「なっ?!」
突然上がった声に驚きアスランが振り向くと、今まですっかり存在を忘れていたイザークがアスランを指さして
わなわなと震えている姿だった。その様子にキラはベットの中からクスリと微笑する。
「ジュール先輩は思い出したみたいだね」
未だアスランを指さしたままの状態で保健室だと言う事も忘れ、イザークは再び大声をあげた。
「あの頃の事は俺の人生の中でも汚点中の汚点だっ」
そう吐き捨てるように言い放つと忌々しげに過去の出来事を話し始めた。
「ある日突然俺の前に現れたかと思えば事ある事に因縁をつけて来て、その上勝ち逃げするようにとっとと姿を消しやがった
年下の癖にっ」
うがーっとその時の記憶を掘り起こしている内にその時の感情まで甦ってきたイザークはその場で地団駄を踏む。
「うーん…かなりジュール先輩的な脚色が加えられてるけど…」
騒がしいイザークを見つめながらキラは苦笑を浮かべる。
『くっそー!!アスランっもう一度勝負だあーーー!!!』
『いやだ。どうせまた僕が勝つし』
『何をー!!年下の癖に生意気だぞ!!!!』
『年齢の差なんて関係ない。それに一つだけじゃないか』
『き、きさまぁぁぁー!!!』
『うるさい、いちいち叫ばなきゃ話せないのか』
『もー!!アスランもイザークもどうして仲良くできないの?!僕、喧嘩する人嫌いだよ?』
『何言ってるんだキラ、喧嘩する程仲かが良いって言うじゃないか。ほらっ』
『貴様何をっ…もがっ』
『僕はイザークの事、キラの次くらいに好きなんだから(棒読み)』
『ホント?』
『ホント、ホント。だから嫌いだなんて言わないで』
『うんっ二人とも大好きっっ』
「…………」
騒ぎ続けるイザークにそれを少し困ったような、分かっているのか、いないのかそんな様子で見守るキラ。
その光景には見覚えがある気がした。薄ぼんやりと思い出し始めた記憶の糸をゆっくりと手繰り寄せていくと幼かった頃の記憶が
少しづつ甦ってきた。自分が引っ越してきたばかりの頃、キラと自分ともう一人もの凄く騒がしい人物がいた…気がする。
一目見て気に入ったキラと自分の間にいつも割って入ってくるもう一人。
キラもそいつの事が大好きでそれが気に入らなくて気性の激しい相手にちょっかいを掛けては勝負事に発展させて
負かして気を晴らしていた。そいつも結構優秀な奴だったから負ける事も時々だがあったりもしたが…
その時のあいつが…こいつ?
いつの間にか考え込んでいたのか腕を組んで俯く体勢になっていたアスランは目線だけをちらっとイザークの方に向けた。
よく見ればこんな感じの奴だったかも。とは思うもののその頃には既にアスランの視界はキラ中心でその他のモノは二の次だったので
正直確かな事は分からない。でも、キラがそう言うのならそういう事なのだろうとそう結論付けた。
「思い出した?」
ずっと考え込んでいたアスランがいつの間にか自分達を見つめている事に気付いたキラはふんわりと微笑む。
「ああ、何となく」
「何となくだと?俺様はきっちりばっちり思い出してやったと言うのにっ」
「こんな感じの奴かいたな、と。」
「相変わらず人の話を聞かない、すかした嫌な奴だなお前はっ」
「その言葉そっくりそのままお返ししますよ、先輩」
まるであの頃の再現のような二人のやり取り。キラはクスクスと笑い出す。
笑い続けるキラを見てアスランとイザークはバツの悪そうな顔をしてお互い視線をそらす。
二人が話す事を止めた事により暫くの間キラの笑い声だけが静かな保健室に小さく響いていた。
しかし、突然その笑い声がぴたりと止んだ。
「キラ?」
「おい、どうかしたのか?」
不信に思った二人がキラの潜り込んでいるベットを覗き込むとキラは眠っているようだった。
疲れて眠ってしまったのかと一瞬思ったが眠るキラの顔が僅かに辛そうな様子だったのでアスランはそっとキラの額に手を当ててみた。
「!!」
アスランは思わず目を瞠った。キラの額は火の様に熱くなっていたのだ。
◆あとがき◆
はい。『逢いにおいでよD』をおおくりしました。てか、終わらなかった…(汗)
おかしい…今回で終わる予定だったのに……やっぱりノリで書くのは駄目ですね、何事も計画性を持って取り組まないと。
教訓です。今回はアスランとイザークの過去と現在のやり取りみたいな話になってしまいました。
幼い頃のアスラン、嫌な子供だな…と思いながら書きました(笑)だって、好きな子が慕っている兄的存在の人に嫉妬して
相手の性格を利用して挑発して勝負事に発展させて負かしてストレス発散。嫌な子供だ(大笑)
さて、次…も終わらないかもですが終われるように努力します。取り合えずキラさん、熱が上がってさー大変です(笑)
喋りが少なかったのはそこにも原因があったのですよ、実は。(後付の言い訳ではありません)