★キミとボクと約束のカケラ★ 第7回 















アスランとの撮影から一週間後。あれから彼と少しずつ打ち解ける事ができて、今では仕事場で会えば結構話せるようにまでなっていた。
その事についてはキラ的にも良いと思ってはいる。どんな相手であれ、親しく話せる相手が増えるのは素直に嬉しい事であったし、
アスランもあんなに苦手意識を持っていたのが不思議に感じるくらい気さくで優しい良い人だった。
しかし、アスランは自他共に認める人気モデル。自分のような新参者とは次元の違う人物である。
そんな人物が私的理由で自分なんかと同じ仕事を増やしたり、親しくしても良いのだろうか。
まだこの世界に入ったばかりのキラは業界の事情とか人間関係とかはよくわからない。その辺りの事は大体ラクスがやっていてくれるからだ。
そんなキラでもアスランの行動が普通ではないことは何となくわかる。
勿論、この前の撮影の時にアスランが言っていた事はわかっている。でも、アスランとの仲が親しくなればなるほど漠然とした不安が
キラの中で生まれてしまうのだ。この気持ちが何を意味しているか、今のキラには分かるはずもなかった。












「恥ずかしい……」

今日の最後の仕事終えて、スタジオから控え室へ向かう途中キラが俯いたままぽつりと呟いた。
心なし僅かに頬が紅潮しているように見える。その呟きにシンが歩みは止めずに振り向く。

「何が?」

自分から話を振ったのに返されると言葉にするのを躊躇って押し黙ってしまう。
まあ、そこは幼馴染と言った所かキラの性格を熟知しているシンは無理に話を進めさせようとはせず気長にキラが話し始めるのを待つ。
シンの性格上、気長に待つなんて本当はできたものではない。この相手がキラでなければすぐにキレて怒鳴り散らしているところだ。
相手がキラだからこそ耐えられる。それは、長年培ってきた幼馴染の絆があればこそなのかもしれない。
辛抱強く待ってくれている彼にキラは漸く重たい口を開いた。

「あのポスター」

そう言いながらゆっくり壁にデカデカと貼り出されているポスターを指差した。

「何を今更。そういう仕事してるんだろうお前は」

神妙な顔して話すから何事と思えば、とシンに鼻先で笑われてしまう。
そのままスタスタと行ってしまいそうになっているシンの腕をキラは慌ててぐいっと引っ張った。

「そういう事じゃなくて」

いきなりでバランスを崩して体ごとキラに倒れこみそうになったが何とか持ちこたえる。
何をするんだ、と文句を言おうとシンがキラの顔を見遣ると何やら必死に縋るような顔をしていた。
思わず言うべき言葉を詰まらせてしまったシンは、はぁー。と大げさな溜息を吐いた。

「じゃあどういう事だよ」

やっとシンが真面目に聞いてくれる態勢になったのは良かったが聞き返されてしまうと返答に困ってしまう。

「それは……」

言葉に困ってちらりと貼られているポスターを見た。アスランとキラが中央に映っている。
しかし、少し見ただけで恥ずかしくて居た堪れない気持ちになってばっと目を逸らす。

(なんでよりにもよってアレを使うわけ?しかもポスターって…)

「良く撮れてるじゃん。俺は好きだぜこのポスター」

キラの心中など知る由もないシンはポスターを見ながら己の感想を述べ始める。

「キラもいつも以上にいい表情してるし、アスラン・ザラも普段よりも柔らかい感じがするしな」

(その表情が問題なんだよーてか僕あの時こんな顔してたの?これじゃまるで―)

恋人、、、。そこまで考えた時点でキラの思考は限界を迎えた。ぼん。と音がしそうな勢いで顔に熱が集中しているのが自分でも分かる。
俯いている為とシンがポスターを見続けてるお陰で気付かれてはいないようだが早く落着かないと変に思われる。
しかし、落着こうとすればするほど気持ちは落着いてくれなくて。
仕方なくこのまま暫くの間シンがこちらを向きませんようにと神頼みに走る。

「でも今回の撮影って雑誌に載せるヤツだったよな?それが急遽、こんな馬鹿でかい宣伝ポスターになるなんて凄いよな」

やはり世の中そんなに甘くはなかった。キラの願いはあっさりと打ち砕かれてくるり、と体ごと視線をポスターからキラに戻そう振り返ろうとした。
正にその瞬間―

「凄いなんてものではすみませんわ」

不意に二人の後方から声が掛かった。






                                         




   ■あとがき■
はい。今回は少し間が短かった…かな?『キミとボクと約束のカケラ第七回』をお届けします。
今回はアスランと少し打ち解けた後のキラとシンのかけ合いです。キラがあんなにも恥ずかしがっているポスターの表情とは
前回のラストでアスランがキラに耳打ちした時のものです。何を言ったかは皆様の想像にお任せします(笑)
そのラストショットには今まで見たこともないような自分が映っていた。と言う事なのです。(ここで補足ってどうよ?)
私にもう少し画力があればイラストにすることもありだったのでしょうが、、、自分のイメージが崩れそうなので止めておきます(苦笑)
さて、次回は少し動きがあります。最後に出てきたあの方が何かした模様。。。