逢いにおいでよG



「― で、話とはなんだ?キラを待たせてるんだ、先程も言ったが手短に……」
「わかってやってるだろ、お前。」

適当な理由をつけてキラの部屋から出て早々アスランもイザークもガラリと態度を変える。
キラの前では優しげなオーラ出しまくりのアスランは冷ややかな目でイザークを睨み、イザークもまた然り。
言葉は足りないがキラに対してはいつものトゲトゲしい雰囲気がどことなく柔らかなものに変わっているのだが
部屋から出た途端、いつもの…いや、それ以上の冷めた目つきでアスランを見る。

「ふん、先輩に対してお前呼ばわりか。今年の一年は礼儀がなってないな」
「話をすり返るなっ イザーク、お前確か言ったよな『譲る』と。」

先輩面するイザークの言葉を遮るアスラン。ここが学園の寮で彼が先輩であることも忘れ声を荒げる。

そう、イザークは確かにアスランに言ったのだ。『この場は譲る』と。
それを聞いた者なら自分じゃなくてもきっと『キラの事はお前に任せる』と受け取るのではないだろうか?
否、受け取るに決まっている。実際、彼はその後その場から姿を消したのだから。

「ああ。だから譲ってやったじゃないか、30分も。」
「なっ」
「それ以上キラと二人でいようなどとは己の身の程を知れっっ」

イザークの余りにも勝手な言い分にアスランは呆れてしまい唖然としてしまう。
そんなアスランを他所にイザークの熱弁は続く。

「それにさっきのあのキラとの距離はなんだ!近づき過ぎだっキラの半径1m以内には近寄らないという条件だっただろうが!!」

そこまで言われてハッと正気に戻ったアスラン。
イザークのあんまりな言い分に今日一日の出来事についてのいろいろな感情が彼の中で沸々と湧き上がってきた。
イザークが居なくなる事で悲しむキラを慰め、少しずつキラとの作り上げてきたキラとの関係性。
それを突然帰ってきて混乱させただけには留まらず、自分とキラとの進展の邪魔までする始末。この所業を簡単に許せるだろうか?
否、許せる訳がない。そう結論付けた瞬間アスランの中で何かがキレた。

「1mも離れていたらキラの様子なんてわからないじゃないですか。そんな当たり前な事もわからないんですか?」

黙っていたアスランが突然反論し始めたかと思ったら突然わざとらしく使われた敬語。イザークはあからさまに眉間に皺を寄せた。
しかも、それに加えてアスランがイザークを洟で笑う仕草をしたものだからイザークの怒りに拍車をかけた。

「き、きさま…やはりお前にキラを任せる事はできないようだな」
「なんでキラとの事を先輩に了承を得なくてはならないですか?」

感情のままに声を荒げて話すイザークとは対照的にアスランはあくまで冷静に言葉は敬語のまま淡々と話す。
それが更にイザークの癇に障る。という悪循環だ。

「キラは俺にとって大事な幼馴染だ。昔から大事に大事に守ってきたのに久しぶりに帰ってきたら悪い虫が付きそうになっていたなら
 それを黙って見ていられる訳がないだろう?」
「それはあなたがキラの元を去る前までの話でしょう?その後の6年間は俺がキラを守ってきたんです
 今更あなたに出る幕はないんですよ、先輩。」
だから、自分とキラの邪魔はしてくれるな。とそんな意味を込めて。
アスランが言わんとしてる事をイザークも感じとったのだろう彼の眉間の皺は更に深くなる。
イザークもキラの気持ちを知っている以上、キラが望むのならばキラの好きにさせてやりたいと思っている。
しかし、アスランを前にしてしまうとどうしても彼の好きなように事が運ばれるのは癪なのだ。
アスランが望む事は平行してキラが望む事に繋がる。それはわかっているのだが…頭ではわかっていても感情は上手くコントロールできない。

「そのお前が悪い虫だと俺が判断したんだ。こうなれば徹底的にお前の邪魔をしてやるからな、肝に命じておけっっ」

どうしても嫌味を言ってしまう。心にもない事……と言う訳でもないが、そんな事言うつもりは見えないかもしれないがイザークにはないのだ。

「例えあなたがどんなに妨害しようとも俺達の絆を断ち切る事なんてできませんよ、絶対に」

そして、売り言葉に買い言葉。イザークが何かを言えばアスランが更に返してくる。
全く似ていないようで実はとても似たもの同士なのかもしれないこの二人が素直にお互いを認め合うなんて日はこないのかもしれない。






                                        




  ◆あとがき◆
はい。お久しぶりです。『逢いにおいでよG』をお届けします。
今回はキラさんの出番なしで、アスvsイザでお送りしました。この二人のバトルは面白いですよね。見ている分には(笑)
きっと現場にいると大変なんでしょうけど。
今回は久しぶりに文章を書いたのでとっても難産でした。
あと、一、二回で終われる……ようにがんばります。今回はかなり間が開いたので次は間が開かないようにUPしたいです。