オトギバナシハコレデサイゴ
アークはやっと皇宮に着いた。
門には兵士がいたがそれも殺した。
フローリングの床を歩く。
アークが血みどろの服装をしているせいか、女官や文官はアークに近付こうとはしなかった。
そして、最後の扉をアークは開けた。
その部屋には王冠を頭につけた皇帝しかいなかった。
アークはこっそり魔法を唱えて、いま自分が開けた扉から誰も入らないようにする。
「初めまして、父さん。」
アーガス帝も、
「初めまして、わが息子よ。」
と言った。
雰囲気は永久凍土のように何の動作も許されそうにないほどだ。
「聞きたいことがある。」
アークが口を開いた。
「いいだろう、聞いてやる、わが息子よ。」
「あんたは1003年ほど皇帝をやってますけど、なぜそんなに皇帝になっている?」
「私が前任の皇帝から頼まれた。この大陸をどうしても存続しろと。」
「それなら別にあんたが在位している理由にはならない。」
「私以外のものには出来ない仕事だから、だ。王冠が全てを教えてくれる。」
「死体を使ってまで?」
「もう、それしか動力源はない。あと、必要なのは、お前という生贄だ。」
「悪いけど、全ての発言に同意はしない。あんたがやったことは超貧乏人と金持ちを分割しただけだ!」
アークはリラックスしているかのようにしている。
「僕は生贄にはならない。僕にはまだ未来がある。みんなに教えてもらったことがある。ここまできて死ぬわけにはいかない。」
アーガス帝は立ち上がった。
そのとき頭に乗っかっていた王冠が宙を浮いた。
既視感があるがどうでもいいことだ。
「生かさず殺さず、お前を生贄として捧げてやる。」
皇帝から仕掛けてくる。
氷の矢だ。
「エクスプロード!」
アークが魔術でカーペットごと炎で氷の矢を溶かす。
ヴヴン
アークも空間魔法をぶつける。
ぱあん
アーガス帝は出入り口の側に移動し、まるで水風船でも割るかようにアークの空間魔法を壊した。
ならば。
アークは炎と酸性水を一気に出した。
どちらかの対策に追われて片方はないがしろになるはずだ。
しかし、アーガス帝は人知を超えた速さでどちらも避けた。
逆に、アークの側に反射してくる。
アークはあっという間にその二つを消し、吹雪を発効させた。
アーガス帝は叫んだ。
「全てよ、消えよ!」
吹雪は全く何のダメージも与えないまま消された。
その頃には出入り口に人が集まっていた。
皇帝対皇子。
何が起こるかわからない。
これで・・・これで最後だ。
卒業するための本にすら書かなかった超難易度の魔法を使う。
アークは自分も動き魔法を避けつつ、皇帝の方をじっと見つめて口を動かしていた。
「これだ!」
アークが空間魔法を複数発効させた。
全てが刺さるようにアーガス帝に襲い掛かる。
今度は効いたようだ体中に深い傷ができる。
アーガス帝は倒れた。
アークは玉座に座った。
そのときに入り口にかけた魔法を解く。
「初めまして、アーク帝さま。」
気付くと王冠が自分の頭にのっかっていた。
見える。
ティカーノ市の外がどうなっているのか。
たくさんの骸骨やミイラ、風化して砂になった死体。
ここが動力源なのだ。
城が見える。
かつて一度見たことのある。
あれはこういう意味だったのか。
「そこにいる死に底ないを生贄にしろ。早く!」
形勢逆転。
アーガスは全ての栄光を追われ、生贄になることになった。
「アーク帝様、ご命令を。」
おそらくもっとも地位が高いであろう初老の男性がひざまずいた。
「この大陸の高度を下げろ。少しづつだ。死体と生贄でしか支えられない大陸などいらない。」
部下は全員目を丸くしていた。
「し、しかし、このまま地上に落ちてしまえば我々の誇りが」
「そんなこと言ってる場合じゃない。そんなくだらない誇りなど捨てろ。地上に詳しい者たちに協力していただいて地上のどこに住めばいいか、パンフレットを作り全国民に配れ。」
「りょ、了解しました。」
部下は全員クモの子を散らすように走っていった。
そう、これでいい。
全ては終わろうとしている。
アークは走馬灯が走るようにいろいろなことを思い出していた。
小さな頃、大学に行っていた頃、全てを。
これで、話は全て終わりだ。
これからはこの大陸も、友達も、自分も変わってゆく。
不動のものなどない。
そして、アークはひとすじの涙を流した。
ただの身勝手な涙。
ずっと友達でいてくれてありがとう。
Fin
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*atogaki*
誰が何を言おうとエンディングです。
伏線ほとんど回収できませんでした、ごめんなさい!