9 ジローズと杉田二郎
フォークのことあれこれ
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目次
●愛唱歌
●美しいハーモニー
●この僕と
●戦争は知らない
●愛とあなたのために
●枯葉の中で
(1)愛唱歌
唄などしょせん流行り廃りに流されていくもの。歌い手もまた消耗品にすぎない。ブームに浮かれているうちにたちまち忘れ去られるのが運命(さだめ)。とはいうものの、僕らの世代でフォークの歌い手からプロの歌い手となった人々の息は長い。彼らがまがりなりにも自作自演できることもあるが、コンサートを中心にして自分なりの活動を続けてきた実績とネチッコ(粘り強)さがそうさせるのかもしれない。
杉田二郎も息の長い歌い手の1人である。彼ほど烏合集散を繰り返した人は珍しい。シューベルツ、クライマックス、ジローズとめまぐるしく移動した男である。彼はそのいずれの活動の中でも異才を放っていた。30歳を超えたこのごろは1人でやっているが、ときおりビックリさせることをやるのがおもしろい。
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●美しいハーモニー
杉田二郎と森下次郎が組んだジローズはハーモニーが美しいグループであった。日本のサイモン&ガーファンクル(S&G)と呼ばれたこともある。今では影の薄いS&Gは日本のフォークの音楽性に多くの影響を与えたはずだ。ビートルズと結びつけることも可能なものの、デュオとしての音楽性はS&Gに尽きるといえまいか(これは僕の独断である)。
僕の持っている『ジローズU』というLPレコードは、彼らの活動の集大成だが、いろいろと思い出のある唄が含まれている。詩のほとんどは北山修のものだが、演奏スタッフは当時の最良の人たちだったからよけい贔屓(ひいき)の引き倒しになるのかもしれない。ドラムス=猪俣猛、エレキギター=水谷公生、エディ・蕃、ベースギター=鈴木淳、アコースティックギター=石川鷹彦などそうそうたるメンバーである。
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●この僕と
このLPで気に入っている詩は2つある。1つは北山修が作詞した『枯葉の中で』、もう1つがYU・MONMAが作詞した『この僕と』である。この2つの中でも後者のフレーズを僕はよく口ずさんだ。
誰でもいいから 誰でもいいから
あふれる涙あるのなら 信じあえる
誰でもいいから 誰でもいいから
この僕と手をつなぎあって
明日に歩き出そう ♪
(『この僕と』2節目)
この詩はなんとなく気に入っている。人間疎外なんてよそよそしい言葉を口にしたくはないものの、臆病で寂しがりやだった当時の僕は気に入っていた。ふるさとでは何もかもがガンジガラメに感じ、周囲の者となるべくかかわらないように努めていた僕も、東京で暮らし始めて友達もいない1年目のころは妙に人恋しく感じたものだった。ちなみに、この詩の初めのフレーズは次のとおりである。
星の数くらい人はいるのに
すれ違う人々と挨拶もかわせない ♪
(『この僕と』冒頭)
このLP『ジローズU』には僕が考えを変える時に使った詩がある。理屈よりも行動に魅力を感じ始めたころだった。北山修の『どっちでもいいじゃないか』がそれである(この詩については北山修の詩で触れたから省略する)。
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(2)戦争は知らない
ジローズのヒット曲は『戦争を知らない子供たち』(北山修作詞・杉田二郎作曲)である。学生のころ仲間とよく口ずさんだものだった。このごろ何か物騒な話題が多いが、僕らの世代を象徴する唄としていつまでも残しておきたい詩である。
戦争が終って 僕らは生まれた
戦争を知らずに 僕らは育った
おとなになって 歩き始める
平和の歌を くちずさみながら
僕らの名前を 覚えてほしい
戦争を知らない 子供たちさ ♪
日本では太平洋戦争敗北後30年間戦争はなかった。なんと恵まれていたことだろうか。僕は戦争映画のファンだけど本当の戦争を望まない。ときどき映画と現実を錯覚し、他人を戦場にひきずり込もうとするアワテ者がいるから注意したい。戦場に狩り出されのも、家族を失うのも、逃げまどうのも僕らなのだ。ときおり、ゲームと戦争とをゴッチャにする愚か者もいるから僕はよけい厭になる。
たしかに日本では戦争はなかった。だが、周りの国々では戦争が繰り返されていたのも事実である。毛沢東が戦争を2つに分け、「正義のための戦争」をとなえたにせよ僕はそれを認めたくない。ナチスの残虐行為とかベトナムの荒廃した戦場を思い出すたび、僕はこの『戦争を知らない子供たち』を口ずさんでしまうのである。
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●愛とあなたのために
でも、このレコードのB面『愛とあなたのために』(北山修作詞・杉田二郎作曲)はもっと気に入っている。現実には望めぬものの僕の考えの基本となっているフレーズがある。マイホーム主義者、小市民、日和見主義者、臆病とののしられようとも・・・。
愛とあなたのために わたしは
この世に生きているの わたしは
弱いこのわたしに
できることはひとつ
あなたのすべてを愛していると
大きな声で言える ♪
(『愛とあなたのために』第1節)
【追記】この章は感情が高ぶった面があります。有事法制などが話題になった時代だったからでしょうか。でも、考え方は変わっていません。
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●枯れ葉の中で ☆ジローズ 2005/05/03
むかし綴ったノートを探し出し、ジローズというグループのことを入力していたら『枯れ葉の中で』(北山修作詞)を思い出した。題名だけ書いて詩を入れてないのが残念である。
何で本文に入れなかったと思い直すと女々しくて恥ずかしかったからだと言うしかない。口ずさんでも記録に残すのをためらった唄はけっこうある(引用した歌詞のほかに愛唱歌を別のノートに記録してあります)。ボケないうちに記録しておきたい。覚えている人は少ないでしょうが、私の記録として掲載させていただきます。
遊び相手も減り、ひとりで部屋にいるのが淋しくてドライブに出かけ、八ケ岳や上高地の林の中を散策するときなぜかこっそり口ずさんだのも今では懐かしい。相手にされないときが長かった私の愛唱歌のひとつである。
枯れ葉の中で
北山修作詞、杉田二郎作曲
私はいま枯れ葉の中を
消えてゆく人を見ながら
泣いているの
通りすぎる 冷たい風よ
コートのえりに かくれて
涙をふいた ♪
(第1節部分引用)
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