「 結局なーんも思いつかないままこの日を迎えちまったな 」

 「 お前、誰のせいだと… 」

 「 何、俺のせいとでも言いたげだな 」

 「 事実そうだろ!!昨日、お前があれからあれこれ関係ない話をしてくるから時間がなくなったんだろうが!! 」

 「 あれは不可抗力だろう?誰だってあんな話聞かされれば詳しく知りたくなるってもんだろう 」

ラスティの言う、あの話とはアスランの想い人である『キラ』との関係についてである。
一緒に暮らしているってだけでも驚きだったラスティだったがキラの性別が男と言う事に更に驚いたのだ。
その後はアスランの作戦会議などもう完全に忘れて、あれこれとキラとアスランの生活ぶりやらを聞いてきたのだった。


 「 やっぱり、お前に相談したのは失敗だった 」

 「 なんだよ、失礼なヤツだなっそれにもう当日になっちまったんだし、それにキラちゃんにもそれらしい素振りはないんだろ?」

 「 ああ 」

 「 じゃあもう、当たって砕けるしかないだろ 」

にんまり笑ってアスランの肩を叩く友人に人事だと思ってっとじとっと睨む。

 「 砕ける気はないけどな 」

ぼそっと呟いたアスランの瞳は決意を秘めていた。
それもこれも全てキラとの関係を進展させる為。これまでより少しでいいからキラとの距離を縮めたい…それがアスランの切実な願いだった。



    世界中の好きよりもたったひとつのありがとう 2    Vol. 4


 「 で?何でお前までここにいるんだ?」

授業を終え、帰路につくアスランと共にいるラスティを恨めしげに見ながら言った。
そんなアスランにラスティはにんまり笑みを浮かべながら答える。

 「 お前がここまで夢中になる子ってどんな子かやっぱ気になるし、一目見ておこうと思ってさ 」

ラスティの言葉にアスランの眉間の皺が深くなる。

 「 見なくていい!!さあ帰れ、今帰れっ!!」

凄い剣幕で詰め寄るアスランに流石のラスティもたじろいだが、一方でアスランにここまでさせる『キラ』への好奇心は上がっていた。
普段、冷静沈着、品行方正、優等生を絵に表したようなアスラン。
そのアスランがここまで形振り構わず打ち込む程の子とはどんな子なのか?
しかもそれが男というのだから見てみたいと思ってしまうのも仕方の無い事なのかもしれない。

 「 いいじゃないか、減るもんじゃなし 」
 「 減る、キラに関して言えば必ず減る!!」

きっぱりと断言するアスランを半ば呆れ気味に「お前なー」とラスティが呟いた時だった、、、



 「 あれ?アスラン??」

不意に掛かった声に振り向くとそこには今の二人の話題の人であるキラが立っていた。
どうやらラスティを追い返すのに夢中になっている間にキラの高校の側まで来てしまっていたらしい。

 「 キラ!」

キラと呼ばれた少年をじっと見詰めたまま固まるラスティ。
はーっと深く溜息を吐きつつ、「だから見せたくなかったんだ」と一人呟く。
キラはきょとんとした様子で小首を傾げて二人を見ている。ただそれだけなのだが、、、
見慣れているアスランでも可愛らしくて抱きしめたくなる衝動を抑えるのに必死なのに初めてのラスティは…
案の定、硬直したまま動かなくなっていた。

 「 アスラン、この人… 」

 「 ああ、キラは気にしなくていいから 」

 「 でも… 」

気持ちの優しいキラは先刻からずっと動かないラスティが心配でならないようだった。
キラの性格は分かっているものの、やはり恋する者としては内心面白くなくてむっとする。

 「 彼は俺の学校の同級生だよ。極度の上がり症で初対面の人の前だとこうなってしまうんだ 」

 「 …そうなの?」

一体、どこから持ってきたのかアスランはまるっきり出たら目なラスティの設定を作り上げていく。
未だ固まったままのラスティがそれを止めることが出来る筈もなく…

 「 あ、あの。そんなに緊張しなくてもいいんですよ?僕、キラ・ヤマトって言います 」

アスランの出たら目な話を真に受けたキラがラスティに近寄りペコリとお辞儀する。

 「 僕、アスランの幼馴染で同じ家に住んでいるので良かったらこれから仲良くして下さいねv 」

ふんわりと微笑まれてラスティは更に顔を紅くし固まる。
そしてアスランもキラの花のような笑顔を目の当たりにして僅かに顔を紅潮させる。

 「 き、キラ、彼は俺たちが近くにいると彼が動けないみたいだから離れてあげないと 」

 「 で、でも…このまま置いていくなくて… 」

 「 俺たちがこのままいると彼は動けないままなんだから、ね、キラ。」

アスラン的には内心このまま二人っきりになりたくて必死なのだがそれを感ずかれないように平静を装い、優しく囁く。
キラもこのままではどうしようもないと分かったのか渋々だが頷く。

 「 じゃあ、キラ行こうか 」

 「 うん… 」

アスランに絆されて歩き始めたキラはもう一度くるっと振り返る。

 「 あの、今度は家に遊びに来てくださいね。僕、ちゃんと御もてなししますからー 」

 「 き、キラ?」

 「 だってアスランのお友達なら僕も仲良くしたいじゃない?」

にっこり笑うキラにアスランは言葉を無くす。あーもうっと呟きながら頭を掻き揚げる。
やっぱりキラには敵わないな…と一人ごちてから「帰ろうか」と微笑みをむける。


 「 うん!! 」






                           ごめんなさい。。。長くなりそうなのでここで一端切ります。