★キミとボクと約束のカケラ★ 第10回
「ホントなのか?」
「う、うん…アスランさんとの仕事が最近増えて一々打ち合わせとかでスケジュールを合わせるよりもいっその事少しの間お世話になった方がいいんじゃないかってラクスが…」
アスランが俄かには信じられないといった表情をしたのでキラはおずおずと事情を説明する。
「正式にうちの事務所にきたって訳ではないのか?」
「うん。それはほら僕いろいろと事情があるし面倒でしょ?だから…」
「でも、暫くはうちにいるんだな?」
「うん?」
矢継ぎ早に質問をするアスランにキラは不思議そうに首を傾げた。
当のアスランはブツブツと何か呟いていた。
「よし!分かった。キラ、お前今日のスケジュールは?」
何かの結論に至ったのか突然、手をポンっと打った。
「うぇ?え、えっと…シン、とうだっけ?」
唐突の切り返しについていけずキラは思わずシン助けを求めた。
今までムスッとしながらも二人のやり取りを傍観していたシンはその表情をそのままに答える。
「今日は今のところ仕事はないぜ、ここに挨拶がてら顔見せにくるってことだけで…」
ここでアスランのことが気に入らないからといって嘘を吐くでもなく、正直に答えてしまうのはシンの良いところなのだろう。
しかし、この場合は方便という名の嘘を吐く事が懸命だったのだろうと後々に後悔することになる。
「じゃあ、その挨拶廻りが終わったらそこのカフェテリアで待ってて」
「は?」
どこらへんがじゃあ、なのかアスランは兎に角勝手に話を進める。やはりこれだけ大きな会社の御曹司ともなると皆、傍若無人に育って
しまうのか?と考えてしまうのは世の中の御曹司に失礼だろうか?
キラが考えている間もその御曹司はどんどんと話を進めていく。
「そうだな、二、三時間くらい時間を潰していてくれそれまでに今日の仕事を終わらせてくる」
「お、終わらせるって…」
話の早さにキラが戸惑っていると、流石に傍観していることにも我慢の限界を超えたシンはキラとの間に割って入った。
「ちょっと待てよ!何勝手に話し進めてんだよ、あんたは!!」
「あ、君は待っていなくていいからキラ一人で…」
彼がこれからキラが少しの間とはいえ、世話になる事務所の子息だとかそんなことはシンには関係ない。シンにとって重要なのはこの純真で
無防備な幼馴染を世の不埒者からいかに守るかだった。小さな頃から、そしてキラがこの仕事をしている今もそれは変わらない。
その長年キラを守り続けていたシンはこのアスランという男は危険と判断したのだ。
「だからそういう事を言ってるんじゃなくて!」
「アスラン様、二、三時間で本日の仕事を終えるのは些か無理があるかと…」
「どうしても今日中にしなければいけないもの以外は全部明日以降に引き伸ばせばいい」
「それはちょっと…」
アスランと共にいた初老の紳士もアスランの発言に流石に黙っていられなくなったのだろう、話に入ってきた。
今度はシンをそっちのけで紳士と話しこみ出す。ただ、相手が誰に変わろうと彼の自己中なマイペースさは変わることはなかった。
「何の為にいつも前倒しで仕事していると思っているんだこういう時の為だろう」
「はあ…」
「明日以降の仕事をどれだけ詰めても構わないから今日だけ何とかしてくれ」
「……わかりました……しかし、これっきりにしてくださいよ」
「考えておく」
結局最後は紳士の方が折れる形になったらしい。男性は心底深く溜息を吐いた。
仕事の話に片がついた事により殊更上機嫌で再びアスランはキラに向き直った。
「あ、あの…」
「キラ、そう言う事だから」
事の一部始終をみてしまったキラはどうしたらよいか分からず俯いてしまう。
仕事を自分の為に無理を言ってまで早く終わらせたアスランの誘いをここで無碍に断ったりしたら、その事で迷惑をかけたであろうさっきの
男性や、他の仕事の関係者に申し訳ないようなそんな気がしてしまい始めてしまっていた。
それに、ここまでしてキラとの時間を作ろうとしているという事は何か重要な用事なのかもしれない。
「だから、あんたはさっきから何俺らを無視して話を進めてるんだよ!大体、キラは挨拶廻りが終わったら俺と一緒に帰るんだからな!!」
キラがぐるぐると俯き考え始めていると、キラの性格を熟知したシンが彼女が何を考えているのか察して横槍を入れる。
すると、流石にいい加減鬱陶しくなったのかアスランはムッと眉を潜ませた。
「さっきから君はキラの何なんだ?見たところただの付き人のようだけど?」
「ただの付き人じゃねぇよ!」
「へぇ?じゃあ何だと言うんだ?」
アスランは面白いものでも見るように不敵に笑みを浮かべた。
その態度にカチンときたシンは返答に困って勢い任せに思わずとんでもない爆弾発言を紡いでしまう。
「そ、それは……その、あ、、そう!!か、彼氏だよ!!」
「え?ちょっとシン!何言って―」
幼馴染の暴走にキラも驚いて止めに入る。
しかし、シンの一度開いてしまった言葉の暴走は止まる事は出来ずにアスランに向かって高々と宣言してしまった。
「俺はキラの彼氏だっっ!!!」
■あとがき■
はい。すっっっっっっっっっっっっっっっっごくお久しぶりです。『キミとボクと約束のカケラ第10話』のお届けです。
今回はアスランvsシンがメインでした。傍若無人アスランが書けて楽しかったです。あと、シンの爆弾発言。このお話シンキラじゃないですから!
アスキラですから!!(笑)大丈夫です。管理人が生粋のアスキラ人間なのでそれ以外はありえませんから(大笑)
ここであまり説明すると今後が面白くなくなってしまいますし、言い訳めいているので控えますが取り合えずこれからも安心して見ていてください。
次回は早めに更新したいと思います。(切実に)