煙(けむ)に巻くの起源

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 長い間「けむり」に巻くと読んでいたが「けむ」に巻くが正しいと娘に指摘された。調べてみると確かに言うとおりである。つかみどころのない話を並べて驚かしたり、ごまかすという意味で使われる。自慢が交ざるホラと違い、焦点をぼかすからつかみどころがない。

 でも、だますという意味は間違いだろう。まともに応じたら不都合なときにやむを得ず使うからだ。即答して後悔するのを避ける場合が多い。正否の判断を強いられたり、役職や仕事を押しつけられそうなときの時間かせぎに使える。間延ばしをするしかないときに特に重宝している。タバコもこういう危機を回避するための有用な道具だ。ガタガタいう奴には煙を浴びせて機先を制する。落ち着いて考えるときに欠かせない。

 入浴の話題は面白くて引きずり込まれるけど、思い込みや独断がちらつく。それを科学的でないとか、迷信だと弾劾するのも野暮である。気分や感覚で語るから面白いし、身近さが増す。互いのウンチクを交わしあう楽しみがある。期待や失敗もつきまとうから話しに尾ひれ羽ひれがついて盛り上がる。

 ところで、煙(けむ)は何を指すのだろう。わたしは長い間、湯けむりでまわりが見えない状態を指すものだと思い込んできた。温泉だけでなく銭湯だって湯気で眼鏡が曇るからだ。でも、タバコの煙かと思うときもある。紫煙(しえん)は吸わない人には煙たいが、愛煙家には憩いや安らぎを与え思考に柔軟性が生まれるものだ。煙たさに腹を立て待ちくたびれた人の不満の反映だろうか。どちらも錯覚やいらだちをもたらすものがある。

 見えない状態につきまとう不安やいらだち、あるいは、間延ばしされたり論点をすり替えられる不満、いずれも妥当な説である。そして、期待外れな結果がだまされたということにもつながる。どちらでも良いことだけど起源はそんなところから来るのだろう。こんなやりとりを煙に巻くと言うに違いない。