★キミとボクと約束のカケラ★ 第8回

















キラとシンは二人同時にその名を口にした。二人の目の前に立っていたのは桃色の髪がふんわりと可憐な少女。

「ラクス?!」

天の助けとは正にこの事。彼女の突然の登場でシンの意識は完全にラクスに持っていかれている。
キラ自身、さっきまで赤面していた事をびっくりし過ぎて忘れてしまっていた。

「どうしたの?君がこんなところまでくるなんて」
「いえ、ちょっと用事がありましたもので」

にっこりと微笑む彼女の周りには独自の雰囲気が生まれる。たまにキラは自分よりもラクスの方がこの仕事に向いているのではないかと
思うほどだ。前に一度だけラクスに言ってみた事があった。しかし、ラクスは『自分は裏方の方が生に合っている』と言って微笑していた。
そんな事ないのに、とキラは思うけど本人がやりたくないと思っている以上無理強いするのも良くないのでそれ以降その話はしていない。


「それで?どうすまないわけ?」

焦れたシンが話を先に進める事を促す。ラクスはゆっくりと頷きならが『そうでした』と手を合わせて呟くと、さっきまでとは一変して
二人に真剣な眼差しを向けた。

「あのポスターの反響で仕事の依頼が殺到してます。勿論、アスラン・ザラと共演で」
「うそ…」

ラクスの衝撃的な言葉を聞いてキラは目を瞠った。アスランとは大分打ち解けたし一緒の仕事は嫌ではない。
しかし、このときキラの心の中で思ったのは……

また、話題が『あのポスター』に戻ってしまった、だった。
だから、何故あのポスターなんだろうか?
写真なら今までに仕事で沢山撮ったし、アスランとの共演の写真もあの時他にも沢山撮った。なのに!何故あれなのかっっ!!
うがーっ!!と髪を掻き毟ってゴロゴロと転がる。(心の中で)
これからあれが外されるまでこんな羞恥に耐えなくてはいけないのかと思うと恥ずかしくて身悶えて死にそうだ。


「最早わたくしたちだけではどうにも手が回りませんのであちらのご好意に甘える事にしました」


キラがグルグルしている間にもラクスは構う事無く淡々と話を続ける。シンもキラの事は完全に放置状態だ。
グルグルしていたキラの耳に気になる単語が入ってきて、それをそのまま聞き返す。

「あちらって?」
「ザラ・コポーレーションですわ」

即答だった。いや、そんな予感はしていたんですけどね。と固まった笑いを浮かべる。
しかし、今度はシンが聞き捨てならないとばかりに食い付いてきた。

「それってザラ・コポーレーションにキラが所属するって事かよ」
「いいえ、違いますわ。一時的にキラの仕事調整のお手伝いを一緒にしていただくだけです」
「でもそれだと…」

事務所に仕事の事を任せるという事は今までのように仕事の内容確認をさせて貰えるまえに受けたりしてしまうのでは?
と、疑念が浮かぶ。その不安をすぐにさっしたラクスが安心させるように言葉を付け加えていく。

「勿論、最終的な確認はわたくしがしますし、キラにも相談します。それは今までどおりです」
「じゃあ、俺も今までどおりでいいのか?」
「ええ。ただお手伝いの人数が増えたと思ってくだされば良いのです」
「でも…」

ラクスの説明は分かった、それでもやはり気は進まなくて不安気にラクスを見つめる。
困ったように苦笑したラクスはキラの右手を取って自分の両手で包み込む。そして絆すように語り掛け始めた。

「キラ。わたくしもキラ一人のお仕事でしたらどんなに大変でも何とかして差し上げたかったのですが、今回の場合相手がいます。
そうなると、毎回相手方と連絡やスケジュール調整の打ち合わせなどをしなくてはいけなくなってしまいます」

学業との両立でただでさえ時間に余裕のない現状。その中でラクスとレイがどれ程頑張ってくれているかはキラも知っている。
この状況で今までの状態を続けようと思ったら彼女たちに更に負担がかかってしまうのだ。
ラクスはきっとキラの為に最善の方法を考えてくれたに違いない。その彼女のいう事なのだから信じても大丈夫だ。
キラは一度、瞼を閉じてゆっくり大きく深呼吸をすると視線をラクスに戻して頷いた。

「うん。わかった。ラクスの言うとおりだよ」

ありがとうございます。とラクスは柔らかい微笑みを浮かべ、その隣いるシンに視線を送る。

「シンも納得してくださいますか?」
「当のキラがいいって言うなら納得するもしないもないだろ」

ぶっきらぼうにそう答えたシン。ラクスとキラは目を合わせてクスクスと笑い合う。
暖かな空気がその場に流れる。小さな頃から三人はいつもこんな感じで過ごしてきた。
大きくなるにつれて、こんな風に接する機会も一時は減ってきていたが、キラがこの仕事を始めては知らない間に昔のような関係に戻っていた。
キラがこの仕事を続けている理由はもしかしたらその辺にあるのかもしれなかった。


「では、早速ですが明日からですので」
「は?そんなに急なのかよ」
「もしかしてラクス今日ここに来たのって」
「はい。今日はその件で先方とのお話合いで参りましたの」
「って、事後承諾かよ!!」









                                        




  ■あとがき■
はい。『キミとボクと約束のカケラ』第八回のお届けです。
今回、キラがアスランと同じ事務所になってしまいましたー!!これでいろんな方と接触できるようになります。
話を付けてからキラたちに事後承諾させるラクス様は最強です!!(笑)シンはこうやってラクスとキラののほほん空気に当てられて
尚且つラクス様の巧みな話術に騙さ……納得させられて今の彼がいるんだと思います。
最近、書きながら思うことはキラの性格が当初と大分変わってしまっているような……。
と、取り合えず次はアスラン出ます。2話分全く出ませんでしたが次は必ず!!