天空大陸上の都市ティカーノ。
そこにあるアーガスティン国立大学の学生食堂に少年はいた。
「フリスク、魔術学の補習どうだった?」
少年が隣に座ってランチメニューを食べている大柄な青年に尋ねる。
「・・・ぎりぎりついていけたぜ。」
フリスクは食べながら話した。
補習でもぎりぎりだったのか。
そう思うと、アークはげんなりした。
テスト前にさんざん勉強やら実習やら教えたのに・・・。
それでもなおついていけないのか。
「そーいや、ディトナ、前から訓練がきついとか言ってたが大丈夫か?」
フリスクはアークとは別の方向に座っている無表情な青年に言った。
無表情な青年は餃子を食べる手を休めた。
「厳しいけれど、必要なことだから。アーク、白魔女のテレビ版録画したけどいる?」
アークはラーメンを食べ終わって、あんまりおいしくないつゆを飲んでいた。
「いる!ディトナも訓練厳しいのにありがとう。そういや、白魔女の原作がやっと重版かかったけど、また今度買いに行く?」
「行く。アニメの白魔女もおもしろいから原作にも興味がある。」
自分を挟んで会話されたフリスクは、両隣の人物を見比べた。
「いいかげん、マニアだな、お前らも。俺はドードーの秘密しか見てないぞ。」
「え?ドードーの秘密?実写版のドラマの?」
「フリスク、原作貸す?」
両隣の人物が素直に反応した。
あきらかにマニアの反応だが。
「じゃあ、休みに入ったら原作貸してくれ。休みは明日からだけどな。」
「わかった。家の門番さんに渡しておく。」
ディトナはそう言ってから自分の腕時計で時間を見た。
「そろそろ最後の授業だから行く。」
そう言われてフリスクも気付いたらしく、
「そうだ、俺もだ。」
と席を立つ。
「じゃ、僕は帰ろうかな。」
アークもそう言って席を立った。
「なんだ、お前、授業もうないのか。」
フリスクは不思議そうにしている。
「うん、学食の方が安いし一人で食べるのも味気ないしね。」
そう言うと納得したらしく、フリスクはそうか、と言いながら食器を片付ける。
「じゃ、また白魔女はメール送るよ。」
「わかった。」
アークは二人と別れると、寮の自分の部屋に向かった。
10分しないうちにアークは道に迷っていた。
大学の敷地に寮があるのは確かだが、歩いて15分のはずなのに全然違う位置にいる気がする。
そもそもアークは、「三番目の道で曲がってからまっすぐ」と言われても一番目の道で曲がって迷子になるタイプなので仕方ないのかもしれない。
瞬間移動の魔法を使えば寮の自分の部屋にあっという間に着くのだが、歩くことによってちょっとでも方向感覚が身につくかもしれないといつもぎりぎりまで歩いているのだが。
授業時間だからか、人はあまり多くない。
まあ、ゆっくり歩くさ。
そう思いながら歩いていく。
レポートも終わったし、明日から本格的に休みだ。
テレビゲームでも買ってこようか。
学力を落とすわけにはいかないのでちょっとは勉強しなければならないが、たまには羽を伸ばして遊びたい。
どんなゲームが初心者向けでおもしろいのだろう。
フリスクやフリードリヒはたぶんやったことがあるだろうし、聞いてみようか。
さて、現実逃避もここらでやめるか。
アークは立ち止まった。
それと同時に周囲を歩いていた男子学生にそっくりな人々も立ち止まる。
「で、何でそういうことを仕掛けてくるのかな?」
アークが尋ねると男たちは襲い掛かってきた。
気勢を制するためにアークはいきなり魔法を使った。
男のうち一人が白い炎に包まれて灰も残さず焼け死ぬ。
レイピアを持って襲い掛かってきた男の攻撃は手持ちの短剣で受け止める。
フリスクの攻撃より遥かに感触が軽い。
比べる相手が間違っているかもしれない。
アークはレイピアの攻撃を跳ね返すと首を傾げた。
何か軽いものがさっき首があった位置を通り過ぎていく。
たぶん、暗殺によく使われる針だ。
その後、アークはすぐ目の前の男の腹を短剣で刺せるだけ刺す。
嫌な感触がした。
短剣を抜くと大量の血が出た。
抜いた短剣を斜め後ろに投げる。
短剣は後ろにいた男の首筋に刺さった。
男が倒れる。
状況は不利、と感じたのか他の刺客は逃げ出した。
アークはそのうちの一人に針を投げた。
うまく刺さったらしく男は倒れた。
そして、アークは針が刺さった男に尋ねた。
「誰が君たちにこんなことを頼んだの?」
男はフンと言わんばかりの表情を見せた。
アークは投げなかったもう一本の短剣を男の首筋に当てた。
「ねえ、教えてよ、誰に頼まれたの?」
「エフラム=フリムだ!だ、だから助けてくれ!」
エフラム=フリム、移民祭の日に帝宮の庭で見かけた男だ。
殺しておくべきだったかもしれない。
「わかった。じゃ今から大学に連絡するから。」
男は嘘つき、と言わんばかりの表情を見せた。
大学に連絡されればもちろん逮捕される。
アークは携帯電話で大学に連絡を入れると、その場を立ち去った。
END
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*atogaki*
このあたりから怪しくなってまいります。
ネーミングも相変わらず安易でGOGOなのです。
次の話でさらに暗い方向へまいります。