図解編
相続手続の流れ
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相続編の条文はパズル的なものが多く、流れがつかめないのが難点です。
そこで、相続の実用書を眺めれば、葬儀にかかわる手続、円満な遺産協議分割、あるいは相続税の計算などに偏ります。
相続に伴う相続争いは、財産の引継ぎにかかる分配方法に集中し、そのトラブル防止に解説が費やされています。
書店に並ぶ実用書コーナーには相続財産をいかに多く得るかに触れたものばかり並び、相続する財産がなく遺族の扶養義務だけ残る者にはうんざりした話題です。
相続は、亡くなった人の権利義務や法律上の地位を特定の人に引き継ぐ(承継といいます)ことです。
そこには、亡くなった人(被相続人)の意思と相続する人(相続人や受遺者)の意思のほかに残された家族(遺族)の保護や内縁者等の存在(特別縁故者)も絡みます。
ここから派生する問題点はつぎのとおりです
@被相続人の意思で派生するもの: 遺言の内容と有効性、推定相続人の廃除、生前贈与、遺贈
A相続人や受遺者の意思で派生するもの: 相続人の適格性(養子関係や親子関係の不存在など)、限定承認、相続の放棄、特別寄与者、特別受益者
B遺族の保護で派生するもの: 残された家族の生活財産としての遺留分、葬儀費用等の負担(祭祀財産)
C内縁者等の存在で派生するもの: 内縁者には相続権はありませんが、相続人不存在の場合には申し出により特別縁故者へ財産分与が行われます
相続に伴う争いはその他にも多数あります。主なものをあげれば次のとおりです。
@相続できる財産と相続できない権利義務の区別: 被相続人の一身専属的な権利義務(生活保護受給権など)、身分上の権利義務(親権など)および祭祀財産(祭具や遺骨など)は相続財産から除かれます
A遺言手続の有効性: 遺言書の作成にあたり「遺言能力」と「要式性」が問題になります。未成年者や制限行為能力者あるいは高齢の認知症者などの作成能力や普通方式と特別方式に区分された遺言書の証人や立会人あるいは検認の有効性です(遺言書の一部には裁判所の検認が必要なものがあります。
B被相続人の死亡を知り得なかった相続人の登場: 失踪のほかに縁故関係が途切れたり、被相続人が認知していた者などの登場で相続のやり直し。
C相続人が不存在の場合の財産処分: 国に帰属する前に、特別縁故者や共有者(民255条)に財産分与されます。
以上の点については民法用語(5)で触れていますが、この図解では遺言書の有無で区分した、指定相続人の流れと法定相続人の流れを整理しています。
民法の条文の配列に反し、あえて遺言書を先に示したのは@被相続人の意思を優先したこと、A子と配偶者を除く法定相続人(直系尊属と兄弟姉妹)は他に相続人がいない場合に登場するからです。特別法が一般法に優先し、指定されたものが指定されないものに優先するのは法律の原則だからです。
また、死亡の前に「推定相続人の廃除」をあげたのは、民法892条で被相続人が生前に行え、遺言書による(民893条)ものとは限らないからです。
そして、この図は協議分割までにとどめています。相続人の不存在はここに示した相続人や受遺者がいない場合だから示しませんでした。
指定相続と法定相続の主な手続きは「相続編のあらまし」に掲載している図解もごらんください。用語集に条文を示しています。