個人的出来事 第80話     2007年6月14日 記

私の三味線、その後(その2)
−ついに買った特注品三味線!−


 『個人的出来事 第76話』で、私は“本物の音痴”ゆえに人の5倍練習しても人並みの上達はみこめないこと、だからこそ困難に挑戦する喜びは格別のものがあると述べた。音痴が三味線を練習することがどれほど大変かということは音痴にしかわからない。しかし、長年連れ添ってきた家内には、ある程度は私の苦労が推察できるようである。まず、私が自宅で練習始めた途端、同情の眼差しで私を見て、「きっといつの日にか、音程が合ってくると思いますよ。」と励ましてくれた。しかし、声をだして歌詞の練習をしたとたん、隣の部屋でテレビを見ていた家内は、笑いこげて、もう笑いが止まらず、ついにはお腹が痛くなったという。私は、家内に、両耳にかぶさるイヤホンを渡し、これだと聴かずにすむからと、手渡した。そうこうする内に、家内の耳も私の調子はずれの音程に免疫が出来て、イヤホンなしでテレビをみれるようになってくれた。私は、家内に協力してもらって、音程が狂ったと感じた途端に合図をしてくれるよう頼んだ。その結果、実に頻繁に音程がくるっていることがわかった。私の耳ではその狂いがわからないのに家内にはわかるのである。この練習を繰り返す内に、開放弦では全く音程が狂わないが、指で押さえて弾くときに音程が狂うという、考えてみれば当たり前のことがわかった。私は、押すべきポイントから15mmはずれても狂いが判定できないのに、家内はわずか数ミリはずれてもそれがわかるという恐るべき能力を持っていた。私が「すごい能力だ」と感嘆したところ、「実は私は普通で、貴方が並外れているだけですよ。」と言う。なるほど、と納得した。家内は言った、「人並みはずれた音痴の貴方が、三味線に必死で挑戦する姿は、頭がさがるわ」、と。「豚も褒められれば(煽てりゃ)木に登る」というような言葉があったと思うが、私も、そのエールに力を得て、頑張った。しかし、なかなか、うまくゆかなかった。三味線は広瀬先生からゆずってもらった名器だから、上達しない理由が楽器のせいではないことは明らかであった。しかし、ふと、『人の褌で相撲をとっているからうまくならないのではないか、やはり、自分で、身銭を切ってこそ三味線の神様も微笑んでくれるのではなかろうか』との思いが浮かんだ。そう考えた途端、本当にそうかもしれないと思えた。私は我が家の財務大臣の家内にこの思いを語った。『貴方の涙ぐましい姿をみていると、気に入ったものがあったらぜひ買ってください』との返事に、『よっし、ネット販売で調べて、いい三味線を買うぞ』と決心した。片倉先生に信頼できるネット販売店を教えてもらって、検索した。そして、気に入った特注品三味線にたどりつき(下写真)、片倉先生に携帯電話で相談し、これはいい品物、とのお墨付きをもらい、注文した。実は、ネットに掲示されていたその三味線の形と姿と顔つきに私は一目ぼれしたのであった。

この三味線は、とうとう、昨日、我が家に届いた。思ったとおりの美しい姿で、音色は夢のようにいい音色と感じた! 明日は、奄美市(旧名瀬市)に講演に行くことになっており、その講演会終了後、午後9時から第2回目の坂元先生の三味線教室が予定されているので、そこで、坂元先生や広瀬先生にもこの三味線をお見せできることが、楽しみである。