法律行為に関わること
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●目次
1私的自治に求められるもの
2法律行為には制限が伴う
3意思の不存在
4判断する能力
5確実に契約を履行するために欠かせないこと
6図解
法律行為に関わること
個々の用語を並べても民法のアウトラインがつかめません。★法律行為の説明のわかりにくさは別に触れています。
意思表示と判断する能力(権利能力・行為能力・受領能力)があって、公正な法律行為ができるとわたしは思います。
それとともに、根や幹となるものをみきわめ、枝や葉に触れなければ枝葉末節にはしるだけの屁理屈になります。
そこで、基本となるものと「確実に契約を実行するために欠かせない付随事項」を整理しておきます。
1 私的自治に求められるもの
民法は「私的自治」と呼ばれる法律関係です。
社会生活を行う人間どうしが円満に生活するための規律であり、そのための権利と義務が定められています。
個人の自由を貫けば必ず他人に影響を及ぼすから調整する必要があるわけです。
また、民法は「相隣関係」という隣近所の付き合いや家族関係のほかに財産に関わる規律を取り決めています。
人と人の結びつきの基本は「対等な関係」です。お金持ちであろうと地位が高い人であろうと民法では区別されません。
だから、保護や救済という用語が条文にはでてきません。
民法には、物権や債権という「財産権」とともに、親族や相続という「身分関係」がでてきますが「敬語を使え」などという押しつけはありません。
そして、男と女の区別もありません。おとなと子どもの区別はあっても、成人には若者や老人の区別がありません。
行為能力(資格)が規制されるのは、未成年者や精神上の障害者であり、判断能力が欠けるとみなされるからです。
次に求められるのが「信義誠実」です。
欠陥商品(瑕疵)を売りつけず、支払いをきちんと行い、互いに約束を守るというきわめて当たり前な規律です。
それは、お互いに信用して円滑に生活するために欠かせないものです。
フェアプレーはスポーツだけのルールでなく、私人間で最も尊重されなければならないものでしょう。
そして民法は、互いに足を引っ張り合い、抜けがけして騙し合い、相手にミスを生ませたり、言いがかりをつけてふんだくるための法律ではありません。
そこで出てくるのが「公共の福祉」であり「権利濫用の禁止」です。
公共の福祉は法律であることの要請ですが、権利濫用は自由権の修正です。
どこの社会にも才覚の善し悪しはあります。だからといってやりたい放題が許されないのも当たり前のことでしょう。
2 法律行為には制限が伴う
法律行為は当事者の意思表示と判断する能力、つまり、互いの意思と行為が一致して合意したものです。
ですから、誰にも文句をつけられる筋合いはありません。
でも、それが許されない場合が三つあります。@公の秩序や善良な風俗に反しない、A公の秩序に関しない任意規定、B公の秩序に関しない慣習です。
いずれも「公の秩序」というのが繰り返されるのは民法が社会秩序を規制する法律だからです。
また、風俗は一部の通の人たちがつかう「フーゾク」でなく、社会の生活習慣です。
非合法な薬物使用や売買などが許されないのは本人の健康だけでなく、社会的に反する行為だから制限されます。
自由な合意にまかせれば人身売買や奴隷労働だって形式的にはできるでしょうが許されないわけです。
制限規定に触れなかれば個人間の法律行為は自由です。
それにしても、公序良俗なんて用語が今も生きていることが明治時代に作られた民法のなごりを残しています。
3 意思の不存在
売り買いする契約に欠かせないのは、高い安いの判断よりも、当事者に契約したいという意思が存在するほうが大切です。
買いたいという意思にしても、ぜひ買いたい、買っても良い、買っておこうか、とりあえず買おうかまで程度の差があります。
でも、買う意思を示しても「意思の不存在」と言われる場合があります。
(1)心裡留保(しんりりゅうほ)
これは本心とちがう意思表示をすることです。好きでもないのに、気まぐれに好きだと叫ぶようなものでへそ曲がりに多い発言です。
こういう意思表示はいちおう有効とされます。冗談と分かるようなウソは相手も許してくれますが、それがわからない人には通用しません。
(2)通謀虚偽表示(つうぼうきょぎひょうじ)
相手と示し合わせて、つまり相手とグルになって意思表示するものです。この場合は、元からなかったとして無効になります。
騙された相手に落ち度はないから、何も手続きは要せず、支払いをする必要はありません。
(3)錯誤(さくご)
1万円を千円と勘違いして意思表示するものです。正常な判断でないから元からなかったとして無効になります。
ただし、相手に勘違いを指摘されても気づかない場合は重大な過失となって契約は撤回できません。
(4)詐欺(さぎ)
相手に言葉巧みにひっかけられて(欺網・偽計)誤った判断をすることです。意思決定は有効とされますが、取消しができます。
取消できるということは、取消の手続きをしなければなりません。
(5)脅迫
監禁されたり威嚇されて意に反する決定を強いられることです。これも取り消すことができます。
4 判断する能力
事理弁識能力(判断力)や制限行為能力者については度々触れてきましたので省略します。
未成年者の行為能力や受領能力を年齢で判断する判例があるようですが、その子どもの理解力や知識レベルを無視して画一的にするのも変です。
通知や書類の送達にあたっては慎重な対応が望まれるのではないでしょうか。
未成年でも受け取ってくれれば良いという安易な対応は、後日のトラブルの元となるはずです。
5 確実に契約を実行するために欠かせない事項
契約を結べばそれでおしまいと考えるのは早計です。商品が確実に自分のものになるにはいくつかのハードルがあります。
ここからはわたし自身の体験を基に綴りますので笑いながら読み流してください。
(1)期限や期間の計算
昨年は初めて不動産を購入しました。借家住まいでは退職金がすぐになくなってしまうと気づいて中古マンションを買いました。
第一に悩んだのは資金繰りです。遊び回って蓄えもしてこなかったツケで退職金の前借りと銀行からの借入でした。
初めて金利の計算をしましたが、返済方法の選び方や利率がちょっと違うだけで利子の額がずいぶん違います。
利子の計算は、期間の計算が民法で定められていることを思い出しました。
金利の計算や返済方法はマイクロソフトのホームページで簡単にできました。
(2)契約書を読み直す
クルマは何度も乗り換えていますので契約書に慣れていますが、不動産売買契約書を読むのは骨が折れます。
売買契約を交わすときには売主と買主が同席し、宅建主任者が1時間もかけてあれこれ読み合わせます。
前日に重要事項説明書や全部事項証明の写しを受け取っていましたがあれこれチェックすると夜明け前でした。
読み流しただけでは頭に入らないのが契約書の細かい規定です。
(3)危険負担
手付金を払い、契約を交わしましたが引渡しを受けるまでの期間は引越しに伴う作業に追われました。
生命保険のための検査や借り入れのための手続きもけっこう手間がかkります。
それとともに不安だったのは、それだけ手間をかけても果たして入居できるかという不安です。
火事になって燃えたらどうしようかと不安でしたが、そこで出てくるのが「危険負担」です。
売主の不注意を除けば、火事で建物が燃えても買主は支払い義務があるからです。
(4)契約の解除や損害賠償
支払いを済ませリフォームを始めた直後に東日本震災が発生しました。地震特約付きの損害保険に入っていてもマンションは建物の価格はわずかです。
幸いに被害はなかったのでひと安心しましたが、すでに支払い済みの家具が入荷しません。
3回に分けて搬入されるはずの家具が5回も先延ばしにされ、何度かキレてしまいました。
債務不履行だから解約や損害賠償も考えましたが、食卓が届かず1週間もキャンプ生活同様の暮らしを強いられました。
食器棚が2週間も届かず、妻は毎日グチを並べていました。
(5)登記
代金の支払い時に司法書士に建物の所有権移転手続きを依頼しましたが2週間かかりました。
その間に二重売買されないかと不安でしたがそれも杞憂でした。
生半可な民法知識で対抗要件は登記だと思うばかりに焦りました。
でも、住所変更の登記は法務省のホームページを利用して自分で行いましたが簡単にできます。
(6)その他
@不動産売買は宅建主任者や司法書士などのプロに委任するしかない面があります。
委任や代理については「人とものが関わる形態」で触れましたので省略します。
A売買代金の他に引越し費用やリホーム代金、あるいは電気器具や家具の契約には確定期限の知識が欠かせません。
違約金や遅延利息なども期限を境に生じますから馬鹿にできません。契約解除や損害賠償も期限が過ぎてのことです。
B時効が関わるときもあります。権利の上に眠るものは保護しないのが民法の考え方です。
C債務不履行には、履行遅滞・履行不能・不完全履行の三つがあります。今回の商品搬入の遅れは地震により倉庫が損壊したことを並べていましたが、客の対応によって搬入時期が異なっていたのに今も不満が残ります。
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