オトギバナシハツヅク

分かつもの




 これはさすがにヤバイ。
アーク少年はため息をついた。
生贄になる運命を逃れるため、中央市の近くのスラムの空き家にいたのだが。
「僕が泊まったところ、全部燃やされてる・・・・。」
まずい、このままでは本当に殺される。
こうなったら、皇帝と直談判してみるしかないだろう。
気が進まないが。

 アークは中央市を歩いていた。
目的はもちろん皇帝に会うためだ。
アークが歩いていると大勢の兵士に囲まれた。
このくらいの兵が集まってくると、さすがに通行人は近くの建物に避難した。
全員銃を持っている。
「止まれ!」
そんなこと言われても前後左右囲まれているのに動くも動かないもないだろう。
「隊長、私と戦わせてください。」
そう言って出てきたのは、ディトナだった。
「昔、あの少年は私の師匠でした。できれば、この手で。」
「よかろう。」
ディトナがアークの前まで歩いてきた。
「アークが国家反逆を起こすなんて信じられなかった。でも、今現実にアークは国家を潰す気だ。」
いや、何もそこまですごい話じゃないんだけど。
アークはそう思ったが言う前にディトナの剣が振り下ろされる。
髪の毛が数本切れた。
アークも短剣を取る。
きいん
高い音がした。
アークとディトナの剣が互いにいがみあっている。
それから両者は距離をとる。
はっきり言って、ディトナとアークが魔法戦になったら、アークが確実に勝つ。
わかっているのかディトナも魔法戦は挑まない。
次に動いたのはアークだった。
ディトナの懐に入り込み腹を切る。
生暖かい血がアークや道に振りまかれる。
ディトナは傷など負っていないかのように、剣を振るう。
アークも対抗して剣を振る。
近距離に入ってしまえば、ディトナにいくらでもダメージを与えることが出来る。
もちろんディトナもそれをわかっているので遠距離用に剣を振るっている。
傷が効いたのか、ディトナの動きが鈍る。
その隙にアークはディトナに至近距離まで近付き首を切った。
腹のときとは違ってすさまじい血が噴出す。
アークは上半身をほとんどを血の赤に染めていた。

「ええい、かかれ!」
隊長らしき人物が命令すると、人造人間が襲い掛かってくる。
ドーナツ状にアークは放電する魔法をかけた。
すさまじい音がして近距離にいた兵のほとんどが焼け死ぬ。
ディトナのことで泣いたり落ち込んだりする暇はない。
正確には誰もそのチャンスをくれない。
誰のだかわからない死体を踏みながら。
ひたすら魔法を発効させていく。
どんどん人造人間が死んでゆく。
立っているのがアーク一人になったとき、彼は血みどろの服ですたすたと皇宮に向かった。
END






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*atogaki*
ラスト一歩手前です。
ディトナの死を悼む暇もありません。
ご冥福をお祈りいたします。