思うこと 第127話           2006年8月22日 記

『医療界のゴーン』武弘道先生のその後の活躍

『リーダーのあるべき姿』の手本として、武 弘道先生を『思うこと 第32話』で紹介したが、今回、その後の先生の活躍を知り、ここに紹介する。
教えてくれたのは、国立療養所南九州病院の福永秀敏院長で、福永院長が院内メールで職員に毎日送っているメッセージの一つを私にも送ってくれたもので、その文を先生の許可をもらえたのでここに紹介する。(ちなみに、福永秀敏院長こそは、国立病院長の中の最高の院長と言われ続けている人物である。)

『医療界のゴーン』
 先日、武先生を含めて3人の方と渋谷のホテルの最上階で食事する機会があった。武先生は鹿児島市、埼玉県、川崎市の3つの自治体の病院事業管理者を歴任され、優れた手腕でいずれの病院の財政運営の黒字化をはたしたことでも有名で、最近発売された週刊朝日(8月11日号)では、「医療界のゴーン」と名づけられている。
 私は武先生とは郷里が同じで(先日のお話しによると、実際に頴娃町で過ごされたのは小学から中学の6年間であるが、開聞岳を毎日眺められたことがその後の人間形成に大きな影響をもたらしたと述懐されていた。確かにあのような山を見て毎朝登校すると、知らず知らずに気持をおおらかにスケールも大きくなっていくのではないか)、また武先生と甲南高校で同級生だった剣道の会田師範(元加治木養護学校長)との関係もあって、私が院長に就任した時の「快打会」主催の祝賀会にも出席して頂いて、お祝いの言葉なども頂戴した。
 さて食事の後帰り際、武先生が渋谷駅構内のコンビニで「週刊朝日」を買ってくれたが、既に新しい号に代わっていた(新しい号は翌週の月曜日発売なのに、東京では既に土曜日に発売されている)が、翌日空港で武先生の記事の載っている古い「週刊朝日」を求めることができた。
 週刊誌のタイトルらしく「病院はキャバレー論」と刺激的な見出しとなっているが、言わんとするところは「病院は企業である。やり方によってはどんどん発展も凋落もしていく。お客様に来ていただいて、一定の時間を過ごし、満足して帰ってもらわなければならない点で、キャバレーやデパートと全く同じである」と。また改革の目玉として、看護師の副院長を提案している。「看護師が副院長になると、医師のように出身の診療科にとらわれないから風通しが良くなる。その結果、内科に入院希望の患者が来ても内科のベッドが満床だったら断っていたのを、外科のベッドが空いていれば回せるようになり、空きベッド問題が解消した」とも述べているが、これに関しては現在は多くの病院で、既に「空いたベッド」を有効に利用している。
 ただこの世界は数字で示される実績でその評価は決まることになるが、川崎市立病院(川崎・井田)純損益の年度別推移をみると、確かに武先生の手腕は凄いと思う。1998年から2004年まで、毎年8億円から16億円続いた赤字が、2005年には7.1億円の黒字となっている。
 具体的な増収策は診察時間を早めたこと、川崎病院に救命救急センターをつくり、井田病院では土曜日の外来を始めた事により患者数が増えたのだという。無駄を省くことに関しては、特殊勤務手当ての廃止が大きかったようだ。
 いずれにせよ、「病院改革で大事なのは職員が意識を変え、無駄を省き、患者本意の医療をすることです。これで患者さんが戻り、経営は改善される」ということに尽きるとか。
 また武先生は、日本エッセイスト・クラブ選の年間ベスト・エッセイ集に3度も入選するという書き手でもある。
 医師確保や意識改革など、語られない苦労も多いのだろうと推察するが、鹿児島の、そして頴娃町の名前を日本全国に広めて欲しい。
(福永秀敏 記)
   

 以上が福永先生の文で、私は福永先生にお願いして、週刊朝日のそのページを送ってもらい昨日それを手にしたので、タイトルページを下に載せる。

 
 私は、この中の、黄色のマーカーをつけた武先生の言葉に感動した。 すなわち、
『「利害損得で物ごとを考えてはならない」が父の信条で、長男の武さんはそれを精神的なバックボーンにしてきた。』と書いてある。 この『身に私を構えない』武先生の姿勢こそは、武先生のもとに皆が心を一つにしてこのような成果を出せたゆえんといえる。 この、『身に私を構えぬ』ことがリーダーにとって極めて大切なことについては、『思うこと 第103話』『思うこと 125話』でも述べたが、実は福永先生も同じ姿勢のリーダーである。