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       生まれてすぐの楓はとても弱々しかった。 
授乳しようとしても、吸いつく力が弱く、すぐに口を離してしまう。 
せっかくうまく飲み始めても、すぐに疲れて飲みながら寝てしまう。 
泣き声も「オギャー」ではなく「ふぇぇ〜」となんとも情けない。 
手足もまだしわしわで、直接持つと折れてしまいそうなか細さだった。 
 
      しかし、お世話をしてくれる看護師さんがみな口を揃えて 
「She is strong.」と言う。いったいどこが? 
 
と思っていたが、徐々にわかってきた。 
ある日、縦抱きの状態から下におろそうとしたら、私の髪の毛を 
ガシッと握って離そうとしない。赤ちゃんには生まれつき、 
手のひらに触るとぎゅーっと握り返してくる「把握反射」があるが、 
その粋を超え、絶対に下ろされまいという強い意志が感じられる。 
 
足の力も妙に強い。かけておいたブランケットは蹴ってはずして 
しまうし、座って抱っこしているとドスンバスンとキックしてくる。 
両脇を支えて持ち上げると、足をぴーんと伸ばして立とうとする。 
      というかあとは首さえ据われば一人で立ちそうな勢いだ。 
       
        
      いっこく堂 
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