは絶句した。心なしか頭痛もしてきた気がして頭を抱えたくなる。
そんな言い方じゃ、誤解を招かない方がおかしい。きっと凄く驚いたに違いない。それに酷く傷付いた筈だ。
そもそも、状況説明をシンに任せた事が間違いだったのだ。こんな事なら始めから自分がメールでもしておけば良かった。
後悔が後を絶たなくてシンに言うべき言葉が出ないキラだったが、絞り出すようにして何とか言葉を音にした。

「シン、言葉が足りな過ぎだよ…君…」
「そうかなー?簡潔で分かりやすいと思うんだけどなー」

簡潔過ぎだよ!と思わず速攻でツッコミを入れてしまった。

「とにかく、僕の方からメールしておくから」

これがきっかけでシンとルナマリアがどうにかなるとは思わないけど、自分が原因で二人が喧嘩していると分かっているのに黙って見ているなんてできない。
ただでさえ、ルナマリアにはいつも凄く申し訳ないと思っている。キラの仕事の事で、彼氏であるシンをキラが独占状態だからだ。
それなのにルナはキラにも好意的に接してくれる。何でもない顔をしているが大好きな人と余り一緒にいられないなんて平気なはずがない。
キラには恋愛の経験がないので実際はどうなのか分かってはいないのだけど、そういうものであると思っていた。

「僕からも言うけど、シンからもちゃんとルナに謝っといてよ」

「えーー!」

「えーー!じゃない!!シンが僕の為にしてくれたって事を除いても、シンの言い方は事はルナに対して気遣いがなさすぎだよ」

キラからフォローを入れるだけじゃ駄目なのだ。やはりシンからの連絡を彼女は待っていると思うから。

「でもさー…」
「シンだってルナとこのまま気まずいなんて嫌でしょ?」

きっとシンもホントは分かっているのだ。でもただ、気恥ずかしいのだ。だから分かりきっている事を言って背中を少し押してやる。

「………わかった」

渋々そう答えたシンにキラは満足そうに微笑んだ。キラがそこまで言うから仕方なくだからな。と付け足す辺りがシンらしい。
全く素直じゃないんだから。とキラは浮かべた微笑みを深めた。






                                        



  ■あとがき■
はい。またも更新期間が開いてしまいました。漸く『キミとボクと約束のカケラ第11話』をお届けです。
今回は、アスランでてきませんでした。でも、こんな事で引き下がる彼でもないので…アスキラですし(笑)
今回、登場はしていないのに名前が出まくっていたルナマリアは本編に絡ませるかはまだ未定です。一応、シンの彼女なのですが
このお話のメインが彼女がいない場所が殆どなので……。ただ、名前はチラチラ出てくるのは決定しています(笑)
この話、シンとキラの絡みが多いのでウンザリされてないか心配です。あと少し我慢してもらえればじわじわとアスキラになっていく…はず……。